【知床観光船事故】“船内捜索”へ  特殊な潜水法「飽和潜水」とは?

北海道・知床沖の観光船沈没事故では、依然12名の方が行方不明となっています。19日には「飽和潜水」という特殊な技術を使い、潜水員が海底に沈んだ船内の捜索をはじめます。「飽和潜水」とは一体、どのようなものなのでしょうか。

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北海道・知床沖に沈没した観光船「KAZU 1」の船体を調査するため、民間の作業船が北海道の網走港に到着しました。18日午前には、潜水員を深海に降ろすための装置“水中エレベーター”のチェックを行っていました。

知床半島沖の水深、約120メートルの海底にある「KAZU 1」の船体。乗っていた人のうち、12人の行方は今もわかっていません。

行方不明者の捜索を行う潜水員たちは、「飽和潜水」と呼ばれる特殊な方法で深海に向かうといいます。飽和潜水とは、どのような潜水法なのでしょうか。

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私たちは以前、2001年に海上自衛隊が行う飽和潜水の訓練を取材していました。取材した潜水艦救難艦「ちはや」は、事故を起こした潜水艦から乗組員を救助するのが主な任務です。

「ちはや」の艦内に入ると、丸みをおびたタンクが並んでいました。救助の補助を行う潜水員たちは、飽和潜水のため、このタンクに入ります。深海の水圧に押しつぶされないようするため、あらかじめ体を加圧するのです。

「ハッチ閉め!」

取材した訓練では、沈没した観光船とほぼ同じ、水深100メートルに潜水員を送り込みます。

タンクで加圧するとどうなるのか。変化を見るためバレーボールを入れました。

「加圧、始め!」

密閉されたタンクの中に空気を注入し、徐々に圧力をかけていきます。

「10メートル着!」

水深10メートルと同じ気圧になりました。潜水員がカメラに示したバレーボールは、半分以下につぶれていました。

人間は徐々に圧力を上げれば、かなりの高圧でも体は慣れるといいますが――

「ちはや」医官(当時)
「特に頭部は空洞がいっぱいありますから、空洞の部分にうまく空気を入れて均圧にしないと、外から押しつぶされるような感じになってしまう」

加圧すると、タンク内の温度は一気に上昇。訓練中の潜水員たちはじっと耐えます。また、加圧する空気には、潜水病を防ぐため、窒素の代わりにヘリウムガスが使われています。そのため潜水員の声は、いわゆる“ヘリウムボイス”になります。

「はい、100メートル到達」

加圧を初めてから数時間で、水深100メートルと同じ圧力まで加圧されました。潜水服を着て、同じように加圧された「水中エレベーター」に乗り込みます。この水中エレベーターで深海に送り込まれるのです。

潜水員3人が乗り込むと、ワイヤやホースでつながれた水中エレベーターが海に下ろされました。降下をはじめて約30分。ついに深海に到着しました。

移動装置の底にあるハッチを開くと、足元に青い海が見えました。

船内にある管制室では、音声で通話したり、潜水員が身につけたカメラの映像を見たりすることができます。

潜水員
「ダイバー1、ロックアウトした。異常なし」

管制室
「了解。PTC長ダイバー1、テレビカメラ電源入れ」

潜水員
「ダイバー1、了解」

潜水員が潮の流れの影響を受けないよう、移動装置は目標の真上に下ろされます。飽和潜水は潜水員がケーブルとつながっているので移動範囲は限られますが、ほかの方式よりも圧倒的に深い場所で長時間、活動ができます。

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18日午後4時、実際に捜索にあたる作業船が現場海域へ出港しました。飽和潜水は、19日午後から始まり、2日間ほどかけて船内の行方不明者の捜索を行い、その後、船体の引き揚げに向けた調査に入るということです。
(2022年5月18日放送「news every.」より)

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