【解説】プーチン大統領の誤算  ウクライナを過小評価?

■2回目“停戦協議”「非常に悲観的にならざるを得ない」

有働由美子キャスター
「プーチン大統領は3日、ウクライナへの侵攻を終わらせる条件について、『改めてウクライナの非武装化・中立化などが必要だと主張した』ということです。こうした中、予定されている2回目の協議というのは、どういう展開になりそうで、どういう意味を持ってくるのでしょうか」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「ロシアの要求がやはり全く何も変わっていないということが、明らかになったということだと思います。そうである以上は、ウクライナ側も受け入れることはできませんので、今回のこの交渉で何が進むかということに関しては、非常に悲観的にならざるを得ない状況かと思います」

有働
「では、協議を続ける意味は?」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「協議自体は、ウクライナ側が協議の席を立って、椅子を蹴って、協議を終わらせたという批判を受けたくない事情があります。というのも、もし、ウクライナ側が席を立ったということになりますと、ロシアにさらなる攻撃をする口実を与えてしまうということです。『ロシアは交渉の用意があるのに、ウクライナが交渉を拒否した』ということになりますと、さらなる攻撃が…ということです」

「ただ、交渉に向けて、おそらく今回ロシアは、相当、軍事的な圧力を強めてきたと。だからこそ、さまざまな所で無差別攻撃のようなものが増えてきているということだと思います」

■ロシア国営メディア“勝利宣言”侵攻2日後に誤配信?

有働
「こうした中、ロシアの国営メディアが誤って配信して、すぐ削除した記事が今注目されています」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「英BBCによると、『ロシアと新たな世界の到来』というタイトルの記事です。『ウクライナはロシアに戻った』『欧米の世界支配が完全かつ最終的に終わったことを示した』と“勝利”を祝う内容が書かれていたということです」

「注目は、誤配信されたタイミングです。侵攻開始2日後の先月26日、つまり、始まってすぐに“勝利宣言”ともとれる内容だったということです」

■プーチン大統領、ウクライナ側を“過小評価”?

有働
「鶴岡先生、プーチン大統領は『短期決戦をもくろんでいた。すぐ終わると思っていた』ということでしょうか?」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「その通りだと思います。実際の所はわかりませんけれども、今までいろいろ報じられている所を合わせて考えますと、本格的な軍事侵攻は、予定はされていましたけど、最初に空挺部隊という飛行機からパラシュートで降りる精鋭部隊を少人数派遣して、彼らがキエフの政府庁舎を占拠すると。そうすると、そのままゼレンスキー政権が崩壊すると。そういうのがロシアにとって一番狙ったシナリオだったと思います」

「そこでは、ウクライナ軍が組織的に抵抗するとかは、実はあまり考えられていなくて、おそらく最初にウクライナ側が態勢を整う前に一気にやってしまうというイメージだったと思います。ですから、ウクライナ側を相当“過小評価”していたということのようです」

有働
「なぜ、過小評価していたのでしょうか?」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「ここが非常に問題ですけど、1つありますのは、やはり2014年のクリミア併合の時、ほとんど抵抗がなかったことです。ウクライナ軍もいましたが、すぐに投降してしまったり、寝返ったりという感じでした。しかも、プーチン大統領がずっと言ってきているのは、『ウクライナというのは国ですらない。国民としてのアイデンティティーもなければ、愛国心もない』ということをずっと言い続けてきました」

「2014年の時には、確かにウクライナ軍はなかなか戦えなかったわけですけど、クリミアが併合されて、ドンバスの一部がロシアの武装勢力に取られたというような中で、非常にウクライナという国家アイデンティティーも、皮肉なことですけど、プーチンの行動の結果として、アイデンティティーも愛国心も高まった。結局それが今回、このように『国土をしっかり守るんだ』という国民の意識にもつながっていると思います」

■「国連では反ロシアの機運が高まっている」外務省幹部

有働
「そして、もう一つ、ロシアにとって誤算があったんですよね」

小栗
「そうなんです。国連総会で採択されたロシアへの非難決議の結果は、賛成したのは141カ国でした。2014年のクリミア併合時に『無効』だとする決議に賛成したのは100カ国でしたので、だいぶ増えました」

「ある日本の外務省幹部は、『国連では反ロシアの機運が高まっている』と分析しています。UAE(=アラブ首長国連邦)はこの前段階の先月25日、安保理での非難決議では棄権でしたが、今回は賛成しました」

「キューバとニカラグアは8年前の2014年、クリミア併合時の決議では反対しました。先月、プーチン露大統領が『ドネツク』『ルガンスク』の親ロシア派地域の独立を承認した時には、『支持する』と表明していました。しかし、今回の国連総会では棄権、つまり“ロシア寄り”の姿勢を弱めたわけです」

■非難決議「賛成」増加 プーチン大統領に対して効果は?

廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「非難決議に賛成が多くなったことで、プーチンに対して、どれだけの効果があるのかが気になっているのですけど、鶴岡先生はその辺りどうお考えでしょうか?」

慶応義塾大学 鶴岡路人准教授
「これは総会の決議ですので、残念ながら法的拘束力はないわけです。ですから、ロシアの軍事作戦に直接の影響を及ぼすというのは難しいと思います。ただ、非常に重要なのは、今回141か国もの国が賛成をしたということです。今回、この対立は、今まではどうしてもロシア側が求めていたのが、『北大西洋条約機構(NATO)を拡大しない』ということでした。『ロシア対NATO』『ロシア対アメリカ』『ロシア対ヨーロッパ』という図式の対立で捉えられがちだったと思います」

「ただ、今回、総会の決議を見ますと、141か国が(ロシアの行動に)反対している。やはり、単に西側、米欧が反対しているのではなくて、国際社会が一致してロシアの行動に反対している。この構図が新しく明らかになった。これをもう一歩進んで考えますと、対露制裁に関しても、G7だけではなく、それ以外の国にも制裁が広がっていくかもしれない。少なくともこの問題に対する意識というのが、今回、総会で議論を続けたことによって、高まっていく効果もあるかもしれない」
(2022年3月3日放送「news zero」より)

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