【北朝鮮】中国国境で撮影!”素”の女性兵士&居眠りする姿も… 覗き見える国内情勢は 『“新常態”中国』#28

北朝鮮は7月末、軍事パレードを行った。その際、国営メディアでは中国から来賓を招き両国が絆を深める様子や、一糸乱れぬ行進で兵士たちの士気の高さがさかんに宣伝された。
しかし6月、私たちが中朝国境の中国側からカメラで覗いてみると、全く別の顔が見えた。
私たちが撮影したのは6月初め、中国・遼寧省の丹東から北朝鮮・新義州の様子を一望できる場所からだった。
まず目に付いたのは、中国との国境に設けられた柵にそって監視にあたるたくさんの兵士の姿だった。長時間の監視のため、見張り番の兵士はローテーション制を組んでいるのか、兵士同士が見張り番交替のため点呼を交わす様子も見ることができた。
さらに見えた範囲では兵士たちは全員マスク姿、この時点ではまだ中国からのコロナ流入を警戒する態勢は維持しているように見えた。
一方で、士気の低下が見えた場面もあった。国境の監視を担当しているとみられる兵士の一人が建物の影で銃を担いだまま居眠りをしていた。専門家によると現場の兵士たちの給料は低く、食べていくためには副業をせざるを得ない、このため下級兵士の多くは昼も夜も働き通しで疲弊しているのだともいう。
また、これまでの国境取材ではあまり目にすることがなかった女性兵士が建物の入り口を警備している様子も見えた。女性兵士は同僚女性とおどけた様な仕草で会話を楽しんだり、上司からの指示を受けながら髪を整える仕草をしたり、軍事パレードで勇ましく行進していた北朝鮮の女性兵士のイメージとは打って変わって、普通の若者らしい様子が見えた。他にもちりとりやトングのようなものを持って清掃作業に向かうらしき女性兵士の一群もみられた。
また、随所で女性が管理者として男性の労働者たちの指導にあたっている様子もみられた。ガスボンベのガスを移すような作業をしている現場では、胸に赤いバッジをつけた若い女性が年配労働者の作業をじっと見守っていた。
専門家によると北朝鮮は社会の上層部は男性中心、年功序列がはっきりしているものの、社会主義国家の特徴として中流以下では女性の職場進出がある程度進んでいるともみられる。この他にやはり若い女性が双眼鏡を手に男性軍人3人を連れて国境視察をしているような様子もみられた。
また、国境沿いで目立ったのは新しいビルを次々と建てている建設現場。少なくとも3棟のビルに大勢の作業員が群がるようにして建設を進めていた。北朝鮮では金正恩総書記が人民のために、として大量のマンションを建設するよう大号令、平壌などで高層マンションの建設も伝えられている。中朝国境の中国側の駅には、北朝鮮への貨物を積み込む場所があるが、私たちが訪れた際に積み込みが準備されていたのは中国製の建築資材だった。中国から大量の建築資材を買い付け、金総書記肝いりのマンション増産を推し進めている可能性もある。
一方で、周囲には空き家になっている建物も多く見られどこまで本来の需要があるのかはわからない。国境沿いで建設ラッシュを見せるのは外に向けて経済好調をアピールする狙いがあるのかもしれない。空き家になっていた建物の壁には、外国に頼らず自力で発展するという「自力更生」のスローガン。コロナ対策による国境封鎖は鎖国状態中で、体制の安泰をはかるために一番適した状態なのだとの見方もある。
3年半の封鎖を経て、まもなく国際大会に出場するため北朝鮮のスポーツ選手も海外遠征を始めるとの観測や、国境の全面開放が始まるとの見方もある。長期にわたる封鎖が北朝鮮社会に何をもたらしているのか、徐々に明らかになる日が近づいているかもしれない。

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