ロシア軍が、ウクライナ侵攻に踏み切りました。防空システムを制圧し、紛争が続いていた東部だけでなく、首都キエフや黒海に面した都市も攻撃を受けたとの情報があります。国際安全保障や米政治の専門家に、ロシア側の狙いや今後の展開を聞きました。
■防空システム「制圧」でどうなる?
有働由美子キャスター
「ウクライナ国内で攻撃を受けたとの情報がある都市は、ロシアが独立を承認した(親ロ派が実効支配する東部の)2地域だけではなく、首都キエフや黒海に面したオデッサも含まれています」
「国際安全保障に詳しい、慶応義塾大学の鶴岡路人准教授にうかがいます。こうした攻撃を受けた場所から、ロシアの狙いは分かるのでしょうか?」
鶴岡准教授
「相当、全面的な攻撃になってしまいました。(『ドネツク人民共和国』『ルガンスク人民共和国』という)東部の2つの共和国を越え、全土を標的に入れています。ただ、全土の占領を意味しているかというと、まだそうでもないのかもしれません」
「一方で、防空システムを徹底的にたたいています。戦争する時、本格的な軍事作戦においては、ある意味、いつもやることだと思います。航空機が下から攻撃されなくてすみ、その後の空爆がしやすくなります」
「もう一つは、地上部隊を出す時にも有利です。航空優勢、つまり空をしっかりコントロールできると、自国の航空機で地上部隊の支援ができます」
■混乱誘発? オデッサ攻撃の意味は
有働キャスター
「オデッサへの攻撃は、何か意味があるのでしょうか?」
鶴岡准教授
「軍事的な意味もあるのかもしれませんが、心理的な意味も大きいかなと見ています。四方八方から攻撃を受け、どこで何をされるか分からない状態がウクライナで生まれます。そうすると国内で混乱を引き起こせると、ロシアは読んでいるのかもしれません」
有働キャスター
「プーチン大統領の国民向け演説では、『2つの地域で特別軍事作戦を』ということでしたが、ウクライナ全土を掌握したいわけではないのでしょうか?」
鶴岡准教授
「プーチン大統領も『ウクライナ全部を占領するわけではない』という言い方はしていますが、防空システムをたたくということは、ウクライナのどこであっても、ロシアが地上部隊を派遣できる状態をつくったということでもあります」
「当面の焦点は、東部の2つの共和国がどれだけ支配地域を拡大するのか。今の武装勢力の支配地域から拡大しようとすると、そこで戦闘が起きます。今後どうなっていくのか、しっかり見ていかないといけないと思います」
■両軍の実力は…「勝負にならない」
有働キャスター
「戦闘の先にあるプーチン大統領の最終的な落としどころ、目的は何になりますか?」
鶴岡准教授
「まだよく分かりませんが、やはりウクライナを無力化させるのが大きいと思います。独立国家・主権国家としてのウクライナの存在自体を認めないというのが、かなり強く演説からは見えてきていると思います」
有働キャスター
「ウクライナ軍とロシア軍が衝突した場合、軍事力の差はどの程度と見ておけばよいですか?」
鶴岡准教授
「正面でぶつかったら、はっきり言って勝負にならないというのが現実だと思います。ロシア軍の方が当然強いです。どれだけウクライナ軍が、『非対称的な戦い』と言いますが、正面で部隊同士で戦うというよりも、国民を含めた形で国土をどう防衛していくか」
「もう一つ非常に重要なのは、ロシア軍側の犠牲者をどれだけ出せるかです。西側(諸国)が最近支援している装備品は、多くが、戦車を攻撃する対戦車砲や対空砲です。それによって犠牲者を多く出せれば、ロシア国内へのインパクトが期待できるということです」
「この戦争自体、本当に大義があるのかどうか、ロシア人も疑問に思っている人はたくさんいるわけです」
「軍事的に成功していれば、ナショナリズムは盛り上がるかもしれませんが、犠牲が増えると、何のために戦い、死んでいるのだろうと、ロシア国内で反発が出てくる。それをウクライナがどう誘発できるかというと、犠牲者を増やすことしかないのかなと思います」
■首都の空港へ攻撃か…意味するもの
有働キャスター
「プーチン大統領の次の一手について、アメリカはどう見ているのでしょうか?」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「アメリカ政治に詳しい明海大学の小谷哲男教授は『ロシア軍は、ウクライナのゼレンスキー大統領をはじめ、政権転覆に邪魔となるウクライナ人の殺害・拘束リストを作成していると、アメリカ政府は国連に報告している』と言います」
「小谷教授はまた『アメリカの情報では、ロシア軍が首都キエフの空港への攻撃を始めたということだが、それはつまり、リストに載っている人を探す第一歩、あるいは政府高官の殺害を目指す斬首作戦の始まりを意味するのではないか』と指摘しています」
有働キャスター
「非常に深刻な状況です」
■経済崩壊、人道危機拡大…どう防ぐ?
廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「まずは、武力で自らの主張を押し通すことは許せないと思います。これ以上被害を出さないために、今後、いろいろな対策があると思いますが、何が大事になってきますか?」
鶴岡准教授
「直接的にこれだけロシアの軍事行動が始まってしまうと、それを止める直接的な力は残念ながら、われわれは持っていないと思います。ウクライナがどれだけ抵抗できるかということと、後はウクライナ経済の崩壊をどう防ぐかです」
「もう一つ付け加えるとすれば、難民です。国内でもおそらく相当の避難民が出る。国外に逃れる難民も出てくる。それをどう支援して、人道的な危機を拡大させないかという点も求められると思います」
■現地に残る120人…邦人対応は?
有働キャスター
「ウクライナにいる日本人の安全確保は大丈夫なのでしょうか?」
小栗委員
「外務省によると、2月21日時点でウクライナには約120人の日本人が残っています。ただ、外務省幹部によると、現地に残っている日本人はウクライナ人と結婚しているなど家族を持つ人が多く、自分の意思で残っている人が多いといいます」
「とはいえ、ウクライナから陸路で近隣の国に避難した日本人を運ぶため、日本政府は既にチャーター機を手配しています。さらに状況が悪化した場合に備え、陸路で避難する日本人が多いとみられるポーランドに自衛隊機を派遣することも内々には検討しています」
「政府関係者は『現状では隣国が戦闘に巻き込まれる恐れはほとんどない』として、当面は民間機で対応する構えです」
(2022年2月24日『news zero』より)
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