更生保護制度の担い手(保護司) 7割を目指す講義NO.6-2 更生保護制度

愛知県の知多半島内半田市にあるアール総合法律事務所の弁護士・社会福祉士の榊原尚之と申します。
講師歴としては、元東京アカデミー講師、日本福祉大学ゲスト講師、元名城大学大学院非常勤講師

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7割を目指す講義NO.6-2 更生保護制度の担い手(保護司)の一部

(2)保護司

①保護観察官との違い

保護観察官は、保護観察とかに従事をする人になりますが、国家試験的には、同じく保護観察とかに従事する保護司との違いが重要になります。

保護司はというと、「保護司法」という法律があります。なので、その保護司法の内容も確認しておかれると良いと思います。

保護司は、ボランティアであり、民間の人になります。
保護司は、民間の人ですが、一応非常勤の国家公務員という身分が与えられています。
ただ、保護司は、国家公務員試験を受けて採用されるというわけではなく、民間の、例えば、普通の会社で働いてて、あるいは公務員をされてて、定年退職した後の社会貢献活動ということで保護司になる、そういった方が多いです。
有名人の保護司もいます。バッドボーイズ佐田正樹さんです。佐多さんは、10代のころに自らも保護司にお世話になっていたとのことです。そのような体験からでしょうか。少年院への慰問活動を熱心にされていましたが、その活動が評価され、法務省から熱烈なオファーがあり、2022年に、法務大臣から委嘱を受けて保護司になっています。
また、保護司を主人公としてドラマ、映画、漫画もあります。「前科者」(ぜんかもの)というタイトルで、映画では、有村架純さんが保護司の役を演じています。

更生保護法第32条では、「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い、」と規定されており、保護観察官と保護司が協力することで、保護観察官のもつ専門性と保護司のもつ地域性・民間性を組み合わせて、保護観察、つまり、指導監督及び補導援護の実効性を高めています。
「保護司のもつ地域性」というのは、保護観察対象者と同じ地域に住み、地域の社会資源に精通しているという意味になります。
定期的な異動が多い保護観察官に対し、地域の事情に精通し、息長く対象者と寄り添える保護司の存在は、スムーズな社会復帰に欠かせないと言えます。

指導監督としては、面接その他の適当な方法により保護観察対象者と接触を保ち、その行状(ぎょうじょう 日々の行いのこと)を把握します。接触の方法としては、更生保護サポートセンターまで保護観察対象者に来てもらったり、あるいは、保護司が保護観察対象者の居住先を訪問することもよくあります。

②保護司制度として期待されていること

保護司制度として期待されていることに触れておきます。

保護司は、国家公務員試験をパスした人ではありません。なので、更生保護等の専門的な知識を活かすというよりも、一般市民、つまり、普通のおじさん、おばさんというところを活かして、犯罪をしてしまった人や非行少年の立ち直りをサポートしていくことが期待されています。これが、保護司という制度です。

保護司は、その職務に従事する際は、保護観察官で十分でないところを補い、 地方更生保護委員会又は保護観察所長の指揮監督を受けて、地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとされています(第32条)。

保護司には、その職務を行うに当って知り得た関係者の身上に関する秘密を尊重しなければならないとして、守秘義務が課されています(第9条第2項)。

なお、保護司が自らの権限で保護観察の終了や延長等、法の執行場面での判断を行うことはありません。

また、保護司は、その置かれた保護区ごとに保護司会を組織することになっています(第13条)。
保護司は、それぞれに配属された保護区において保護司会に加入します。
保護司会では、研修、犯罪予防活動、関係機関との連絡調整、広報活動などの組織的な活動を行っています。

③保護司の身分について

保護司は、身分的には、法務大臣が、直接、委嘱(つまり、お願いする)する非常勤の国家公務員とされています。
保護司の委嘱については、保護観察所の長の推薦によって、法務大臣が行います(保護司法第3条第1項、第3項)。

保護司の委嘱の流れとしては、保護観察所長が、候補者を保護観察所に置かれる保護司選考会(保護司法第5条)に諮問して、その意見を聴いた後、法務大臣に推薦し、その者のうちから法務大臣が委嘱することとなっています。

委嘱する条件には、4つあります。
①社会的信望を有すること
②熱意と時間的余裕を有すること
③健康で活動力を有すること
④生活が安定していること
があり、その全ての条件を具備することが求められます(保護司法第3条第1項)。

また、もう一つ、欠格条項(資格を取得したくても門前払いにされてしまうというもの)というものがあります。
例えば、禁錮以上の刑に処された人とか、成年被後見人や被保佐人は、欠格条項があります。
なので、そういう人は委嘱されません(更生保護法第4条)。
ちなみに、過去に少年院送致になった人は、欠格条項はありません。

被後見人、被保佐人とかに関しては、欠格条項の中に入れるのはどうなんだ、問題だということで、法律改正をする、しないというところで、議論がなされています。しかし、今のところは、欠格条項として、被後見人とか、被保佐人とかが規定されています。

保護司は、実質的には民間のボランティアなので、報酬である給料は出ません。無報酬ということが原則になっています(保護司法第11条第1項)。出るのは、職務に要した実費、例えば、交通費とかの実費のみです(保護司法第11条第2項)。

なお、保護司は、非常勤の国家公務員ですが、国家公務員法が全面的に適用されるかというと、全面的には適用されません。
通常、国家公務員であれば、全体の奉仕者であるという性格から、政治的行為の禁止などの規制を受けますが、保護司は、ある意味で、民間人ですから、政治的活動の禁止みたいなことはルールとしてはありません。
もちろん、保護司としての仕事中に、何か事件に巻き込まれたりして、損失を受けた場合には、補償は受けなければなりませんので、国家公務員に適用される国家公務員災害補償法は適用されます。

④保護司の任期について

保護司の任期は2年ですが、再任は妨げられません。多くの保護司が、10年、20年といった長期にわたり活動を続けています。
最長で78歳(一部の職務については、本人が希望すれば80歳)になるまでは保護司として活動することが可能です(第7条)。

実は、保護司のなり手がいないこともあって、10年以上にわたり保護司をやっている人が、4割以上という統計があります。

保護司の定数は、保護司法により5万2500人を超えないものと定められていますが(第2条第2項)、その人員は減少傾向が続いています。

やはり一般国民にとって、罪を犯した人に対する支援について、「何かしら怖い」というイメージがあって、保護司のなり手に二の足を踏むという人が多いようです。また、保護司になろうとした場合に、家族から、「本当に大丈夫なの?」と心配されるということもあるようです。

保護司の高齢化問題も深刻です。
令和4年の時点では、保護司の平均年齢は、65.4歳です。

女性の比率が26.7%になっています。徐々に女性の保護司が増えてきています。

従来は、定年退職した60歳以上の高齢者が保護司の中核を担ってきたものの、定年年齢の引き上げなどにより、人材確保が難しくなっています。
一番多い年齢階層は、60歳から69歳の年齢階層で、42.1%となっています。
10年後、20年後になると、保護司の多くが引退することになるので、保護司の人手不足の深刻化が予想されています。

バットボーイズ佐田正樹さんは、1978年9月13日生まれなので、現在、45歳になります。45歳というと、年齢階層としては、40歳から49歳の年齢階層になりますが、割合としては、5.6%で、かなり少ない割合になっています。

⑤保護司の職務

保護観察官と協働して、指導監督、補導援護をしたりします。

更生保護法第32条では、「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い、地方委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて、保護司法の定めるところに従い、それぞれ地方委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする。」とされています。

保護司は、指導監督だけでなく、補導援護の一環として、生活環境の調整として、刑務所から出てくる人、少年院から出てくる人が、どのようなところに帰って、生活をするか、就職先はあるのか等、いろいろな生活の調整をしたりする仕事もされています。
保護司は、以上のような改善更生活動以外にも、犯罪予防のための世論の啓発や宣伝活動、犯罪の予防を図るための民間団体の活動への協力等もやっています(保護司法第8条の2)。
犯罪予防のための世論の啓発や宣伝活動の例としては、毎年7月を強調月間とする「社会を明るくする運動」があります。
犯罪をした者及び非行のある少年の更生のためには、地域住民の理解が不可欠です。なので、犯罪予防のための世論の啓発や宣伝活動が重要になります。
あと、保護司の高齢化が深刻になっていますが、犯罪予防のための世論の啓発や宣伝活動を通じて、保護司をやってみたいという人を生み出したいということもあって、現在、犯罪予防のための世論の啓発や宣伝活動に力を入れています。
このようないろいろな事情があって、国家試験でも、この部分が問われたりしています。

ところで、保護観察官も保護観察や生活環境の調整を行っているので、それで十分じゃないかと思われるかもしれません。
しかし、それぞれの数を見ていただくと、保護観察官では不十分であることが分かります。
保護観察官が全国に約1000名であるのに対し、保護司は、全国で約4万7000名あまりの方が活動をしていらっしゃいます。
ですから、この数字を見ても、実際の保護観察であったり、生活環境の調整の業務の中で、保護司が非常に大きな位置を占めているということが分かるかと思います。

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