コロナ禍の新たな支援策として、自民・公明の与党が政府に申し入れた、年金受給者への“5000円給付案”。なぜ給付対象を限定するのか?また財源は?申し入れの経緯とともにみていきます。
■総額1300億円 自公幹部が直談判
ホラン千秋キャスター:
年金受給者への“5000円給付案”。政府としてはコロナ禍の新たな支援策として、検討しようとしていたんですが、批判が続出しています。そもそも、なぜ年金受給者だけに給付しようということになったのでしょうか。
年金というのは、その時の物価や現役世代の賃金などに連動して金額が変わっていきます。
コロナ禍が長引くことで、業績が落ちた企業がたくさんあり、現役世代の賃金が下がってしまいました。そのため、年金もそれに応じて変化し、4月からは年金額が改定され、「0.4%引き下げ」ということが決まっています。
ではこの0.4%、金額にするとどれくらいなのかというと・・・例えば、厚生年金を受け取っている夫婦2人分の標準的な年金額は、これまでひと月あたり22万496円だったのが0.4%下がりますと、903円減額され、21万9593円となります。ですので、“この下がった分を5000円で補助しましょう”という考えだったんです。では実際に5000円を年金受給者に給付すると、どれくらいの金額になるのでしょうか。
年金受給者は、住民税非課税世帯を除き、約2600万人いますので総額は約1300億円になります。この総額が大変大きいということ。そして、大変なのは年金を受給している方々だけではないということで批判が集まっていたんです。
この案が浮上した経緯を見ていきます。
3月15日に自公幹部が岸田首相に「5000円を年金受給者に給付しましょう、してください」という直談判をしに行きました。
1300億円の財源について自民・茂木幹事長は「新型コロナウイルス対策の予備費で対応できるのではないかと思う」と話しました。
■選挙前のバラマキ?年金受給者からも反対の声
岸田首相は「重要な申し入れなので、政府としてしっかり対応していきたい」と話すなど、前向きに動き出すのかと思われたのですが、批判が続出しました。
具体的にどんな批判が出たのかというと、立憲民主党の蓮舫議員は3月17日の参院予算委で「なぜ高齢者だけなのか、7月は参議院選挙がある。選挙目当てではないか」と話しました。
他にも、街頭で話を聞いたところ、大学生は「全世代苦しい思いをしている。金額を含め、給付対象の見直しが必要だと思う」というふうに話してくれました。また、実際に年金を受給されている方も「支給に反対。いらないです。本当に困っている人にあげればいいのでは」と話します。ただ、年金を受給されている方にも様々な状況の方がいらっしゃるので、この方の場合は「いらない」という意見でした。
そして自民党の中堅議員も「自民党の議員も報道で初めて知る形になっている。なぜ給付が必要か地元で説明できない」と話すなど、かなり突然のことだったのかもしません。
■背景に“党利党略” 最終的には見送りに?
井上貴博キャスター:
あくまでも与党側の理論としては現役世代はこれから賃上げが期待できる。一方で年金受給者はそれが厳しいだろう。だから年金受給者に、ということなんでしょうけれど、どうも選挙前のバラマキにしか私は感じられなくて、この政治、政策のあり方っていつまで続くんだろうかと感じます。
星浩TBSスペシャルコメンテーター:
まず、非常に筋の悪い給付金ということは間違いないです。
それで選挙が近いので公明党も5000円の給付金をお願いします、というのがあって。最近、自民党と公明党はちょっとギクシャクしていたので、これで一致すれば自公関係もスムーズにいくだろうという、かなり目先の利益、党利党略というところがありますし、やっぱり少なくとも給付金の財源もはっきりしないわけですし、将来世代にツケ回しになるわけですからね。
非常に筋が悪いということで、実は岸田首相も最初からこれはちょっとどうかなという感じだったので、最終的には今回はこれは見送りになると思いますね。
井上キャスター:
本当の意味で困っている方に速やかに支給というのは理解できるんです。でもそれだったらデジタルで所得をある程度把握して、本当に困っている方に年齢なんて関係なく、ということになると思いますけど、何かこう“シルバー民主主義”で、やはり選挙にこっちの方が有利だろうって見えてしまいます。
星コメンテーター:
投票にもよく行く世代ですから。やっぱりアルバイトがなくなった学生とか、お客さんが減っている飲食業の人とか本当に困った人にどういうふうに届けるかという工夫を考えるべきだと思いますね。
■岸田首相の発言にも変化“しっかり対応”から“よく検討”に
ホランキャスター:
星さんの話のなかで、「見送りになるのではないか」とあったんですが、岸田首相も当初は「政府としてしっかり対応していきたい」と話していたんですが、3月22日の参議院予算委員会では「様々な意見があるということは承知しております。政府としてもよく検討をしていきたい」と“しっかり対応”から“よく検討”に変化しました。
政府関係者によりますと「“どうして年金受給者だけ?”という感があるので、経済対策のパッケージとして出すということになると思う」といった見立てのようです。
井上キャスター:
党内でどういう話し合いが行われているのか政府を含めた内部の話し合いなどが全く見えてこない中で、リーダーシップも見られず、
ん?という感じはしています。
星コメンテーター:
3月22日に当初予算が成立しますので、これからは次の経済対策が焦点になるんですが、やはり自民党全体できちんと議論して、必要なものを法律にして、国会できちんと透明性を高く議論をして、それで予算を支出するということ。
そして、先進国どこの国もそうなんですが、新しいことをやるからには財源をきちっと明示する。歳入をきちっと明確にするということをやらないと、出すものだけはどんどん出していくというのは先進国の中でもちょっと日本だけ特異な存在になっていますので、そこは考え直してもらいたいと思います。
井上キャスター:
それはどこがグリップできてないんですか。
星コメンテーター:
やっぱり一番大事なのは議会ですね。議会でそういう歳出だけをやるというわけにいきませんよと。ちゃんと歳入を確保した上で歳出しましょう、というのが議会ともちろん政府、日本でいうとその財務省も、一時ほどじゃないですけど非常に力が弱くなっていますので、そこをきちんと立て直してもらいたいと思いますね。
(22日17:15)
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