ガス点検強盗 静岡でも不審電話相次ぐ その手口とは(静岡県)

9月から首都圏で相次いでいるのが、ガスの点検を装った強盗事件です。被害者は手足を縛られ、現金などを奪われる卑劣な犯行です。県内でも最近、ガス点検を装う不審な電話が確認されていて、魔の手が迫ってきています。

<詐欺電話を受けた女性>「時間指定にされて『あした伺います、5時に行きます』と言われてドキドキしちゃいました。(強盗が)来るんじゃないか来るんじゃないかと食事もできなかった」
 SBSの取材にこう語るのは、三島市に住む78歳の女性です。9月30日の昼、女性の家に一本の電話がかかってきました。
<詐欺電話を受けた女性>「ガスの点検で明日はいますかと言われて、5時ならいると言った。そしたら5時に伺いますと。女性ですごい早口。今までの(詐欺電話は)男の人ばかりだったから、女の人だと思い信用しちゃった」
 女性は過去に2度詐欺電話を受けたことがあり、不審に思い、契約しているガス会社に電話しました。
<詐欺電話を受けた女性>「8月20日に点検をやってもらってるからおかしいと思って一晩考えて、きのうの朝、ガス会社に電話したら、そんなことはないと言われ、それで警察に電話した。本当にひっかかちゃったと思った」
 女性の元にかかってきたガス点検を装った電話はいま、全国で連続発生している強盗事件の“入口”とみられています。
<広報活動>「お宅のガス点検しますなどと言って強盗に発展する事案があるんですよ」
 県内では、28日以降、三島市や富士市でガス点検を装う不審な電話が3件相次ぎました。
<チラシを受け取った人>「こわいですよね。子どもがいるので旦那がいない時、カギをちゃんとして出かけないと」「うっかり騙されちゃうかもしれないなと思いました。心配です」
 点検を装う電話で相手の在宅を確認してから犯行に及ぶいわゆる「点検強盗」。一体、どんな手口なのでしょうか。
<被害にあった男性>「ガスの点検ですって来たから全然疑いもしなかった。命あっただけでも助かったと思わないと本当に」
 都内の集合住宅に住む男性は先日、ガス点検を装った2人組の男に押し入られ、口をガムテープでふさがれて両手足をテープで縛られました。
<被害にあった男性>「その布団の上で倒されてテープでぐるぐる巻きにされて足腰も巻かれて。窒息するんじゃないかと思って…」
 男たちは現金約30万円を奪って逃走しました。
<被害にあった男性>「テープで私をぐるぐる巻いたり、写真を撮ったりしていたのは20歳くらいの若い子じゃないかな。もう1人は30歳くらい」
 全国で相次ぐ「点検強盗」の背景には、特殊詐欺などの「闇バイト」を募集するグループがいる可能性が指摘されています。「闇バイト」をめぐってはSNSを利用する若い世代がアルバイト感覚で請け負って警察に逮捕されるケースが増えています。どのようにして”強盗の実行犯”を募集しているのでしょうか。
<再現>「お金がほしい方連絡ください。激アツ案件ありますよ」
 ツイッターで見つけた投稿にメッセージを送ると…。
<再現>「テレグラム、お持ちですか」
 テレグラムとはロシアの企業が開発したメッセージアプリです。やり取りの内容が一定の時間を経過すると自動で消去され、履歴の復元が難しいことから犯罪に利用されるケースが多いといいます。テレグラムを通じて返事をすると、「赤坂」と名乗る男から返信がありました。
<再現>「偵察係が念入りに取材した案件です。客は一人暮らしの老人です。工事業者を装って自宅に入れてもらいます。客が隙を見せたら口元をタオルで押さえてガムテープで縛ります。お金がどこにあるのか確認します。お金を持って逃げます」
 9月、実態を明らかにするため記者とは告げずに電話を掛けると…
<赤坂と名乗る男>「はいはーい。お疲れさまでーす。初めまして、赤坂ですー。お兄さんはどこにお住まいですか?」
<記者>「大阪です」
<赤坂と名乗る男>「大阪ですか。大阪だったら…10日って空いてます?」
<記者>「2日後、明後日ですか?」
<赤坂と名乗る男>「そうですね。どの辺って言えないんですけど、1人じゃなくて3人で行きます」
 「赤坂」の話した計画は、大阪府内の高齢者宅に業者を装って押し入るというもの。報酬は100万円で、「逮捕されないための偽装工作」を用意していると話します。
<赤坂と名乗る男>「偽の警察部隊が突入して、折り返し番号とか伝えるんですよ、客(被害者)に。なのでそのあとも『警察に電話した』と思っているんで、事件が実際に起こっていない状況にするんです」
 つまり、強盗事件の直後に警察官を装った別の共犯者が被害者宅を訪問。偽の被害届を出させて、あたかも事件の捜査が行われているかのように思わせるというのです。
<赤坂と名乗る男>「リスク的にはすごく低くなります。相手にするのは若者じゃなくて、1人じゃ警察にも行けないようなじいちゃんばあちゃんなんで。1週間もすれば忘れるから」
 記者はここで身分を明かします。
<記者>「赤坂さん、実は毎日放送の記者なんですが、これはれっきとした強盗ですよね」
<赤坂と名乗る男>「プープープー」
 記者はこの直後、警察に情報提供しましたが、その2日後、大阪・藤井寺市の住宅で実際に強盗事件が発生。防火点検を装った男2人が85歳の女性の手足をガムテープで縛り、現金約20万円などを奪い逃走したのです。
<記者>「強盗容疑で逮捕された男が大阪府警の捜査員に連れられ、新大阪駅を出ます」
 そして、事件から8日後、藤井寺市の強盗事件の実行犯とみられる男3人が逮捕されました。
<大阪府警の捜査幹部>「容疑者から押収したスマートフォンに赤坂と接触した形跡がある。赤坂から指示を受けて強盗したと供述している」
 不審な電話から始まる強盗事件。10月2日、静岡市のガス会社を取材すると、県内各地に危険が迫っている実態が浮かび上がりました。
<静岡ガス 塩沢秀明さん>「実際に静岡ガスから電話がありましたという問い合わせもあった」
 9月28日以降、すでに静岡ガスを装ったとみられる電話が4件、確認されているのです。迫る危険を回避するにはどうすればいいのか、偽物のガス点検員の見分け方を教えてもらいました。
<静岡ガス 塩沢秀明さん>「事前にお送りしているハガキと制服と身分証明書の3つをしっかり提示するようにしています」
 静岡ガスの点検員は灰色と緑色、2種類の制服を着用し、訪問の際には必ず身分証明書を提示します。また、点検の際には事前に、ハガキで訪問予定の期間を知らせるということです。県と警察は「いま、県内が狙われ始めている」と警戒を呼びかけます。
<県くらし交通安全課 杉山雅崇主幹>「いつ誰が被害にあうかわかりません。日ごろからその危機意識を少しでも持って頂きたい」
#オレンジ6 10月2日放送

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