ウクライナ 人道回廊はじまるも ロシア軍再攻撃か

ロシア軍の侵攻が続くウクライナで、市民を避難させるための人道回廊が設置されました。しかし、ウクライナメディアは「人道回廊」に攻撃があり、避難が停止されたと伝えています。

■「戦いに勝つまでキエフにとどまる」

キエフの地下シェルターに響く幼い少女の歌声に避難してきた人は聞き入ります。

ごうごうと燃えあがる炎。キエフの西にある石油貯蔵施設です。ウクライナ非常事態庁はロシア軍の空爆によるものだとしています。

ウクライナ第2の都市ハリコフでは爆撃がエスカレートしています。住宅地を襲った砲撃。5階建ての住宅は壁全体を失いました。あたりには真っ黒に焼け焦げた車もあります。瓦礫と化した我が家を目の当たりした住民は・・・

住民:
「私は元軍人ですが涙が出てきます。きのう妻は砲弾で負傷しました」

病院には負傷した民間人が次々と運ばれています。けがをした人は廊下にも・・・

医師:
「歩けない患者はここに残るしかない、残念ながら」

ゼレンスキー大統領は7日、自撮りした映像を投稿しました。

ウクライナ ゼレンスキー大統領:
「月曜日の夜です。“月曜日は大変だ”と言われますが、戦争中のいまは毎日が月曜日です」

また「戦いに勝つまでキエフにとどまる」と訴えました。

■「これはウクライナ人の虐殺です」

暗闇の中、上空に向かって飛び交う無数の砲弾。ウクライナ海軍が公開した映像です。場所は南部のオデッサ。映像ではロシア軍を「撃退した」としています。その南部ではウクライナ軍がロシア軍から空港を奪還したという発表もありました。

ミコライウ州知事:
「空港を取り戻した。飛行機はまだ飛ばないが空港は私たちのものだ」

空港の建物の屋上と見られる映像ではウクライナ軍が標的を狙っています。その一方空港がある同じ町では、アパートがロシア軍の攻撃を受け甚大な被害を受けていました。

撮影者:
「全壊している。ガスの臭いがひどいからマッチは絶対につけないでくれ」

頭から血を流す女性。体が小刻みに震えています。

避難する住民のそばにロケット弾が撃ち込まれたキエフ近郊のイルピン。破壊された橋のたもとに多くの住民が集まっていました。橋はロシア軍の南下を防ぐため、ウクライナ軍が自ら破壊しました。杖をついた高齢の女性や小さな子どもまで、板を渡しただけの不安定な足場の上を、足元を濡らしながら渡って避難します。

「イルピンでは家や住民が攻撃され女性と13歳の子どもが死にました。これはウクライナ人の虐殺です」

向かった先はキエフです。ロシア軍が迫るキエフに避難せざるを得ないのです。

戦火の中ウクライナ国民の命をどう守るのかが、いま大きく問われています。

■ウクライナ外務省 “人道回廊でもロシア軍の砲撃があり停戦が破られた”

7日に行われた3回目の停戦交渉。市民を避難させるための「人道回廊」について話し合われました。

ロシア代表団 メジンスキー大統領補佐官:
「今日、私たちは人道回廊の問題について長い間話していました。8日から機能することを期待しています」

ウクライナ代表団 ポドリャク大統領府長官顧問:
「人道回廊のルートについてわずかに前進があった。これでロシアによる攻撃を受けている国民を支援できるようになる」

人道回廊をめぐってはこれまでの停戦交渉でも話し合われてきましたが、実現にいたっていませんでした。その理由は・・・

ウクライナ副首相(Facebook):
「我々の国民をロシアに行かせようとしている。不条理でばかげているので受け入れられない」

これまでにロシア側が提案してきた避難ルートの大半がロシアとその同盟国であるベラルーシへ向かうルートだったのです。いわば敵対する国にウクライナ国民を避難させるという提案だったのです。さらにこんな事態も・・・

ウクライナ ゼレンスキー大統領:
「ロシアは食料や薬を運ぶための人道回廊に地雷を埋めた」

英・BBCも“赤十字国際委員会 事務局長が『人道回廊に地雷が埋められていた』との証言”を伝えています。

そして3回目の停戦交渉を経て実際に避難が始まったのが・・・
 
ウクライナ副首相:
「スミの人道回廊が本日開通します。赤十字国際委員会への書簡でロシア国防相によって正式に承認されました」

ウクライナ側は北東部のスミから中部のポルタバに向かう国内ルートに限り、避難が始まったと発表しました。ウクライナ外務省は留学生を含む民間人が避難する様子を公開しました。しかしウクライナメディアは、スミでロシア軍の銃撃があり「人道回廊」での避難が停止されたと伝えています。さらに、ウクライナ外務省は、南部マリウポリからザポロジエへの「人道回廊」でもロシア軍の砲撃があり、停戦が破られたと非難しています。

キエフの現地メディアで記者をしている寺島朝海さん。いまはポーランド国境近くのリビウに避難しています。

ウクライナ在住記者 寺島朝海さん:
「教会のステンドグラス、銅像を白い布でカバーしているのを見た。これからどうなるのか分からないからリビウでも用意はしています」

寺島さんは人道回廊の重要性をこう話します。

ウクライナ在住記者 寺島朝海さん:
「この数日内で人道回廊を設置できないと何千人もの方が亡くなってしまう。マリウポリでは(空爆から)7日目です。水もでない。電気もつかない」

■「放射能が出てくるという危険性は十分ある」

ロシア軍の侵攻で標的となっているのが核施設です。6日に攻撃を受けたハリコフにある核関連施設「物理技術研究所」。2019年までウクライナ大使を務めた角茂樹さんは2度訪れていますが、この施設は日本と深い関わりがあると言います。

元駐ウクライナ大使 角茂樹氏:
「確かに原子力の研究をしているからプルトニウムがあるのは事実。日本はセキュリティシステム、具体的には物理研究所の周りに高い塀を作って監視カメラを全部つける、その設備を作った」

“チェルノブイリ”と“福島”で互いに原発事故を経験した両国。日本は1億7000万円あまりを提供し、核の安全を守るための防護システムなどを設置しました。しかし・・・

元駐ウクライナ大使 角茂樹氏:
「核セキュリティもまさか戦争にさらされた状況までは想定していない。仮にミサイルで攻撃される、それを阻止するだけの頑丈なものは世界どこを探してもないと思います」

--(核燃料の)貯蔵庫に直撃したら?

元駐ウクライナ大使 角茂樹氏:
「放射能が出てくるという危険性は十分あると思います」

(08日23:40)

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