“誤支給の約5億円”保育園に全額返還請求へ 東京・葛飾区長が謝罪

 東京・葛飾区が保育園への補助金を誤って5億円以上多く支給していた問題で、区が保育園側に全額の返還を求める方針を区議会に報告しました。方針転換して“全額返還を求める”ことになった点について、区長は「今回の保育園の運営費助成の算定相違について、多くの区民、保育園、関係者に大変迷惑と心配をかけた。申し訳ありませんでした」と謝罪しました。

 この問題は、葛飾区が区内72の私立認可保育園に対し、パート保育士の雇用を補助するための補助金を誤って2018年度からの4年間にわたって合わせておよそ5億1000万円多く支給していたものです。

 問題が発覚した6月、葛飾区の青木克徳区長は「人件費として使った補助金については返還を求めない」という判断を表明していました。しかし調査の結果、保育園が受け取っていた補助金は民法上の「不当利得」となることが分かり、区への返還を求めざるを得ないとして、区側は8月31日、「全額返還を求める方針に転換する」と区議会に報告しました。青木区長は「人件費として使ってしまったのに返還を求めざるを得ないことについては、私自身は心苦しく思っている。ただ、法的な見解ということで弁護士などと確認をした結果、返還請求権があり、返還を求めざるを得ない。きちんと説明しながら、理解を100%得られるとは考えていないが、法的な見解ということで理解をいただくようにしたい」と述べました。

 葛飾区は補助金の返還について、保育園の経営に影響が出ないよう返済方法を園側と柔軟に協議していく方針で、9月1日に保育園に対しての説明会を開きます。

<「全面的に区側に責任ある」 一度は“返還求めない”方針示したものの…>

 保育園側に全額返還を求めることに方針が転換されたわけですが、その理由をまとめました。

 返還を求めることになったのは、民法第703条の「不当利得」に当たると判断されたためです。条文には「法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、これを返還する義務を負う」と書いてあります。今回の件でいえば「他人」が葛飾区に当たり「損失を及ぼした者」が保育園ということになります。

 葛飾区は問題発覚当初の6月の時点では全額返還を求めていましたが、青木区長は「全面的に区側に責任があり、保育園側は補助金の使途通りに使っていた」ため、「人件費に使用していた場合は返還を求めない」という方針を示していました。しかしその後、弁護士などとの協議や調査をした結果、民法のルールに従わざるを得ないことが分かったとして、方針を転換することを発表しました。

 法律上は仕方ないとはいえ、保育園側としては納得がいかない部分も出てきそうです。また何よりも、補助金の返還によって子どもたちが通う保育園の運営に影響が出ないよう、葛飾区には対応が求められます。今回の事案について、その背景や行政の対応について、共同通信編集委員の太田昌克さんに話を聞きました。動画でご覧ください。

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