ロシアとウクライナの停戦をめぐる2回目の交渉が3日行われ、双方の代表団は、戦闘地域の住民のための避難ルートを設置する方針で合意したと明らかにしました。ただ、ロシア軍はウクライナ各地で攻勢を強めていて、市民の犠牲が増え続ける中、今後の交渉で停戦につながるかは、予断を許さない情勢です。
ロシアがウクライナに軍事侵攻して、1週間となった3日、ロシアとウクライナの停戦をめぐる2回目の交渉がベラルーシ西部のポーランドとの国境付近で行われました。
協議のあと、双方の代表団は、戦闘地域の住民のための避難ルートを設置する方針で合意したと明らかにしました。
またウクライナ側の代表団は「住民が避難する地域では一時的に停戦する可能性がある」としていますが、「期待した結果は得られなかった」とも述べていて、近く3回目の協議を近く行うということです。
一方、フランスのマクロン大統領と3日、電話で会談したロシアのプーチン大統領は、ウクライナの「非軍事化」と「中立化」の要求は妥協しないとの姿勢を強調したうえで「特別な軍事作戦の目的は、いかなる場合でも完遂される」と述べて、ゼレンスキー政権への軍事的な圧力を維持していく方針を示しました。
ロシア軍は、交渉が行われた3日もウクライナ各地で激しい攻撃を続けました。
ウクライナの非常事態庁は、北部の都市チェルニヒウで集合住宅とみられる建物などが空爆を受けて、少なくとも33人が死亡したと発表し、市民の犠牲が増え続けています。
ロシアがウクライナとの協議を継続する姿勢を示しながらも、各地で攻勢を強めるなか、今後の双方の交渉で停戦につながるかは、依然、予断を許さない情勢です。
プーチン大統領「作戦は計画通り すべての任務が成功裏に完了」
プーチン大統領は、3日行われた安全保障会議でウクライナへの軍事侵攻について「われわれの兵士がウクライナで戦うのは、この国を非軍事化させ、国境付近で核兵器なども含めてわれわれを脅かすことがないようにするためだ」と述べ、今回の侵攻を改めて正当化しました。
そのうえで、プーチン大統領は「特別な軍事作戦は予定通り、計画通りに進んでいる。すべての任務が成功裏に完了している」と述べ、軍事作戦は順調に進んでいると強調しました。
一方、今回の軍事侵攻でロシア軍の兵士の死者が2日までに498人に上っていることに関連して、プーチン大統領は「われわれは軍に誇りを持ち、戦死した戦友を常に覚えている。彼らの家族たちを支援するためできる限りのことをするつもりだ」と述べ、死亡した兵士の遺族に一時金を支払うなどの補償措置を行うと明らかにしました。
プーチン大統領としては、死者が増えることでロシア国内で軍事侵攻に反対する声の高まりを押さえ込みたいねらいもあるとみられます。
ゼレンスキー大統領 プーチン大統領に直接会談を呼びかけ
ウクライナのゼレンスキー大統領は3日の会見でロシアのプーチン大統領に向けて「私との交渉の席につきなさい。何を怖がっているんだ」と直接会談を呼びかけたうえで、「この戦争を止める唯一の方法だ」と述べました。
また「もしウクライナという国がなくなれば、次に狙われるのは、ラトビア、リトアニア、エストニア、そしてモルドバ、ジョージア、ポーランドだ。ロシアは、ベルリンの壁にたどりつくまで勢力を拡大し続ける」と述べ、ウクライナの危機はヨーロッパ全体の危機だと訴え、軍事的な支援を強化するよう国際社会に求めました。
米国防総省高官 キエフなどで激しい爆撃
アメリカ国防総省の高官は3日、ロシア軍の激しい爆撃を受けているウクライナの都市として、首都キエフと第2の都市ハリコフ、それに北部のチェルニヒウを挙げました。
この高官は、ロシア軍はこれまでに480発以上のミサイルを発射し、このうち、半分近い230発以上がウクライナの領土内に展開させた移動式の発射システムから発射されたと分析しています。
またロシアの領土から160発以上、ベラルーシからは70発以上、黒海からも数発のミサイルが発射されたとしています。
さらに、ロシア軍は国境周辺に展開していた戦闘部隊のうちこれまでに90%の戦力をウクライナ国内に投入し、各地で激しい戦闘が続いているとの認識を示しました。
ロシア軍に掌握されたと一部で伝えられる南部の都市ヘルソンについては「現地では戦闘が続いており、陥落したと言うのはまだ早い」と述べました。
東部ドネツク州の要衝、マリウポリについては、ウクライナ側が引き続き支配権を握っているとする一方、ロシア軍は、都市を孤立させるため攻勢を強めていると指摘しました。
そして、首都キエフに向けて南下しているロシア軍の部隊については「動きが停滞している」と指摘し、キエフから北におよそ25キロ離れた場所に引き続きとどまっているとの認識を示しました。
交渉が行われた場所は
ロシアとウクライナの停戦をめぐる2回目の交渉が行われたのは、ベラルーシの首都ミンスクから西におよそ300キロ、ポーランドとの国境地帯にある「ベロベーシの森」です。
ベロベーシの森は、31年前の12月、ソビエト崩壊を決定づける合意がなされた歴史的な場所です。
当時、ソビエト連邦を構成していたロシアとウクライナ、ベラルーシの各共和国の代表が協議の末、ソビエト連邦の消滅とともにCIS=独立国家共同体の創設を宣言した合意文書に調印しました。
その後、この年の12月25日にソビエト連邦は69年の歴史に幕を閉じ、ロシアとウクライナは独立した道を歩むことになりました。
避難してきた人は
ウクライナから国外に逃れた人は100万人を超え、その半数にあたる50万人以上が避難している隣国のポーランドでは、連日、国境を越えて人々が押し寄せています。
南東部にある国境の町、メディカでは3日も、徒歩や車、または列車を乗り継いでポーランド側に渡ってきた大勢のウクライナ人の姿が見られました。
このうち首都キエフから避難してきた高齢の夫婦は、ポーランドに住む息子との再会を喜んでいました。
夫婦は1日に自宅を出て列車でポーランドを目指しましたが、人であふれて乗ることが出来ず、翌日、再び駅に戻ると、運良く乗車できたということです。
車内では多くの人が立ったままで、互いに席を譲り合って長時間の移動を耐え、途中、ボランティアの人たちから食料を受け取ることができたということです。
夫のバシル・シムコさん(71)は「私たちを兄弟と呼んでいた国に裏切られたようなものです。もう兄弟でもなければ、兄弟になることもない」と話していました。
また、妻のオルハさんは「ミサイルが自宅のすぐ近くを直撃したこともあり、2日前には8回も空襲警報が鳴りました。自宅から逃げるなど思いもよらず、とても悲しいです」と話していました。
また、ウクライナ西部から赤ちゃんを連れて避難してきた30歳の女性は、「国を離れるという現実に直面し、将来がどうなるのか、いつ帰れるかもわかりません」と不安そうに話していました。
引用:NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220304/k10013513071000.html
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