『もしトラ』どころか『すでトラ』?ウクライナ支援に“トランプ氏の影”NATO首脳会議【報道ステーション】(2024年7月10日)

NATO首脳会議が9日に開幕し、各国首脳が集まっています。ウクライナ支援の大幅な強化で合意するとみられますが、脳裏に浮かんでいるのは、大統領返り咲きを目指すトランプ氏の存在です。

■NATO 対ロシアで結束できるか

各国首脳に先んじて会場入りした、ストルテンベルグ事務総長。

NATO ストルテンベルグ事務総長
「(Q.アメリカ大統領選の結果はNATOの脅威となり得るか)大統領選の結果に関係なく、アメリカは積極的に支援し、強力なNATO同盟国であり続けます。強いNATOは、アメリカの安全保障上の利益にもかなっています。このサミットをただの“お祝い”ではなく、『今後の抑止と防衛』『ウクライナ』について重要な決断を下します」

今年はNATO設立から75周年という節目の年。本来ならもっと祝賀ムードにあふれていてもいいはずなのですが、この情勢ではそうもいきません。

アメリカ バイデン大統領
「テロ集団が邪悪な陰謀で騒乱・混乱・苦しみをもたらしています。欧州ではプーチンがウクライナへの侵略戦争を続け、完全に支配下に入れてウクライナの民主主義を終わらせる気だ。プーチンの目的はウクライナで終わらない」

バイデン大統領はこの場で、ストルテンベルグ事務総長に、文民として最高の栄誉である、大統領自由勲章を授与しました。クリミア侵攻以来ずっと、ロシアの脅威と向き合ってきた人物です。

NATO ストルテンベルグ事務総長
「ロシアという好戦的な隣国に対し“負担なき選択肢”はありません。最大の負担とリスクが伴う選択は、ロシアに勝利を許すことです」

■前大統領「NATO離脱」発言も

「ウクライナへの支援を止めてはいけない」この言葉は、NATOが“内側に抱える懸念”を表しているのかもしれません。彼らは来年、トランプ氏と向き合う可能性があるからです。

アメリカ トランプ前大統領
「バイデンはNATOの連中と会談中だが、相手は絶好調の切れ者ぞろいだから『バイデン氏は大丈夫か』と心配されているだろう」

NATOが警戒していることの1つは、ウクライナ支援に批判的なこと。事実、大統領だった5年前、クリミア侵攻を機に行われていたウクライナへの軍事支援を一時停止させたことがあります。

それだけではなく、トランプ氏はNATOそのものにも批判的です。6年前、首脳会議の面々の前で、「アメリカの金銭的負担が大きすぎる。他の国がもっと払わないなら、NATOを離脱する」と言い放ったといいます。

アメリカ トランプ前大統領
「私が首脳会議で『もっと払うべきだ』と言うと、ある大国の大統領はこう質問してきた。“未払いでもロシアに攻撃されたらアメリカは守ってくれますか?”と。私は『ならばノーだ。それどころか、ロシアに好きにするように促す。だから払え』と言ったんだ」

“もしトラ”に備えるNATO

トランプ氏が大統領に返り咲けば、対ロシアの足並みの乱れは必至。それを見据えた措置が、今回のサミットで決まろうとしています。

NATO ストルテンベルグ事務総長
「ドイツに司令部を置き、700人を配置し、同盟東部の支援拠点も配置する」

ドイツに新たに作られるNATO司令部。ウクライナへの兵器の供与などを調整する機能を持つことになります。これまで、こうした調整はアメリカ軍が主導してきましたが、これを“NATO主導”に変更し、調整業務を新司令部が行うことになります。つまり、戻ってきたトランプ氏に主導権を握らせないための措置です。

キーウにNATOの上級代表を常駐させることも決まる予定です。ウクライナ政府との細かなやり取りをNATOの高官が直接行うことになります。

ウクライナ ゼレンスキー大統領
「(Q.トランプ氏が再選した場合、アメリカのNATO離脱やウクライナ支援の打ち切りに不安は)アメリカにはNATOから絶対に離脱してほしくない。さもないと、プーチンのような連中のせいで、世界の多くの国が失われてしまいます。アメリカとNATOを頼りにしている小国がなくなってしまう。アメリカには決してNATO離脱を本気で考えないようにしてほしい」

■ウクライナ支援を「制度化」

ヨーロッパの安全保障に詳しい、二松学舎大学・合六強准教授に聞きました。

合六強准教授
「一言でいうと、ウクライナ支援の『制度化』。ウクライナ支援の文脈で言うと『もしトラ』どころか『すでトラ』。去年秋からアメリカ議会でトランプ支持派がウクライナ支援予算を止めるなど、すでに影響が出ている。また、他のNATO加盟国でも極右勢力が台頭している状況。結束への“遠心力”となりかねないため、今の内にスムーズに支援が継続できるよう制度化を図っている」

(Q.今回、合意されたら、今後の戦争に与える影響は)

合六強准教授
「ウクライナとしては、今すぐに戦況を改善するのは難しい。ただ、今回決定した支援を受けた反転攻勢を、来年の春以降に目指す形になるのではないか。一方、ロシア側は『戦争を終わらせる』と主張している。トランプ大統領誕生に備え、できるだけ交渉を有利にするために、しばらく攻勢を強めるのではないか」

大越健介キャスター
「8年前にトランプ氏が大統領になった時は、各国とも備えがなかったため、トランプ氏に翻ろうされ、いくつかの多国間の約束事も機能不全に陥りました。今回のNATOの取り組みは、そういった苦い経験を踏まえてのことだと思いますが、もう1つ大事なのは、NATOの基本的なスタンス。ウクライナの戦線は、民主主義陣営と独裁国家との間にある防衛線なのだというスタンスについて、トランプ氏に嫌だと言われても、しつこいくらいに説得していくことが大事だと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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