【母親に懲役23年の判決】  幼い3姉妹を殺害  “完璧主義”子育てに苦悩 愛知・一宮市

愛知県一宮市でおととし、幼い3姉妹が殺害された事件で、11日午後、母親に懲役23年が言い渡されました。裁判で明らかになったのはゆがんだ「完璧主義」に固執し可愛がっていた我が子の殺害を決意する母親の姿でした。

遠矢姫華被告:「三女の首をコードで絞めました。それから二女の首を後ろから絞めました。長女は髪を結んで後ろから絞めました」

これまでの裁判で犯行当日の様子を語った遠矢姫華被告(29)。

11日午後、幼い3人の子どもの命を奪った罪に問われている母親の判決が言い渡されました。

起訴状などによりますと、遠矢被告は、おととし2月、一宮市の自宅で、長女の姫茉梨ちゃん(当時5)、二女の菜乃華ちゃん(当時3)、三女の咲桜ちゃん(当時生後9か月)の首をコードのようなもので絞めて殺害した罪に問われています。

当時27歳だった遠矢被告。裁判が進むにつれ犯行に至るまでの心境の変化が少しずつ見えてきました。

遠矢被告は、2016年に結婚後、一宮市の夫の実家近くに念願のマイホームも建て、一見、順風満帆に見える5人家族でした。

元々、完璧主義で真面目、責任感が強い性格だった遠矢被告。義理の母の手を借りながら幼い3人の育児をしていましたが、時々精神的に不調な日があり、長女の出産後には産後うつを診断されたこともありました。

さらに遠矢被告を悩ませたある出来事が。二女に卵などの食物アレルギーがあることが判明。

それからはというと、たまの外食にも子どもたちには手作りのお弁当を持参。

完璧主義であるがゆえ、娘の食事に対して神経質になりSNSで頻繁に情報を検索するように。

そして犯行3日前。長女と日本地図のパズルで遊んでいたときのこと。

「ママ、これは何県?」と長女が指した東北地方の都道府県を答えられませんでした。

その夜、「私には教養がない」と夫に涙を見せた遠矢被告。「気にすることじゃないよ」と夫が励ますもその日、遠矢被告の気持ちは沈んだままに。

これらの出来事を検察側は犯行動機につながるものだったと主張しています。

検察側:「食事について神経質になるうちに、次第に追い詰められた気持ちになり「自分には教養がない」などと自身が理想とする母親像には遠く及ばないと過剰に自責的に考え、思い悩んだ末に自殺を決意するとともに無理心中を決意したもの」

犯行当日の朝、夫を送り出す時、精神的に不安定な発言をしたという遠矢被告。

夫はこのとき、ここ最近の遠矢被告の様子を心配していましたが、「またか…」という気持ちに。そのまま家を出ました。

遠矢被告:「私は母親にはふさわしくない。もう自殺してしまおう。自分が死んだら母なしで生きていく子どもたちがかわいそうだから、道連れにしよう」

この日、遠矢被告の行動には大きな変化が。

昼ご飯に長女と次女に買い与えたのは、ずっと食べたがっていたハンバーガーチェーンのおもちゃのセット。

遠矢被告:「後に希望をかなえようと思い、食べたいものを食べさせたかった」

その後、3人姉妹をひとりずつ部屋に呼び手をかけていきます。

長女と次女は顔が見えないよう背後からコードで首をしめました。遠矢被告も自殺を図りましたが死ぬことはできず、帰宅した夫にごめんなさいと話す遠矢被告。

夫が心臓マッサージや救急車を呼ぶも3人が息を吹き返すことはありませんでした。

検察側:「首をコードで絞めたとき何か言っていましたか」
遠矢被告:「苦しい、と言いました。苦しくないように苦しくないように、とずっと思っていました」

子育てのストレスに詳しい医師は育児に悩みを抱えやすい母親の特徴について次のように述べます。

塩釜口こころクリニック 河合佐和院長:
「頑張り屋で完璧主義で、きちょうめんな方は、手が抜けないタイプできて当たり前というふうに自分自身を追い詰める傾向がある」

これまでの裁判で、弁護側は、犯行時、心神喪失で責任能力がなかったとして無罪を主張しています。

そして11日午後、遠矢被告に言い渡されたのは。

裁判長:「被告人を懲役23年に処する」

その理由として裁判長は「幼い3人の命が失われたのはまことに重大。子が苦しまないよう強く締め付け、一度三女が息を吹き返しても、後には引けないと再び絞めた。殺意は強いと認められる」などと述べました。

遠矢被告はまっすぐ前を向き落ち着いた様子で判決を聞いていました。

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