津山恵子 ジャーナリスト 「トランプ政権:米国と世界の行方」(10) 2017.6.21

Keiko Tsuyama, Journalist
共同通信出身で、ニューヨーク特派員経験もある津山さんが「トランプ政権とメディアの対応」と題して話した。

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/34862/report 

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記者による会見リポート

他人事ではない米メディアの苦境

ニューヨークに住んで14年になるそうだ。トランプ政権のドタバタぶりは日本でも詳しく報道されているが、肌感覚までは住民でないとなかなかわからない。そのギャップを埋めるのに、最適な会見だった。

外国人の配偶者を持つ米国人はツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の使用を控え始めている――。近所に日本人妻の知り合いがたくさんいるからこそ仕込める話題である。

で、なぜか。SNSには反トランプのツイートがあふれている。うかつに「いいね」をクリックすると、それが移民局に知れてグリーンカード(労働許可証)がもらえなくなるかも。それを懸念しているのだ。

心配しすぎという気もするが、そうなっても不思議ではないと思わせるところがトランプのトランプたるゆえんなのだろう。

記者会見におけるスパイサー報道官のしゃべりではなく、それを聞いている記者たちの表情という映像も面白かった。バカバカしい、聞くに堪えない、あきれた、噓つけ……。そう言わんばかりの顔また顔。余談だが、大統領同行の際によくしゃべったエープリル・ライアン記者の姿も出てきて、懐かしかった。

米国では低所得層が新聞をやめ、ケーブルテレビをやめ、無料のネットニュースしか読まなくなり、経済格差が知識格差を生み、それがトランプ勝利につながったという。SNSの発達に伴う影響力低下と業績不振。米メディアの苦境は日本メディアにとっても他人事ではない。

英紙ガーディアンが導入した寄付制度(サポーター=年49ポンド、パートナー=同149ポンド、パトロン=同599ポンド)が紹介されたが、エリートと大衆の階層がある国だから成り立つ感がなくもない。日本のオールドメディアを支える団塊の世代は遠からずいなくなる。それまでに日本も手を打たなくては……。

日本経済新聞社編集委員兼論説委員
大石 格

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