防犯カメラに写っていたのは、車上荒らしをする3人組。最後は、軽トラックを盗んでいきます。
その後、車は見つかりますが、白かった車体が黒に…。走行距離は、盗まれた1カ月半で6000キロ。謎に迫ります。
さらに、レンタカーが盗難にF1レーサー、ルイス・ハミルトンも乗った年代物のスポーツカーです。オーナーが100万円の懸賞金をかけると、続々と情報が…。専門家と共に盗難車の足取りを追いました。
そして約3週間後、見つかったのは横浜港の海外行きのコンテナ内でした。そこから見えてきたのは、「アメリカの“25年ルール”」。年代物のスポーツカーが狙われる理由でした。
■約120万円で購入…軽トラック盗まれる
午前0時ごろ。埼玉県伊奈町にあるリフォーム会社の駐車場に、作業着姿の2人組が現れます。
後部の窓をこじ開けようとしているのでしょうか。すると突然、動きを止める2人組。近くを車が通り過ぎて行きました。
今度は、前のドアの窓に狙いを定め白いヒビが入ります。2人組は、車内を物色。車上荒らしです。
自分たちが乗ってきた車に、盗んだものを積み込む様子も防犯カメラに映っていました。
被害を受けたリフォーム会社の経営者・川田賢興さんは、このように話します。
川田さん
「窓をいきなり割って、車をすぐ開けてしまうというか。すごい手慣れているなという感じ。3人組で、1人が監視役で、2人が物を盗んでいるような感じ」
ライトを点灯させて、仲間に何かの合図を送っていたのでしょうか。
さらに2人組は、リフォーム会社が3年前におよそ120万円で購入した軽トラックを盗んでいきました。
荒らした車もあるなか、なぜ、白い軽トラックを狙ったのか。そこには、犯人グループの驚きの思惑が隠されていました。
■窃盗犯には“別の目的”も?
川田さんは、被害届を提出。防犯カメラ映像を警察も確認します。
川田さん
「ナンバーはしっかり映っているけど、偽造ナンバーだったみたいで。犯人逮捕までは、特定できなかったみたいです」
川田さんによれば、被害総額はおよそ200万円。車はもう出てこないとあきらめていました。
ところが、リフォーム会社から100キロ以上離れた茨城県日立市で軽トラックが見つかったのです。
しかし、その姿は、白色だった車体が黒色になっていました。ナンバープレートも発見時には、別の車のものが付けられていたといいます。
川田さん
「ここに車台番号があったが、削られたようになっていました」
さらに、車の計器には、不可解な記録が残されいました。
川田さん
「走行距離は(盗まれる以前は)2万キロだったが、2万6000キロ近くまであがってしまっていて…」
なんと、わずか1カ月半で6000キロ、本州を南北に2往復するほどの走行をしていたのです。そして、荷台にはコンパネが立てられ、発見時、大量のごみが積まれていたといいます。
川田さん
「もしかしたら廃品回収とかで使われていたのかなと」
盗んだ車で廃品回収!?実は、窃盗犯には別の目的があると専門家は推測します。
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子氏
「(軽トラックは)窃盗団の足として、車上荒らしの獲物を積んで帰るのにも、次の獲物を探すのにも、非常に小回りが利いて使い勝手がいい。(ゴミは)もし住民の人に怪しまれても、『いや、廃品回収です』みたいな、そういう言い訳が出来るかなと思います。(車を)ある程度使ったら海外に出せる(売る)と思います」
■消えたスポーツカー…執念の追跡に独占密着
実は、日本の軽トラックは海外で人気で、盗難件数が増加傾向にあるといいます。それと同じく、窃盗犯が近年、海外向けとしてターゲットにしている車がありました。
加藤氏
「海外では売られてこなかったモデルが今、非常に人気があって…」
日本の古いスポーツカーです。これは、今年1月、盗難に遭いSNSなどで話題となった車で、25年前に販売された年代物のスポーツカーです。
オーナーは最大100万円の懸賞金をかけ、情報提供を呼び掛けます。
すると、次々と情報が。消えた車の執念の追跡に、独占密着しました。
盗難車に懸賞金を掛けたのは、千葉県野田市でスポーツカーを専門に扱う「おもしろレンタカー」です。
盗まれたのは、7度の優勝を誇るF1レーサー、ルイス・ハミルトンやハリウッド映画の主演俳優も乗った、まさに「会社の顔」ともいうべき1台。それが盗まれたのです。
車を盗まれた「おもしろレンタカー」
齊藤隆文代表
「非常に今、中古市場で高騰の激しい、とても人気のある車です」
25年前の発売当時は、500万円から600万円ほどでしたが、現在では1500万円以上。それをレンタカーとして利用していました。
盗難前日に車を借りた客は、都内数か所で記念撮影をして、千葉県内のホテルで宿泊。翌日午前8時半ごろ、目を覚ました客が駐車場に出てみると車は姿を消し、カギ周りやガラスの破片だけが残されていたのです。
警察に通報したオーナーの齊藤さんは、その後、SNSで目撃情報を募りました。すると…。
齊藤代表
「絶対この車で間違いないという(情報)が、(SNSに)アップした当日の午後10時に頂きまして…」
目撃者から送られてきた写真には、純正では2本あるはずのマフラーが盗まれた車と同じく1本しかないうえ、ナンバープレートはほぼ同じように見えますが、下一桁だけが違っていました。偽造された可能性があります。
齊藤代表
「このモデルに限っては、白は珍しい色になので。市中に出回る数というのは、非常に少ないと思います」
その後、最大100万円の懸賞金をかけると、20件近い情報が寄せられ、多くが茨城県土浦市内に集中していました。
時間が経てば、解体されたり売られたりしてしまう可能性があります。一刻の猶予もないなか、齊藤代表は“ある人物”に協力を仰ぐことにしました。
盗難車の捜索に数多く協力
自動車整備士 三宅和人さん
「この近辺だと、国道354号沿いと国道16号沿いを(窃盗犯は)使う」
盗難車の捜索に数多く協力してきた自動車整備士の三宅和人さんです。車の窃盗犯罪に詳しい自動車生活ジャーナリストの加藤さんも参加し、捜索を開始しました。
目撃情報が集中した茨城県土浦市に向けて出発しました。
■“盗難車”目撃した親子からの情報も…
齊藤代表
「ここで、隣の車線を走っていたという目撃情報がありました」
盗難が発覚しておよそ6時間後。つくば市、吉瀬のバス停付近で土浦方面に向かう、よく似た車の目撃情報がありました。直線距離でおよそ6キロ先、土浦市内の国道6号沿いは、盗難翌日から頻繁に目撃情報が寄せられていた場所でした。
齊藤代表
「ひとつ向こうの交差点で、夕方ぐらいに一つ目撃情報があったのと、その2日前に、こちらの目の前の道を海方向に」
現場に向かってみたものの目撃情報が多かった土浦市内で、新たな手掛かりはつかめませんでした。
続いて捜索チームは、千葉県との県境、茨城県坂東市へ。盗難発覚からおよそ12時間後に、酷似した車を目撃し、撮影していた情報提供者です。
“盗難車”を目撃した親子
「2人でこっちを見てたら…」
「えらい勢いでね」
車を目撃したのは、午後10時ごろとのことでした。
“盗難車”を目撃した親子
「上(堤防沿いの道)は舗装されている道ですけど、下はあまり舗装されていない」
「そこら辺は砂利です」
「そこを迷わず向こうに砂利を駆け上がっていったので…」
「(普段から)多分知ってる道ですよね」
目撃した親子によれば、ここは夜間、滅多に車が通ることはないといいます。しかも…。
“盗難車”を目撃した親子
「1台ではなかった。セダン風の高級車っぽいのが…」
不審に思った親子は、すぐさま2台の車を追跡。その道を案内してもらいました。
親子が目撃した場所から、およそ2キロ、集落を抜けた2台は橋を渡って千葉県側へ。その後、スポーツカーはセダンと別れ、農道に入ります。
齊藤代表
「(追跡に気づき)まくための道ですね。まくためか、もしくは目撃を減らすため。大通りだと車が多いから…見られてしまう」
車は大通りに出ると北へ向かうルートをとりますが、その先の交差点が赤信号に変わったため、停止せざるを得なくなりました。ところが…。
“盗難車”を目撃した親子
「自分は、この辺に止まっていて。ちょうど右折レーンが空だった。それで、右折レーンからビューンと(直進)した」
車は赤信号を無視して逃走、姿を消してしまったといいます。
齊藤代表
「目撃情報も途絶えていますし、あとは警察の捜査の進展を見守るしかないと感じています」
ここで手詰まりとなり、自ら捜索することを諦めます。ところが、車が盗まれてからおよそ3週間後、齋藤代表のもとに驚きの情報が入りました。
■同じ型の車が数多く被害に…
齊藤代表
「横浜の警察からいきなり、車が見つかりましたと…」
見つかったのは、盗まれた場所からおよそ60キロ離れた横浜港でした。税関が、書類に不備があった海外行きのコンテナをエックス線検査にかけたところ、盗難車が積み込まれていたといいます。
齊藤代表
「ほぼ諦めていたので、本当にびっくりしました。早く見て確認したいところです」
発見の知らせから1カ月が経ったこの日、ようやく引き取りがかない、千葉県野田市の会社に盗まれた車が戻ってきました。
後部座席の窓ガラスは割られ、なぜか、すべてのブレーキが外されていました。カギや電装部品も破壊されていましたが、齊藤代表はこのように話します。
齊藤代表
「部品さえ調達すれば、元通りにするのは、そこまで大変ではない。不幸中の幸いといいますか…」
齊藤代表は、1カ月以内でのレンタル再開を目指します。
齊藤代表
「早くエンジンを掛けて、動かしてみたいなと思います。…でも、本当に戻って来て良かったとホッとしています」
近年、今回盗まれたものと同じ型の車が数多く被害に遭っているといいます。その理由について、専門家はこのように解説します。
加藤氏
「“25年ルール”が適用になるのが、今年の1月からだったんですよ」
アメリカでは、右ハンドルの車の輸入は原則禁止ですが、製造から25年が過ぎれば可能になります。今回盗まれたスポーツカーも、まさに製造から25年が過ぎたばかりでした。
加藤氏
「これから(製造から25年が経ち)解禁になる車もまだ増えますし、盗まれるものだと思って、警戒して頂ければと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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