【解説】ロシア黒海艦隊の旗艦が沈没 一方、日本海ではミサイル演習 戦況への影響や演習の狙いについて専門家に聞く

ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没しました。その原因は断定されていませんが、ウクライナ侵攻をめぐる戦況にどんな影響があるのでしょうか。また、ロシアは14日、日本海でミサイル発射演習を行ったと発表しましたが、この演習にどんな狙いがあるのでしょうか。これらの疑問について、専門家に聞きました。

■ロシアの軍艦「モスクワ」なぜ沈没?

井上貴博キャスター:
今、最も新しい情報としては、“首都キーウに対する攻撃が再開された可能性がある”ということです。しかし、詳しい情報や映像などはまだ入ってきていません。まずは戦況からです。

14日にロシア当局は、ウクライナ軍がロシア西部を空爆し、幼児含む8人が負傷したと主張しました。ウクライナは、そんなことはやっていないとして情報戦が続いています。

13日ロシア国防省は、ロシア国内への攻撃が続けば、首都キーウなどを攻撃すると警告しています。首都キーウから国境沿いに注力していたという中でまた再びキーウへの攻撃かというところです。

そして、14日ロシアの軍艦「モスクワ」が黒海で沈没したという情報が入ってきています。

黒海艦隊の旗艦・巡洋艦「モスクワ」は攻撃能力を持ち、全長は186mです。新丸ビルを横倒しにしたぐらいの大きさがあります。最大乗員は510人でロシアの軍事力の象徴とも言われていますが、なぜ沈没したのか。

ロシアの国防省によると火災で弾薬が爆発し、乗組員は全員退避をしました。その後、荒波により沈没したと発表しています。

しかし、ウクライナ側は・・・

14日ウクライナのオデーサ州知事によると、黒海を守るウクライナ製・対鑑ミサイルであるネプチューンミサイルは、ロシアの巡洋艦「モスクワ」に非常に深刻な被害をもたらした。ウクライナ側の作戦が成功し沈没に至ったとするのがウクライナ側の発表です。

ホラン千秋キャスター:
沈没に至った理由は、各国発表している理由は違いますが、いずれにしてもロシア軍は巡洋艦を失ったというところは間違いないわけですよね。

小谷哲男明海大学教授:
ロシアが、ロシアの軍艦「モスクワ」が沈没したことは認めていますので、この船はもう存在しないということになると思います。

ホランキャスター:
この規模の巡洋艦をロシア軍はいくつ所有しているのでしょうか。

小谷教授:
この巡洋艦は同じタイプのものが3隻ありますが、その1隻が失われたということです。

ホランキャスター:
その1隻を失うと、どのくらいの影響がロシア軍にはあるでしょうか。

小谷教授:
「モスクワ」に関しては黒海艦隊の旗艦ということで、司令部がこの船の中にあったわけですから、指揮統制がこれから難しくなります。一番重要なポイントは「モスクワ」という船は、防空を担っていた船です。黒海からクリミア半島はもちろん、ウクライナ南部に対してレーダーで、常に飛んでくる飛行機やミサイルを見張っていて、飛んできたら撃沈するという役割を果たしましたが、それができなくなったので、ロシア軍は黒海周辺で制空権・航空優勢を失うということになると思います。

ホランキャスター:
攻撃の威力が少し減退するというわけにはならないですか。

小谷教授:
攻撃力はあまり変わらないのですが、空からの攻撃をウクライナ側がやりやすくなります。NATO側も偵察機などを近くに飛ばして、ウクライナに情報提供しやすくなるので、かなり戦力の面ではウクライナに優位になっていくのではないかと思います。

■プーチン大統領各国にプレッシャー北欧2か国や日本をけん制

井上キャスター:
そういった状況の中で、プーチン大統領はウクライナ以外の様々な国に対してプレッシャーをかけ続けています。

まず北欧ですが、NATOへの軍事同盟の加盟申請を数週間以内に判断する考えを示していたフィンランドとスウェーデンです。

これまでは軍事的に中立をを保っていましたが、ここにきてNATOに加盟したいということになってきました。

ロシアのメドベージェフ前大統領は14日に自身のSNSで、「フィンランドとスウェーデンがNATOへ加盟するということはロシアの敵が増えるということだ」フィンランドはロシアと国境が接しているので、敵が増えるという言い方をしています。

また、メドベージェフ前大統領は、「NATOとロシアの陸上の国境線は2倍以上になる。当然この国境は、(防衛体制を)強化しなければならない」今までのNATOとの国境線がフィンランドが加わることで、倍以上が接することになるんだということで強い危機感と警戒感を示しています。「常識的な人は、核武装した船が自分の家から手の届く範囲にあることなど望んでいない」として核の配備もやむを得ない考えを示しています。

もう一つ、日本へのプレッシャーです。

14日、ロシアの国防省は、日本海で最新型の潜水艦2隻がミサイル発射演習を行ったという発表をしました。水中から巡航ミサイルを発射し、海上の標的に命中したとロシア側は発表しています。演習には軍艦15隻以上が参加していて、日本へのけん制が目的とみられます。やはり地図を見ますと、日本とロシアもかなり近い距離感にあるというところは間違いないわけです。

ホランキャスター:
緊張感が、どんどん広がってきているのがちょっと心配ですよね。

牧島博子TBS報道局解説委員:
そうですね、日本にはアメリカ軍の基地がありますし、日本とロシアは北方領土で領土問題を抱えているということを考えると、このような状況になったときに、ロシアにこういう動きをされてしまうのだなっていうことを改めて感じました。

ホランキャスター:
日本海での最新型の潜水艦2隻がミサイル発射演習を行ったという意図につきまして、日本へのけん制というものが、ロシア側の主な目的ということになりますか。

小谷教授:
日本へのけん制の意味はあるとは思いますけれども、最大の意図は、ちょうど日本海にアメリカが空母を入れていますので、その空母に対するけん制という意味合いの方が強いと思います。今、ウクライナでアメリカとロシアが対立していますので、アジアでも緊張を高める、挑発しようということだったのではないかと思います。

井上キャスター:
こういうことは続きますか。

小谷教授:
はい。こういう動きは日本周辺でロシアは続けていくことになると思います。

(15日22:06)

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