「2024年問題」ともいわれる物流の危機。問題の解消に向け、政府はネット通販の「送料無料表示」の見直しや、“トラックGメン”の設置など再配達率を半減させる政策パッケージをとりまとめています。現在の状況を詳しく解説します。
■“物流危機”2024年問題 “ドローンで配達”ももうすぐ?
井上貴博キャスター:
世界最高水準のサービスによって、世の中は大変便利になりました。ですが、無理がたたっている現状を変えていく必要があります。
宅配業界のサービスは今ここまできています。例えば日本では3月、東京・奥多摩町で“宅配ドローン”の実証実験が行われました。目視なしで初飛行し、約2キロ離れた民家に食料品などを配達しました。こういった実証実験は日本各地で行われ、“宅配ドローン”の実用化に向けて動き出しています。
一方、既に正式営業が始まっているのが中国です。深セン市の都市部で宅配ドローンが営業を開始し、これまでに12万個配達。配達時間は平均で約12分だそうです。
ドライバーが不足する2024年問題は来年に迫っています。
2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が設けられます。働き方改革ということもありますが、人手不足になる、ひいては輸送量が減っていくということは間違いないだろうということです。
既にヤマト運輸は6月1日から、一部区間で宅急便配達を“1日遅くする”措置を始めています。例えば、配達指定時間が「翌日午後2時以降」のものは、「翌々日の午前中以降」というような措置です。
■年間“約50億個”の宅配便 うち“5億個”が再配達
日本で宅配便はどのくらいの取り扱い個数があるのでしょうか。
直近5年で10億個ほど増えました。国交省によりますと1年間で今、約49.5億個の取り扱い数があるわけです。
国交省の調査(2022年10月)によると、このうち“日本特有”とも言われている再配達は11.8%です。つまりざっと単純計算で、再配達の個数が5億個ぐらいある。再配達は日本特有の大変良いサービスですが、ここがどんどん業界の皆さんの重荷になってきています。これを変えませんか?ということで政府も動き出しています。
6月2日に公表された物流革新に向けた政策パッケージです。
例えば
▼インターネット通販などでの「送料無料」の表示の見直し
▼高速道路のトラック最高速度 時速80キロから引き上げ
▼荷主・運送業者との取引を監視する“トラックGメン”の設置
などがあります。
その中の柱の一つとして、「宅配ボックスの普及」があげられています。今、11.8%の「再配達率」を2023年度には半減させるため、インセンティブを与えようということで、1度目の配達で荷物を受け取った方に関しては、買い物で使えるポイントなどを付与する。再配達ではなく、1度目の配達で荷物を受け取るように、利用者に仕向けていくことができないかなど検討されているわけです。世界広しといえど、再配達のサービスがここまで向上してるのは日本ぐらいなものですから、大変便利ではあるのですが…。
ホラン千秋キャスター:
再配達がここまで当たり前のものになってしまうと、例えば有料にしましょうとなったときに、今まで無料だったのにどうしてそこでお金を取るの?みたいな反発ももちろんあると思います。ただ、便利を追求しすぎてしまって、そのしわ寄せが労働者の皆さんのところにいってしまっていることを考えると、1人1人がこの便利さについて、少し不便になったとしても労働環境の向上を考えていこうという気持ちになってもらえたらと思いますね。
萩谷麻衣子弁護士:
全くその通りだと思います。労働環境の向上もそうですし、再配達が増えるとCO2の排出量も増えて地球環境にも悪いですよね。だから私も再配達をできるだけ少なくするために、宅配ボックスを指定してみたり、あるいは自分から送る場合は、相手の方に追跡番号を教えていつ届くのかチェックできるようにするなどしています。宅配ボックスはすぐに取らないと、いっぱいで持ち帰りましたとなってしまうので、すぐに取るっていうのが重要かなと思います。
■広がる様々な宅配便の受け取り方
井上キャスター:
宅配便の受け取り方法はだいぶ広がってきました。
▼置き配 利用経験あり→50%
【利用しない理由】
・盗まれないか心配
・家に不在だと他人にバレる
▼コンビニ受取 利用経験あり→33.9%
【利用しない理由】
・取りにいくのが面倒
・近所に無い
▼街中宅配ボックス 利用経験あり→12.6%
【利用しない理由】
・取りにいくのが面倒
・受け取りたい場所に無い
(国交省2023年4月発表「物流に対する消費者意識に関するアンケート」より)
それぞれメリット・デメリットがありますがどう普及させていくのか、そして再配達有料化なども視野に、このあと改革が行われるのかもしれません。
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