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2010年6月21日 【緊張高まる朝鮮半島情勢】
今年3月に黄海上で発生した韓国哨戒艦の沈没の原因が北朝鮮の魚雷攻撃と結論付けられたことを受け、朝鮮半島情勢が緊迫の度を増す中、FPCJでは、朝鮮半島問題の第一人者である小此木政夫・慶應義塾大学法学部教授をお招きし、お話を伺いました。参加者は、海外プレス16名(9か国)、大使館関係者16名を含む計38名でした。
小此木教授は冒頭、「今年は朝鮮戦争開戦60周年にあたるが、冷戦下の朝鮮半島の分断体制とは、抑止力が働くことによる『戦争が不可能な体制』であった。逆説的だが、そのような体制下で北朝鮮は、ラングーン爆弾テロ事件(1983年)、大韓航空機爆破事件(1987年)など、戦争には至らないレベルの様々なテロ行為、挑発行為を繰り返してきた」と指摘。
その上で、「今回の韓国哨戒艦沈没事件は、海上での軍事衝突の1つというより、むしろ、そのような北朝鮮による一連のテロ行為のようなものと理解できる。北朝鮮は、あくまで戦争を避けるという前提で、戦術的なレベルで軍事的な挑発を行っているのであり、これが戦争に至るとは考えていない」との見解を述べられました。
小此木教授はさらに、朝鮮半島における大きな事件は、多くの場合、国際的なレベル(戦略的なレベル)、南北間レベル(戦術的なレベル)、北朝鮮の内部事情という3つのレベルで説明することが可能であり、北朝鮮が今回の事件を引き起こした動機の合理的な説明を試みる上でもその枠組みは有効であると指摘。
「第一の国際的なレベルで見れば、米国および韓国との交渉が失敗に終わり戦略的に行き詰った北朝鮮が局面打開のために軍事的な挑発を行ったものと見ることができる。第二の南北間のレベルでは、韓国の外交および内政を混乱させ、6月2日の韓国統一地方選挙の結果は北朝鮮が望んでいた結果となった。李明博政権のリーダーシップに打撃を与えることに成功したと言える。最後の北朝鮮の国内事情のレベルでは、後継者問題のために今回の事件が起こされたとは考えられないが、同国が事件後の軍事的緊張を国内における後継体制の形成に最大限利用していると見ることは自然である」と述べられました。
最後に小此木教授は、韓国はソウルでG20が開催される11月までに平和な国際環境を整える必要があることから、北朝鮮は今後、韓国を事態打開のための突破口とするだろうと指摘し、今後の展望として、北朝鮮が小規模な軍事挑発を繰り返しながら韓国に譲歩を強要する可能性と、南北双方が徐々に緊張緩和措置を取って戦略的妥協を模索する可能性の2つのシナリオが考えられると述べられました。
質疑応答では、哨戒艦沈没事件の原因についての国際合同調査団による調査結果の信憑性や、北朝鮮に対する国際的な追加制裁実施の可能性などに話が及びました。
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http://fpcj.jp/modules/news3/index.php?page=article&storyid=154&ml_lang=ja
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