イランがイスラエルに向けて大規模なミサイル攻撃を行いました。イスラエルのネタニヤフ首相は反撃を示唆していて“報復の連鎖”が懸念されています。
■生中継中に…ミサイルが
日本時間2日午前1時半過ぎ、テルアビブから生中継をしていたCNNでは…。
ジム・シュート記者
「間違いなく本格的な攻撃です。明らかに“大規模攻撃”です。今回の戦争が激化したようです。危ない。全員屋根から避難を。近くに着弾しそうだ。こっちに飛んできている。避難しないと」
ミサイルは各地に降り注ぎました。シェルターに身を寄せる人々、路上で身をかがめる人々、その頭上を無数の破壊兵器がかすめていきます。
イランは、ハマスやヒズボラのトップの殺害、そしてガザとレバノンへの侵攻に対する報復だと宣言しました。
イラン革命防衛隊 サラミ総司令官
「これは復讐だ。“真の約束2”作戦を預言者の名によって開始せよ」
■全て“弾道ミサイル”4月との違い
使われたのは180発を超える弾道ミサイル。しかも集中砲火です。イスラエルを狙った弾道ミサイルの攻撃は4月にもありましたが、今回は明らかに異なる手法です。弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイルとドローンも組み合わせた攻撃だったのが前回。しかし今回は、180発全てが弾道ミサイルです。これが大きな差を生みました。
イスラエル側が迎撃できているミサイルもありますが、猛スピードで落下しているものもあり、全く迎撃できていないものがあることを表しています。イスラエルの防空システムの代名詞である『アイアンドーム』はロケット弾迎撃に特化していて、弾道ミサイルへの対応は基本的にできません。そのために、弾道ミサイル迎撃用の『アローシステム』があるのですが、数は限られています。
加えて、イランは弾道ミサイル180発のうちの半分を、最初の30分間に集中させたとみられています。
CNN軍事アナリスト ハートリング元米軍中将
「(Q.これほどの弾道ミサイル集中砲火が危険な理由は)弾道ミサイルだけの攻撃は、巡航ミサイルやドローンを交えた攻撃より迎撃が難しいのです」
イランは、去年公開した最新鋭の極超音速ミサイル『ファタ』も使用したと主張していて、この攻撃にかなり力を入れていたことがみてとれます。ただ、攻撃対象となったのはイスラエル軍の基地や情報機関の本部などで、人口密集地や核関連施設を狙うことはありませんでした。
イスラエルもアメリカも大半のミサイルは撃ち落とせたとして、イランの攻撃は失敗に終わったとしています。ですが、イランが狙っていたのは市民に恐怖を植え付けることだったかもしれません。
ミサイルが落ちた小学校の校長
「子どもが誰もいなかったことを神に感謝します。恐ろしいです。周りには悪人が多くいます。私は子どもたちに“正しい行動”ができるよう教育しています。敵もそう教育すれば、次の世代は良くなるでしょう」
■ネタニヤフ首相「我々は攻撃する」
今後、懸念されるのは、これをきっかけに報復の応酬が始まること。
イラン アラグチ外相
「イスラエルがさらなる報復を行わない限り、我々の行動はこれで終了する。もし報復があれば、我々の対応はより強力で強烈なものになるだろう」
イラン側は、これでいったん手打ちにすると話しているのですが、もう一方は…。
イスラエル ネタニヤフ首相
「イランは大きな過ちを犯した。その代償を払うことになる。イランは我々の自衛と報復の決意を理解していない。我々は攻撃してくる者に対し攻撃する」
■連鎖する“報復”イランの思惑は
今回、大規模な報復をしかけたイランの思惑はどこにあるのでしょうか。その狙いについて、中東の国際政治が専門の慶応義塾大学・田中浩一郎教授に聞きました。
慶応義塾大学 田中浩一郎教授
「4月のイランの攻撃は、イスラエル側に対する“抑止力”にはならず、その後、ハマスやヒズボラの幹部殺害や、ヒズボラ中枢への攻撃などを許す事態になった。そのため、4月よりも強度を高めた攻撃をすることでイスラエルに恐怖を与え、これ以上、攻撃を仕掛けてこないことを狙った。ただ、攻撃は人口密集地を避けて軍事施設に限定していることから、イラン側にはエスカレートさせたくないというメッセージが込められている」
(Q.今後どのような事態に発展するとみていますか)
慶応義塾大学 田中浩一郎教授
「イスラエルは今後、イラン国内へのミサイル攻撃などで必ず反撃する。ポイントは実害が出るかどうか。実害がなければ、イランもある意味“見過ごす”ことができて、撃ち合いは止まる。一方で、重要インフラへの攻撃や死者がでるなど、実害が出た場合には、イランは再び報復に出ざるを得なくなる。大規模な攻撃になれば反撃の応酬につながり、歯止めが利かないイスラエルとイランの戦争になる」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2024
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