私たちの声は届いた〜刑法性犯罪改正法案が成立、そして〜(2017.06.16)

2017年6月16日。明治40年に制定以来、参議院全会一致で、実に110年ぶりの改正となった、刑法性犯罪。昨秋以来9ヶ月間、市民の声を届けるための活動「ビリーブ~わたしは知ってる~キャンペーン」を続けてきた「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」のメンバーが、改正成立を受けて、記者会見を開いた。

メンバーの山本潤は、「大きな成果であり、歴史的瞬間に立ち会えたことを嬉しく、感激している。三年後に見直しの附則が付いたのは、ロビイングの他、活動を後押ししてくれた市民の皆さんの力のおかげで、深く感謝している」と述べた。

中野宏美は、「附則、附帯決議に不足していた論点を入れることが出来、やっと議論の土壌が出来たと思っている。この瞬間にも性暴力に遭っている人はいて、今日の改正を見届けることがないまま死んでいった仲間を忘れずに頑張っていきたい」と述べた。

鎌田華乃子は、「法律が変わるだけでは、性暴力を取り巻くものは変わっていかない。文化を変えていくということに取り組んできた。性行為における同意を得るための教育、同意ワークショップを開催し、制度化を目指している」と述べた。

改正が成立し、大きな進展としてはプロジェクト側が希望してきた、3年後を目処に本則(※1)を見直すことが、附則(※2)に入ったことがある。

※1 法令の本体
※2 本則、つまり法令の本体と同等の効力を持つ

また、附帯決議(政府が法律を執行するにあたっての留意事項、法的効力はないが政治的効果がある)にも様々な要望が取り入れられた。例として

●近年の性犯罪の事案に即した対処をするための法整備
●心理学・精神医学知見等について調査研究を推進
●性犯罪被害者が被害の性質上支援を求めることが困難であるという特性
●被害者と相手方との関係性や被害者の心理を踏まえて適切になされる必要性
●起訴・不起訴等の処分を行うにあたり被害者の心情に配慮する、処分の理由等を丁寧に説明するに努める
●性犯罪被害が潜在化しやすいことを踏まえて性犯罪被害の調査を実施し実態把握に努める
●性犯罪の刑事事件の捜査、公判の過程で被害者のプライバシーその他権利権益に配慮し、偏見に基づく不当な取扱いを受けることがないようにし、二次被害の防止に努め、適切な証拠保全を図る
●性犯罪に関わる刑事事件の捜査および公判の実績や、被害者の再被害のおそれへの配慮も踏まえて検討を行う

今回、改正は成立したものの、市民の側から見た場合に、まだ不足している点は残っている。主な点は次の通り。

●時効(子どもの時に性被害に遭い、成長後、訴えようとしても時効成立で出来ない)
●配偶者の強姦(異性から無理やり性行為を受けた人の1/3は配偶者から)
●13歳以上は暴行脅迫が裁判で証明できなければ強制性交等罪にならない
●「強制性交等罪」は、本当にその名称でよいのか
●「集団強姦罪」が廃止(キャンパスレイプが多発している現状に合っているか)
●地位関係性
●暴行脅迫要件

以上は附則にある3年後を目処に見直しを求めていく。

そして、今回の改正で前進した部分は次の通り。

●被害者の性別規制の撤廃
●監護者性交等罪の新設
●非親告罪化

山本潤によれば、先進的な国では明示的な同意がなければレイプと定義されている国が多く、国際的には性暴力とは以下の定義とされている。

性的欲求だけでなく、加害者が攻撃・支配・優越、男性性の誇示・接触・依存などのさまざまな欲求を、性という手段・行動を通じて、自己中心的に充足させるために被害者を「モノ」として扱うこと。性暴力加害とは、人間である相手の意志や希望を聞かず、性を暴力として使い、性加害をして、被害者を無力化するというのが本質である。意志に反した性行為があるということが、性暴力であり、性犯罪の核にあることだと。そのため、今回の刑法改正で暴行脅迫要件が残っているということはそれだけ旧体制が残り、性暴力への本質の理解が進んでいない証でもある。

今後は、

●暴行脅迫要件が撤廃されること
●意志に反した性行為が性犯罪であると規定

されることが目標ともなる。

刑法改正成立を受けて開かれた記者会見では、改正を喜びつつも、見直しに向けて新たな問題もあることがあぶり出された形となった。

「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」は今回の改正をもっていったん活動を休止し、プロジェクトを構成してきた4団体は今後それぞれのやり方で、世の中へ性犯罪への啓蒙を努めていく。詳細については動画をご覧いただきたい。3年後の附則の見直しの頃には再び結集し、活動を再開し市民の声を伝える活動に努めるとした。

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「刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト」オンライン署名サイト(change.org)
https://www.change.org/p/イヤよイヤよは嫌なんです-性暴力被害者が前向きに生きられる日本に
ビリーブ~わたしは知ってる~キャンペーン https://www.believe-watashi.com/
■参加団体
・明日少女隊 http://ashitashoujo.com/
・NPO法人しあわせなみだ http://shiawasenamida.org/
・性暴力と刑法を考える当事者の会 http://saandcliminallaw15.jimdo.com/
・ちゃぶ台返し女子アクション http://chabujo.com/

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【撮影:佐藤将之】【文:西村晴子】

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