「沖から来ると思ったら」不気味な静けさから2分後 思わぬ方向から突如襲った 津波 映像を独自検証 東日本大震災

※動画には東日本大震災の津波の映像が含まれます。    

 2011年の東日本大震災で、岩手県宮古市を取材したメ~テレが入手した映像には、小さな港町に突如高い津波が襲う様子が生々しく映されていました。津波はどのようにして到達したのか…。11年が経過した現地取材を踏まえ独自に検証しました。

「沖から白波を立てて来る」と思い込んだ住民たち 突如襲ってきたのは…

 映像が撮影されたのは、本州最東端の半島に位置する岩手県宮古市千鶏(ちけい)地区。映像の前半には、防波堤の内側で波が渦巻く光景と、その様子を海岸近くで眺める人たちが映っていました。

「上で見ていたが、ああ大丈夫だなと思った」(地区の住民)
「大きな津波でなく、渦巻いて少し波がしけたり、港の中が満杯になったり。沖の方から波が来るなら分かるが…」(地区の住民)  

 住民の多くが考えたのは、海の向こうから白波を立てながらやってくる津波でした。しかし、白波は一向に見えず。動画の撮影者も、海の様子が変わらないため、録画をいったん止めます。しかし、その2分後のことでした。  

 巨大な津波が、港町の海岸横から突如襲ってきたのです。映像には、町が一瞬にして津波に飲まれる様子が克明に映し出されていました。溯上高は、34.2mにまで達し、32人が津波に飲まれ亡くなりました。

「津波は沖からではなく、回ってきたような気がする。いきなりドーンと来て、この辺はみんな海になった」(千鶏地区 下村勝弘さん)
「海を見ている人や近くにいた人たちは流された。まさかこうなるとは思わなかった。誰もがそう思ったのでは」(千鶏地区 千村あさ子さん)

思わぬ方向から襲ってきた津波 キーワードは「反射波」

 東海地方でも起こりうる場所が  映像で捉えられた津波について、専門家は波が持つ“ある現象”の存在を指摘しました。

「『反射波』の影響で高い津波になり、町に襲ってきたとみている。津波は東からやってきて、岬上を回り込む形で入ってきた。壁に当たった津波が反射して千鶏地区に流れ込んできた。沖合から津波が直接やってくるのではなく、横からやってきたように見えた。反射してくる波はどこから来るか分からない」(名古屋大学 減災連携研究センター 富田孝史教授)  

 反射波の影響で、思わぬ方向から到達してきた津波。富田教授は、東海地方の沿岸部でも、同じような津波が来る可能性があると指摘します。

「三重県のリアス式海岸はリスクとしてある。リアス式海岸のような複雑な地形だと、いろんな所で反射して、それが重なりあってしまう現象が起き、局所的、ローカルに高い波になる場所もありうる」(富田孝史教授)

迫る南海トラフ巨大地震 被災地から東海地方へのメッセージ

 11年前、消防団の分団長として津波からの避難を呼びかけ続けた、中村卓郎さん。

「東海地方も地震が起きれば津波が起きるというけど、自分の命は自分で守ると1人1人が頭に入れておかなきゃ。必ずこんな大きな津波は来るから」(千鶏地区 中村卓郎さん)  

最大死者数が23万人と想定される「南海トラフ巨大地震」は、今年に入り発生確率が「今後40年間に90%程度」に高まりました。想定外の津波を経験したからこそ中村さんが東海地方に伝えたいのは、3つの教訓です。
1:「高台への逃げ道を確認しておく」

「行政などを頼らないで自分たちで逃げるルートを決めた方がいい。逃げる時に川のそばや谷になっている所は避けないとだめ。家族で亡くなっている人もいつも歩いている道路を逃げたから津波に飲まれた。最短ルートで家の裏を上がれば助かったかもしれない」(中村卓郎さん)

2:「地震が来たらまず避難」

「津波が来てから逃げるのではなく、地震が来たら避難する。そうしないと間に合わない。名古屋も平地が多いから、とにかく高いところ逃げる」(中村卓郎さん)

3:「一度避難したら戻らない」

「この津波の時に亡くなった多くの人が、家にものを忘れて帰って亡くなった。財産は生きていればまだやり直しできるが、命は1回で終わり。命を大切にしないと。津波は怖いものだということを頭に入れておく」(中村卓郎さん)

(9月7日 18:45~放送 メ~テレ「池上彰と考える!巨大自然災害から命を守れ」より)

#池上彰  #津波  #東日本大震災 #反射波 #宮古市

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