進化し続ける「太陽光発電」 南国の島の挑戦 「電力自給率100%」実現したホテルも【Jの追跡】(2023年8月19日)

 沖縄本島から南西に約290キロ。美しい海と自然に恵まれた宮古島。今、この南国の楽園で、日本最大級の画期的なプロジェクトが始まっています。住宅の上に広がる無数の太陽光パネルと蓄電池をセットにした新たな試み。進化し続ける太陽光発電。その最前線を追跡しました。

■太陽光パネル 台風の強風に耐える?

 山口豊アナウンサー:「沖縄県宮古島では太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、再生可能エネルギーをより安く便利に使うための最先端の取り組みが進められています」

 今、太陽光発電が進化しているといいます。キーワードは「発電+蓄電池」です。

 宮古島未来エネルギー・比嘉直人社長(53):「日頃から天気図も見ていて、来週もまた台風が来る」

 台風の被害や直撃が多い宮古島。今回の台風6号でも被害がありました。

 「台風による停電被害を最小限に抑えたい」と、太陽光パネルと蓄電池をセットで導入した上地登さん(63)のお宅を訪ねました。

 上地さん:「この地域は宮古島の中でも、台風の時には停電して、復旧も一番遅い」

 そこで2年前、太陽光パネルと蓄電池を設置することにしました。

 比嘉社長:「平均の家庭からすると、2日分ほどの容量が十分にある」

 高さ115センチ、厚さ15センチとコンパクトな蓄電池ですが、近年、性能が格段に向上しました。上地さん宅の場合、地区が停電しても、2日間は蓄電した電気で賄えるといいます。

 上地さん:「停電してもチャッと切り替えてくれる。それがうれしい」:「(Q.停電しないということ?)停電しない」

 しかも、驚くことに、初期費用は「太陽光パネルも蓄電池も0円で設置した」といいます。

 実は、住民は設備を設置する場所を貸すだけで、設備費や設置費用、さらにはメンテナンス料も払う必要はありません。

 比嘉社長:「発電した電気を届けて、その料金(電力料金)を払ってもらうことで、設備投資分を回収する」

 電気の使用料は比嘉さんの会社に払いますが、導入前に比べてお得に利用できます。現在、導入されている国や県の負担軽減策がなければ、1~3割程度割安になるといいます。

上地さん:「電気料も安くなるし。停電もしない。環境にもやさしい」

 台風の強風のなかでも、太陽光パネルは耐えられるのでしょうか。

 比嘉社長:「沖縄では本土と比べ、1.5倍くらいの強度が求められる。その基準をクリアできる構造に設計している」

 事業を始めて5年、これまで台風による損傷などの被害はないそうです。

■「電力自給率100%」実現 宮古島のホテル

 こうした試みは、リゾートホテルでも行われています。利用者が減ったテニスコートなどに太陽光パネルを設置しました。巨大な蓄電池も導入することで、ホテルで使う電力の4分の1を賄うことができるといいます。

 宮古島東急ホテル&リゾーツ 管理部支配人・渡辺和之さん:「おそらく月100万円弱の電気代の削減になるかと」

 現在、宮古島での導入は761世帯と国内最大規模となっています。島全体の3%ほどですが、急速に増えているといいます。

 このプロジェクトの注目すべきところは、そのすべてを比嘉さんの会社が遠隔で管理・制御していることです。

 比嘉社長:「青色が太陽光発電電力量4000kWほど。(ピンク色の)蓄電池残量も正午までに100%」

 そして、台風などで停電が予測される場合には、遠隔操作により停電に備えることが可能だといいます。

 比嘉社長:「なるべく満充電して、(蓄電池の)放電を止める」

 各家庭の太陽光パネルと蓄電池などを束ね、あたかも一つの発電所のように機能させることから、仮想発電所「バーチャルパワープラント」と呼ばれています。大規模施設に頼らず、低コストで再生可能エネルギーを安定的に供給しようとする次世代の電力システムです。

 この試みが可能になったのが、何よりも蓄電池の性能向上です。ここ数年でコストは2分の1、容量は2倍になったといいます。

 比嘉社長:「台風・停電時に切り替わる速度が速く、住民も気付かないくらい性能的にも良さがあった」

 台風6号では宮古島でも停電する地域がありましたが、蓄電池を導入している世帯のほとんどは停電を免れたといいます。

 宮古島のこうした取り組みについて、専門家は仮想発電所を拡大していくなかで、どれだけ電力ネットワークを安定させるかが課題だといいます。

 太陽光発電などに詳しい東京大学・前真之准教授:「全国でこういう取り組みを自然エネルギーを増やしながら電気も安心して使える。一番大事なことはみんなが快適で安い電気代で暮らせる。地域が豊かになること」
 
 実は、宮古島には電力自給率100%を実現したホテルがあります。

 比嘉社長:「コテージ型ホテルで宿泊施設になっています」

 4月にオープンした「ZUMI TERRACEうちなーみやリゾート宮古島」では、12棟からなるすべての客室に太陽光パネルと蓄電池を設置し、ホテルで使うすべての電気を自給自足できるようになっています。

 宿泊客専用のレンタカーは、全て電気自動車です。実は、この車には秘密があります。

 ZUMI TERRACEうちなーみやリゾート宮古島 内宮則一さん:「宮古島は台風・停電がある所なので、蓄電池とEV車を使って(電気を)戻して、停電しないホテルを作りました」

 この電気自動車を「動く蓄電池」として利用し、非常用電源として、長期停電にも備えられるようにするといいます。

■蓄電池の進化で経済的なメリットも

 一方、東京都では、対策チームが太陽光パネルと蓄電池の利用拡大を推進しています。

 太陽光発電の設置率が約4%と道半ばの東京都。太陽光発電の支援に加え、今年初めには蓄電池の補助金を2分の1から4分の3へと引き上げました。

 東京都環境局・家庭エネルギー対策課長 坂下典久さん:「売るよりも、自分で使う方が経済的メリットも高くなっている」

 資源エネルギー庁によると、買取価格が年々下がる一方で、電気料金が高騰しています。蓄電池の進歩で、売らずに自分で使うことが容易になり、経済的メリットが増しているといいます。

 電気代高騰で増えているという補助金の申し込み。この日は、一戸建てで暮らす70代夫婦も業者が設置に適しているかをチェックしました。

 男性:「電気代を見てると。今後はもっと上がってくる。将来を考えるともう年金生活なので」

 今回、太陽光パネルと蓄電池を設置する予定です。通常だと280万円かかる費用が、都の補助金を使えば約100万円と約3分の1に削減されます。

 都の試算によると、月々の電気代が1万円の家庭の場合、太陽光パネル導入で約7千円安くなり、約6年で元が取れます。蓄電池をセットで導入した場合、約9千円安くなり、約9年で元が取れるといいます。

 ただ既存の住宅に設置する場合、注意点があります。

 東京大学・前真之准教授:「雨漏りの心配する人もいるので保険を整備するとか、安心してみんなが利用できる仕組みづくりも大事。パネルを廃棄するときにどう効率よく集めるか」

 3年前、江戸川区にある分譲マンションでは1000万円を掛け、太陽光パネルと蓄電池をセットで導入しました。

 東京都住宅政策本部 マンション課長・山口大助さん:「(管理組合が)大規模修繕を行う際に、東京都で補助金が出ると知って」

 発電した電気は蓄電池に充電し、電灯などの共用部分の夜間電力として使用されます。さらに照明をLED化するなど、年間240万円掛かっていた共用部分の電気代を約160万円削減できたそうです。

 進化する太陽光発電。気候危機とエネルギー危機のなか、世界中が注目しています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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