スカッド

スカッド, by Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki?curid=22629 / CC BY SA 3.0

#ソ連・ロシアの弾道ミサイル
#自走弾道ミサイル
#湾岸戦争
#NATOコードネーム
スカッド

スカッド(Scud)は、ソビエト連邦が開発したR-11弾道ミサイルと、その改良型地対地ミサイルに付けられたNATOコードネームである。スカッドを独自に改良したミサイルが各国で開発されており、これらのミサイルが総称としてスカッドと呼ばれる事もある。

Scudとは、英語で”ちぎれ雲”、”風に流される雲”の意。

スカッドは、第二次世界大戦中にドイツが開発したV2ロケットのソ連版拡大コピーであるR-1(SS-1A)を元に、OKB-1(後のコロリョフ設計局)によって1950年代初期に開発が始まり、1957年にR-11(SS-1B スカッドA)がソ連陸軍(当時戦略ロケット軍はまだ無かった)に配備された。この後、マキーエフ設計局によって推進系が改良され、射程が延びたR-17(SS-1C スカッドB)が開発、配備されている。新たなスカッドは、敵部隊や指揮地点、飛行場といった重要拠点を破壊する用途を与えられていた。

ソ連海軍では1970年代前半に、スカッド(ソ連名「エルブルス」。エルブルスはコーカサス山脈の最高峰)の垂直発射型艦対地ミサイルである「エルブルス-M」を、搭載艦であるミサイル巡洋艦「プロイェークト1080」とともに開発していたが、SS-20 ピオネル中距離弾道ミサイルの開発が優先されたために、搭載艦とともに開発中止となった。プロイェークト1080は空母戦力を持たなかった当時のソ連海軍がその代替として計画したもので、50基を4つ、計200基のVLSを備える予定であった。

このようにソ連でも重用されたスカッドであったが、1989年に登場したスカッドDがオリジナルの最終型とされている。終末誘導に目標照合レーダーを搭載したタイプで、CEPが50mと大幅に改善している。
スカッドDを除き、現在では旧式化しており、ソ連のScud-A/Bは、1980年代に(SS-23 Spider)に置きかえられて退役した。しかし、旧東側、中東諸国などでは現在でも多数が実戦配備されている。

NATOとアメリカ軍はスカッドを四種類に分類しており、NATOコードネーム(DoD番号)はそれぞれ、、スカッドB(SS-1c)、スカッドC(SS-1d)、スカッドD(SS-1e)と呼称している。

スカッドは、主にTEL(Transporter Erector Launcher:輸送起立発射機)と呼ばれる大型の車両に載せられて移動するため機動力に優れている。初期には装軌式のTELが用いられたが、その後装輪式のMAZ-543 重トラックおよびその派生車種が多用されるようになった。このTELは発射台も兼ねており、発射時にはスカッドは90度起立する。この仕組みは、後の東側諸国の弾道ミサイルでも多用された。

冷戦中のソ連は、当時の友好国への軍事援助として多数のスカッドBを輸出した。

スカッドが初めて実戦利用されたのは、1973年の第四次中東戦争だった。エジプト軍は休戦の直前にイスラエルへ4発のスカッドBを発射した。1発はイスラエルが占領していたシナイ半島のアリーシュ港に、2発はイスラエル軍のスエズ運河における橋頭堡を目標とした。

スカッドは基本的なロケットに近く、比較的簡素な構造のため、技術力の乏しい国でもある程度の水準があれば複製が可能で、一部の国では模倣品や拡大改造版が製造された。1970年代にソ連と対立し始めたエジプトは中国と北朝鮮にスカッドを無断で与え、中国と北朝鮮はリバースエンジニアリングを行ってスカッドの技術を習得しており、後に中国と北朝鮮の技術者はエジプトでスカッドの改良にも関わっている。北朝鮮はスカッドを基にして射程1,500km以上の準中距離弾道ミサイルノドンを開発した。北朝鮮は、弾道ミサイルの輸出を外貨を獲得する手段として用いており、イラン、シリア、イエメン、パキスタンなどにスカッドとノドンや製品の他に製造技術も売却しており、イランのシャハブやパキスタンのはその技術をもとにつくられた。

1986年に行われたアメリカ軍のリビア爆撃の際には、リビアから報復としてイタリアのランペドゥーザ島に置かれていたアメリカ沿岸警備隊のLORAN施設にスカッドが発射されたが、目標を外れた。

イラン・イラク戦争では双方の国によって大量のスカッドが利用された。イラクはソ連から購入したスカッドとその派生型アル・フセインを520基発射し、イランはリビアから購入したスカッドを177基発射した。双方の首都が目標となり、市民の犠牲…

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