イエメンを“実効支配”する親イラン勢力「フーシ派」が、ガザ紛争に介入しています。イスラエル人が関係している貨物船を紅海で拿捕し、世界に衝撃を与えました。
強大な軍事力を誇り、中東地域に広がる「反米・反イスラエル」のネットワークを形成する「フーシ派」、一体どんな組織なのか、イエメンはどんな場所なのか、ガザ紛争はイスラエルとイランの代理戦争に拡大するのか、手作り解説でお伝えします。
■海運の要路で…
イエメンの武装勢力「フーシ派」が拿捕した貨物船「ギャラクシー・リーダー」は、バハマ船籍の自動車輸送船で、「日本郵船」が運航。
アフリカ大陸とアラビア半島に挟まれた紅海で拿捕されました。
この貨物船の実質的な所有者はイスラエルの大富豪です。
拘束されたとみられる乗組員はウクライナやブルガリアなど多国籍の25人で、日本人は含まれていません。拿捕された際、積み荷はありませんでした。
フーシ派幹部が貨物船を訪れたときの映像では、面会した乗組員に対し「客人として扱う」とアピールしました。
その一方で、ガザ地区での攻撃がやまない限り、今後もイスラエルに関係する船舶を標的にすると表明しています。
■親イラン勢力「フーシ派」
では、フーシ派とはどういう組織なのでしょうか。
イエメン北西部を拠点とするシーア派分派の武装勢力で、2004年に暗殺された反体制派の政治家で宗教指導者だったフセイン・バドルッディーン・フーシの名前に由来します。
イスラエルの研究所によると戦闘員は推計20万人。
イランの支援を受けて軍備を増強し、射程2000キロの弾道ミサイルまで保有しているとされています。
ガザ侵攻をめぐっても、フーシ派はハマスにいち早く連帯を示し、ミサイルや無人機をイスラエルに向けて発射するなど攻撃を繰り返していました。
■世界最悪の人道危機
2011年、中東で起こった民主化運動「アラブの春」で独裁政権が崩壊すると、その流れをくむ暫定政権と、「フーシ派」の間で内戦が勃発。
フーシ派が首都サヌアを制圧すると、暫定政権は南部の都市アデンに拠点を移しました。
この暫定政権を支援したのがサウジアラビアやUAE=アラブ首長国連邦などで、サウジが主導する連合軍はフーシ派を激しく空爆。
フーシ側もサウジの石油施設をミサイルで攻撃するなど、泥沼の紛争になっていました。
その影響で、人口3440万人ほどのイエメンで、国民の約35%が飢餓に陥るなど、「世界最悪の人道危機」に直面しています。
ただ今年(2023年)になり、中国の仲介でイランとサウジが外交関係を正常化したこともあり、紛争は小康状態になっています。
■イスラエルを囲む「抵抗の枢軸」
このフーシ派や、ハマス、レバノンの「ヒズボラ」、イラクやシリアで活動する民兵組織などは、イランによって支援され「反米・反イスラエル」を標榜する「抵抗の枢軸」と呼ばれるネットワークを形成しています。
今回の貨物船拿捕についてイスラエル首相府は「イランによる新たなテロ行為」だと批判していますが、イラン側は関与を否定。
しかし、イランの最高指導者ハメネイ師は10月「イスラエルの犯罪行為が続けば、誰も抵抗勢力を止めることができなくなる」と述べており、地域紛争が拡大し、大国同士の代理戦争に発展しないか懸念されています。
(「サンデーモーニング」2023年11月26日放送より)
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