完食指導とは真逆の「給食の量を減らしてもいい」取り組み それでも給食容器は“からっぽ”になった

食べられない子供に給食の完食を強要する行き過ぎた完食指導。この指導は、子供たちのトラウマになるなど深刻な影響を及ぼしてしまうこともあります。福岡市の小学校では、給食が楽しい時間になるように、ひとりひとりが「食べられる量」を大切にした取り組みが行われています。みんなが好きな量だけを食べる教室を見せてもらいました。

◆「減らす人は先に減らしてください」
福岡市博多区の博多小学校。6年3組の教室では、4時間目の授業が終わり、子どもたちが給食の準備を始めていました。この日の献立はクリスマス特別メニュー。子どもたちも楽しみな様子です。

「手を合わせてください。おいしい給食頂きます」

「いただきます」の挨拶の後、数人の子どもが立ち上がりました。

博多小学校6年3組 担任 山崎悠太郎教諭
「食べられる分以外は減らしていいので、減らす人は先に減らしてください」

このクラスでは、配膳された分量が多いと感じたり食べられない食材があったりする子どもが自分が食べられる量に調整する時間が設けられています。

博多小学校6年3組 担任 山崎悠太郎教諭
「まずは自分が食べられる量というのを大事にしています。体格によって食べられる子、食べるのが苦手な子がいますので、減らすときに自分で可能な限り減らすようにしています」

◆「食事が余ってしまう」リスクは?
給食を減らすことで心配されるのが、食べ残しですが・・・
給食をもっと食べたいという児童が「おかわり」することで、給食の容器は空っぽになりました。給食の量を自分で調整できることで、児童もストレスなく給食を楽しむことができているようです。

子どもたち
「私は普通の量よりももっと食べたいので、増やしたり減らしたりできるのはいいと思います」
「自分は食べる量が結構少ないんですけど、だから本当にすごい助かってます。僕以外にも量が食べられない子がいるし、逆にたくさん食べたい子も居るから、そことのバランスがうまく取れてていいと思います」

このようなルールを設けている学校がある一方で、「好き嫌いを減らしたい」「食べ物を大切にしてほしい」という考えから給食の完食を強制する指導がなくならない実態もあるようです。

兵庫県内に住む看護師の松村美樹さん(45)は4年前、当時3歳の娘が完食指導を受けたと言います。

松村美樹さん(45)
「幼稚園のお迎えに行ったときに、まだ口の中にご飯が入っているんです。『もう食べられないと思うので引き上げてください』と言って、そのときに先生に聞いたら、『うちのクラスは全員完食を目指してますから』と。娘は、家でも大好きなお菓子でもゴックンができないと言う症状が出てきて、自分でティッシュに吐いたりとか」

松村さん自身も子供の頃に受けた完食指導がきっかけで、人と一緒の食事に不安を覚える「会食恐怖症」を発症したそうです。

松村美樹さん
「私の症状として一番強かったのは『吐いたらどうしよう』という不安です。それで『気持ち悪くならないようにしよう』と思うと、食べ過ぎちゃだめだし、油ものは避けたほうがいいのかなとかいろんなことを考えるようになって」

◆完食指導が会食恐怖症のきっかけに 
一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会が、会食恐怖症の当事者を対象に2019年に行ったアンケートでは、発症した一番のきっかけについて「完食指導や周りからの強要」と回答した人が最も多く、全体の約35%を占めました。

調査を行った団体の代表は、「ひとりひとりにあわせた対応が求められる」と話します。

一般社団法人 日本会食恐怖症克服支援協会 山口健太代表理事
「例えば偏食とか少食とかで食べられないとかあると思うんですけど、それに対してもうちょっと個別的に。全体で残さず食べなさいというよりは、その子にとってはまだ一口早いかも知れないとか、ちょっと一口かじってみるとか、匂いを嗅いでみるとかの方がいいかもしれないとか・・・」

◆求められる「ひとりひとりにあわせた対応」
偏食がある児童生徒には対しては、文部科学省も「食に関する指導の手引」の中で、「達成感や自信につながるよう、まずは苦手な食品の匂いをかぐだけ、ごく少量を食べてみるなど、偏食の原因を軽減するための取組を段階的に行う」と記載されています。「学校教育の一環であり校長のリーダーシップのもとで指導に取り組むこと」とされている給食。笑顔あふれる時間になるよう、学校全体で児童や生徒ひとりひとりに目を配ることが大切です。

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