仏独中が首脳会談 習主席がロシアへの制裁を非難・・・真意は?専門家解説(2022年3月8日)

ウクライナの情勢をめぐり、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、中国の習近平主席による首脳会談が日本時間8日午後6時からオンライン形式で行われました。

中国政府の発表によりますと、マクロン大統領とショルツ首相が「第二次世界大戦後、最も深刻」として、中国とも意思疎通をしつつ、問題解決を図る考えを示しました。

一方、習主席は、「各国の安全保障上の合理的な懸念は重視されるべきだ」とロシアへの理解を示しつつも、双方の話し合いによる解決を訴えました。また、西側諸国による経済制裁については「世界経済にマイナスの影響を与える」として、否定的な考えを示したということです。

◆千々岩森生中国総局長に聞きます。

(Q.習近平国家主席が欧米諸国の制裁に反対したということですが、ロシア寄りの姿勢を明確にしたということでしょうか)
千々岩森生中国総局長:「今回の会談のポイントは2つあります。一つは、きのう王毅外相の会見であった「仲介する」という言葉がなくなったこと。そして、ロシアへの制裁に反対と明言したというところです。習主席は「仲介する」の代わりに「前向きな役割を果たす」と述べました。この「前向きな役割を果たす」という前に「国際社会とともに」「当事国の必要に応じて」と述べ、一歩、引いたような言い方をしました。そして、アメリカやヨーロッパ、NATO(北大西洋条約機構)、そして、ロシアが平等に話し合うことを望むとしました。中国がリーダーシップをもって乗り込んでいくというのは、会談から感じませんでした」

(Q.習主席が出てきたことで期待したいですが、それはどうでしょうか)
千々岩森生中国総局長:「習近平政権にとって今年、何が何でも大事なのは、秋の共産党大会で自らが3期目に入ることで、これがスムーズに安定的に行われることが大事です。そういうところからすると、遠いウクライナの情勢にリスクを伴いながら突っ込んでいくというリスクは取りたくない。ただ、今、何もしないこともリスクになってきました。中国は、国際社会の様子を見ながら、半歩くらい引きながら、ウクライナ情勢に絡んでいく。そして、上手く仲介できた時には、国内的にアピールしたいというのが、中国の本心だと思います」

◆金指光宏パリ支局長に聞きます。

(Q.中国を会談に引き込んだ当事者のフランスは、今回の結果をどう受け止めているのでしょうか)
金指光宏パリ支局長:「これまでのところフランス大統領府からの公式な発表はなく、内容は明らかにされていません。フランスメディアは、中国の発表のもとに、中国が最大限の抑制を求めたことや、ロシアとの関係上、踏み込んだ発言をしなかった中国が協議の場に出てきたなど、淡々と伝えています」

(Q.なぜ、このタイミングで中国との会談を行ったのでしょうか)
金指光宏パリ支局長:「マクロン大統領は、ロシアによる侵攻が始まる前も、始まった後もプーチン大統領と協議を重ねてきました。しかし、結果的に侵攻は防げず、現在も解決に至っていません。西側諸国対ロシアという構造に限界を感じていたのも事実です。そのなかで、ロシアと関係の深い中国に、仲介役、主体的な役割を担ってもらうことを期待していました。しかし、中国が制裁に反対ということで、一線を引いてしまったことで、今後、フランス、ドイツがどういう対応をしていくのか注目されます」

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.中国が主体的に仲介の役割を果たすようには見えませんが、どう分析しますか)

兵頭慎治さん:「習主席は『各国の主権と領土は尊重され、国連憲章の主旨と原則は共に守られる』とも発言しています。これは『今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻に、中国は賛同できない』とも言っている訳です。中国が仲介役になった場合、中国とロシアは非常に良好な関係にあるので、国際社会からロシア側に立っていると見られ、中国側も非難される可能性もあります。中国単独で直接関わることを避けているのではないかと思います。

フランスやドイツからすると、プーチン大統領との交渉がうまくいかないなか、中国を引きずり出して事態を打開したい狙いはあると思いますが、中国自身は火中の栗を自ら拾いたくないという思いがあると思います」

10日にはトルコ・ロシア・ウクライナの外相会談が予定されています。トルコはNATO加盟国で、ロシアとウクライナ両国と、経済や軍事面でのつながりが強くあります。ウクライナからの要請を受け、トルコは地中海から黒海につながる2つの海峡で艦艇通過を制限する措置を表明するなど、地理的にも重要な国です。

(Q.3カ国の外相会談で、何らかの進展は期待できますか)

兵頭慎治さん:「ウクライナへの軍事侵攻について、第3国が仲介する形で初めて、3カ国の会談が実現します。これはトルコだから実現している側面があります。トルコはNATO加盟国で、軍事用ドローンを供与する形で、ウクライナに軍事支援をしています。他方で、ロシアはロシア製の地対空ミサイルをトルコに売却しています。トルコの立ち位置はロシアとウクライナの間で等距離なところがあるので、ロシアにとってもウクライナにとっても、仲介役としてトルコは受け入れやすかった。そこが、今回の会談の実現の理由だと思います。

ただ、プーチン大統領は『いかなる場合でも軍事作戦を完遂する』と繰り返しているので、ロシアの軍事行動を断念させるに至るかは楽観できないと思います。ウクライナとロシアの協議が難航するなか、3カ国の外相会談で、人道回廊を含めた住民の避難について進展するかが焦点になると思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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