SNSで池上彰さんや森永卓郎さんになりすまして金をだまし取ったとして男2人が逮捕された。取材していくと、著名人をかたって嘘の投資話を持ち掛ける詐欺グループの実態が見えてきた。
■池上彰さんかたる「投資詐欺」 中国籍の男逮捕
SNSで著名人の名前や写真を無断で使い、ニセの投資話を持ち掛けるニセ広告詐欺。今年に入りわずか3カ月で219億円の被害と、過去最悪ペースで被害が広がるなか、警察幹部は「被害が減る兆しが見えず、むしろ日々増加傾向にある」と話した。
そんななか、ジャーナリストの池上彰さんをかたった投資詐欺に関わったとして先月22日、中国籍の池建宋容疑者(41)が広島県警に逮捕された。
池容疑者の近隣住民
「(容疑者の)家の中に何人か入っていらっしゃって、警ら隊の方が4人ぐらい外で。結構ビックリしました。何かあったんだろうなと思いました」
池容疑者は仲間と共謀して、広島県呉市の70代男性に対し「優良株が購入でき利益が得られる」と嘘を言い、男性宅を訪れて現金710万円をだまし取った疑いが持たれている。
また、京都市の80代女性に対しても同様の手口で500万円をだまし取ったとして、12日に再逮捕された。
2件の被害者らは池上さんをかたった人物からメッセージが届き、投資話を信用してしまったのだという。
池上氏(4月)
「本当に許しがたいですよね。こうやって勝手に使われている私も被害者」
これまで番組では池上さんと共に、犯人に接触を試みてきた。
池上氏(4月)
「私のニセモノがいっぱいいますね」
「まあ(電話)出ないでしょうね」
「絶対に、だまされないでくださいね。私はこうやって投資を呼び掛けたりってこと、一切しません」
池容疑者は調べに対し、「現金を受け取ったことに間違いないが、投資の話は知らなかった」と容疑を一部否認している。
■逮捕の男の人物像は?
池上さんをかたった詐欺に加担していたとみられる池容疑者。取材を進めると、男の人物像と犯罪に手を出すことになった背景が見えてきた。
池容疑者は東京・板橋区の住宅街に住んでいた。周辺住民の間では、裕福な暮らしぶりで有名だったという。
近隣住民
「(Q.どれくらい前から住んでいる?)4~5年近いかな?建て売りが建って。『こんなん誰が買うんだろうね』って大家さんと話ししてて」
池容疑者は高級車を頻繁に乗り回している様子が目撃されていた。さらに…。
近隣住民
「だいたい1年前ぐらいなんですけど、ゴミ出しだったりとかいうところで、高級なものがブランド品のものが捨ててあったりだとかというのが地域の中では話にはなってました。ヴィトンのカバンとか財布とか、グッチのパーカーとか、シャネルのTシャツ。で分かったんで、あの人たちかって」
ブランド品を大量に捨てる現場を目撃されるなど、近隣住民の間では羽振りが良さそうに見えたという。
また、容疑者の仕事については次のように話す。
近隣住民
「池袋で中華料理店をやっていて、妻も手伝っている」
池容疑者は、池袋で油そば専門店を経営していたという。経営者になる前、下積み時代の容疑者を知る人によると…。
下積み時代の池容疑者を知る関係者
「勤務態度は真面目で、料理の腕もしっかりしていた。見えっ張りな面もあり、服や車には金をかけているようだったが、真面目でやる気もあった男が詐欺をやるなんて信じられない」
また、池容疑者の店で食事をしたことがあるという中国人男性は、次のように話す。
店を訪れたことがある客
「最初(池容疑者が)従業員と話しているのが中国語で。話したら、やっぱり中国の人だった」
「(Q.最初は、どんな言葉を掛けた?)『中国の人ですね?』『はい』『おいしいですね』『ありがとう』。そこから始まった」
2人は同郷ということもあり、気さくに話をしていた。
池容疑者は油そば屋の2階と3階にも中華料理店を出していて、経営は順調だと語っていたという。
店を訪れたことがある客
「中国でも何店舗やっていて、何店舗、十何店舗もないと思うんですよ、何店舗もやっていると」
しかし…。
店を訪れたことがある客
「コロナで(中国の店が)全部つぶされて、日本はこれ(この店)だけ残っているよと。そういう話をしましたね」
「(Q.中国にあったお店が全部コロナで?)つぶされたんですね。人の往来を控えめにしたりとか、ロックダウンまでするとか」
中国はコロナ禍で大規模なロックダウンなどを行ってきた。人の往来がなくなるほどの厳格な行動制限は、中国国内の消費を冷え込ませ、日本の店一軒を残し中国国内の店はすべて閉店してしまったという。
警察の調べに、池容疑者は「金に困って犯行に及んだ」という趣旨の話をしているという。
店を訪れたことがある客
「真面目なんですよ。礼儀正しく『ありがとうございました』と。まだ印象に残っているんですよね、びっくりです」
■森永卓郎さんかたる投資詐欺も…
池上彰さんをかたった詐欺の疑いで逮捕されたのは、池容疑者だけではない。
捜査員に連れられ車から出てきたのは、同じく中国籍の温チェクルン容疑者(34)。福島県いわき市の70代女性に「資産倍増プラン」など嘘の案内をし、現金およそ1000万円をだまし取ったとして福島県警に逮捕された。
そして11日、温容疑者は別の女性から1000万円をだまし取ったとして再び逮捕された。
この時、女性に対しかたった有名人が経済アナリストの森永卓郎さんだ。
森永卓郎さん(2019年)
「お金は一生懸命働いて、額に汗して稼ぐのがお金。お金をお金で稼がせてはいけない」
女性がだまされるきっかけになったのは、投資を呼び掛ける森永さんの広告だった。
「銀の取引で利益が出せる」といううたい文句にだまされ、温容疑者に1000万円を手渡したという。
女性は他の人物にも現金を渡していて、被害総額は5500万円。警察は共犯者の行方も追っている。
■息子・森永康平さん 被害の報告寄せられる
同じく経済アナリストで息子の森永康平さんは、次のように話す。
康平さん
「本当にごく一部だとは思いますが、犯人が捕まったということで、少し安心した気持ちはあります」
康平さんは自身のYouTubeチャンネルで、詐欺撲滅の啓蒙(けいもう)活動を積極的に実施。
康平さん(「森永康平のリアル経済学」から)
「みなさん本当に気を付けてください。うちの親父の写真を使ってフェイスブックとかインスタグラムで『銘柄を教えるのでLINEで友達になりましょう』とか、そういう広告を回してるやつらがいるんですけど、詐欺です」
康平さん
「(Q.寄せられた被害額は?)合計すると、今の時点で4億円とか5億円近くいってしまっていると思いますし、父親の分も合わせると15億ぐらいになっているかと」
康平さんのもとへは被害の報告だけでなく、切実な連絡が届くこともあるという。
康平さん
「『こういう広告があったんですが、これ本人ですか?』という問い合わせもありますし、すでにお金を振り込んでしまった方からすると『いつになったらお金を返してくれるんですか』という問い合わせもあります。それに対応する義務はもちろんないんですけど、とはいえ詐欺に引っ掛かってほしくないので、こちらも時間を作って返信したりっていう時間も取られますし、中には本当に信じ切っていて怒っている人からの連絡も来ます」
逮捕された温容疑者と池容疑者は、いずれも金を受け取りに行ったことは認めたが、詐欺の容疑は否認。捜査関係者によると、2人は匿名性の高いアプリやSNSで何者かと中国語でやり取りしていたといい、警察が解析を進めている。
警察庁関係者
「背景には中国人犯罪グループが関わっている可能性もある」
■中国国内で“闇バイト”の募集 SNSで多く投稿
今年3月、著名人をかたり日本人相手に投資詐欺を繰り返していたとして、中国人とタイ人からなる詐欺グループのメンバー63人がタイで一斉に拘束された。
拠点には、被害者とやり取りをしていたとみられるスマートフォン数十台も合わせて押収された。
警察庁関係者
「被害者が振り込み限度額に達していたり、窓口で拒否された場合に備え受け子を使っていて、中国国内のSNSで受け子を募集するケースがある」
中国の犯罪事情に詳しい専門家に話を聞くと、中国国内ではSNSを使ったいわゆる“闇バイト”の募集が数多く投稿されているという。
中国の犯罪事情に詳しい
一橋大学 法学研究科
王雲海特任教授
「(中国では)SNS、インターネット上の闇バイトの募集とか特殊詐欺のケースが日本より多いと思います。(闇バイトは)打黒工(ダーヘイゴォン)と中国語では言います」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年6月14日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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