「異次元の少子化対策」の一環として政府は、児童手当の所得制限撤廃や、支給年齢の段階的引き上げを行う方向で検討に入りました。
その一方で国会では「N分N乗方式」への言及が相次いでいます。どんな制度なのか、試算とともに考えます。
子どもの数が多い世帯ほど、所得税負担が軽減される「N分N乗方式」
久保田智子 編集長
児童手当の拡充について動きがありました。現在、一定以上の収入がある世帯に対しては、減額、または、支給対象外となっている児童手当ですが、政府はこの所得制限を、撤廃する方向で検討に入ったということです。
さらに支給年齢についても、現在は15歳ですが、それを18歳まで段階的に引き上げることも検討するということです。
そんな中、注目されているのが「N分N乗方式」です。自民党の茂木幹事長が紹介して、一部の野党も導入を訴えています。
簡単に言うと、子どもの数が多い世帯ほど、所得税の負担が軽減されるというもの。先進国の中でも、出生率の高いフランスが導入している方式です。
N分N乗方式の“N”は、家族の人数に応じた数字です。大人を1、第1子と第2子は0.5、第3子以上は1と計算します(※フランスの場合)。
例えば、夫婦2人の家族だと、1(夫)+1(妻)で、Nは2という数字に。
一方、子どもが3人いる夫婦では、1(夫)+1(妻)+0.5(第1子)+0.5(第2子)+1(第3子)で、Nは4という数字になります。
この数字をもとに、所得税を計算して、世帯全体の所得を、Nで割って出た数字で税率が決まり、税額につながります。この税額をNでかけて「所得税」になります。
“片働き”の夫婦と子ども2人(4人家族)で年収800万円の世帯のケース
具体的なケースで見ていきます。
(※生活デザイン株式会社 藤川太 代表 監修)
【現状】
稼いでいる“個人単位”で所得税が課税されます。
夫の課税所得が400万円の場合、それに対する所得税が37万2000円となります。
【N分N乗方式】
収入の有無に関わらず“世帯単位”で所得税が課税されます。
1(夫)+1(妻)+0.5(第1子)+0.5(第2子)で、Nは3です。
夫の課税所得400万円を、Nである3で割った金額で税率が決まり、1単位あたりの所得税は6万6000円。これに3をかけて、世帯全体の所得税は19万8000円となります(現状の37万2000円と比べると17万円程度の“減額”に)。
■同じ家族構成で、年収800万円の“共働き”世帯だとどうなる?
一方、課題も指摘されています。夫の年収500万円、妻の年収300万円の場合。
【現状】
課税所得は、夫が230万円、妻が107万円。
それぞれに対する所得税を合わせて、13万2000円+5万3000円=18万5000円となります。
【N分N乗】
夫婦それぞれの課税所得の合計(230万円+107万円=337万円)を、Nである3で割った金額で税率が決まり、1単位あたりの所得税は5万6000円。これに3をかけて世帯全体の所得税は16万8000円となります。
片働きでは、現状:37万2000円→N分N乗:19万8000円。
共働きでは、現状:18万5000円→N分N乗:16万8000円。
つまり方働き世帯に比べると減額幅は小さくなります。
山本恵里伽キャスター:
共働きだと、そこまでの恩恵は得られないということですか?
久保田編集長
不公平感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。岸田総理はこのように課題を指摘しています。
岸田総理(1月26日)
「共働き世帯より、片働き世帯が有利になることや、高所得者に税制上有利になるなど、さまざまな課題がある」
加えて、低所得者層への恩恵も限定的という声も上がっています。
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