「緊迫の8分間」 JAL機乗客が衝突から脱出まで撮影…機体に炎 「肺突き刺す煙」充満【羽鳥慎一モーニングショー】(2024年1月5日)

 羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故です。JAL機の乗客が衝突の直後から脱出までの8分間を撮影していました。炎が迫る機内で、どういう状況だったのでしょうか。

■衝突直後に炎「一瞬パニック」

 動画は、海上保安庁機と衝突した直後から始まります。

乗客
「早く…」


「何?この臭い」

乗客
「大丈夫、大丈夫」


「どこに火がついてるの?」
「え、怖いよ」

乗客
「落ち着いて、落ち着いて」

CA
「大丈夫です。落ち着いてください」


「早く出たい」

乗客
「落ち着いて」

 撮影開始からおよそ30秒で停止したJAL機。窓の外にはオレンジ色の炎が見えています。

動画を撮影した乗客
「(Q.着陸時の状況は?)ぶつかった感じはなかったです。タッチダウンした時に、ガタガタってなるのが、ちょっと強めで。その後も何かガタガタガタって、ずっと続いていく感じですかね」

 撮影を始めたのは、着陸後すぐ。座席は左翼後ろの非常口付近。通路側の席に男性、その横に娘と妻が座っていて、今後の事故対応に役に立つのではという理由で動画を撮影したといいます。

CA
「鼻と口を覆ってください」

乗客
「タオルある?タオル、ちょっと待って」
「これで鼻ふさいで」

CA
「鼻と口を覆って、姿勢を低くしてください」

乗客
「早くきて、早くきて」


「助けて」

CA
「鼻と口を覆って、姿勢を低くしてください」
「荷物は取り出さないで」
「状況を確認しています」

 着陸直後の撮影開始から2分すぎ、窓の外にオレンジ色の不気味な煙がもうもうと立ち上るなか、機内には客室乗務員が乗客のパニックを抑えようと、必死に呼び掛ける声が響いていました。

動画を撮影した乗客
「一瞬パニックになりかけたんですけども、その後、CAさんが『落ち着いてください。いったん体をかがめてください』っていうようなアナウンスをしてですね。いったん皆さん、冷静を取り戻したというか」

■「肺を突き刺す煙」機内に充満


「パパ出られる準備して」

CA
「鼻と口を覆ってください」
「荷物は取り出さないで」
「鼻と口を覆って、姿勢を低くしてください」


「神様お願いします。神様」

CA
「鼻と口を覆って、姿勢を低くしてください」
「姿勢を低くしてください」

乗客
「大丈夫だよ」


「開けてください」

乗客
「大丈夫、落ち着いて」


「早く出してください」

CA
「荷物を取り出さないでください」

 撮影開始から3分48秒。機内には煙が充満し始めます。

動画を撮影した乗客
「(Q.荷物を下ろそうとする人は?)私の周りには基本見えなかった。みんな、ちゃんと座ってかがんでいた感じ」
「(Q.すぐドアが開く状態ではない?)CAさん同士も電話で連絡取っていたけど、『ドアが開きません』とか、そういう声が聞こえた。『非常口開けていいですか』とか、そういう声は聞こえた」

 緊迫度が増すなか、他の乗客に呼び掛ける乗客もいました。


「開けて」

別の乗客
「いったん頭下げましょう」

乗客
「すみません」

別の乗客
「煙が上にいくので、いったん頭下げましょう」

乗客
「煙がすごい」

別の乗客
「大丈夫、大丈夫。乗務員の言う通りにして大丈夫、大丈夫」
「大丈夫」

CA
「鼻と口を覆って、そのまま姿勢を低くしてください」
「開ける場所、教えてください」
「開いていないです。R3開けません」
「L3ダメです」
「前、開いていますか。後ろ、開けられますか」
「R3開けていいですか?」

乗客
「消防車きてる」

CA
「R3開けていいですか?」
「前、確認できないです」
「今、消火しているから大丈夫だよ」

 撮影者の男性は、このころ煙が充満して一番つらかったと証言しています。

動画を撮影した乗客
「もう本当に、肺を突き刺すような強烈な煙。本当に死を覚悟したのは、肺に突き刺すような煙だったので。これを吸い込み続けていたら、間違いなくあと数分でみんな死ぬんだろうという感じ」

■脱出の瞬間 メガホンで乗客誘導

 撮影開始からおよそ6分20秒後、ようやく…。

CA
「前、行ってください、みなさん」
「荷物持たないで」

アナウンス
「離れてください」

 撮影開始からおよそ7分半。ようやく機内から脱出し、離れた場所まで避難できました。

動画を撮影した乗客
「避難してくださいという指示があってからは、もう本当に一生懸命速く走って。いかに脱出するかっていうことだけを考えて、そのまま前‥前方、左の前方にあるスライダーに乗って、我々は降りて避難しました」

 煙に包まれた薄暗い機内を走りながら前方に移動。客室乗務員はメガホンを使って乗客を誘導。そして男性は前方左側の非常口から脱出しました。

 乗客たちはぼうぜんと、炎を上げる飛行機を眺めていました。今回の体験で感じたことを聞いてみました。

動画を撮影した乗客
「『落ち着いてください』『かがんでください』とか分かるけど、実際に何を今やられている、どんな状況なのかという言葉の説明はもう本当に一切なかったので。その辺を説明してくれると、もう少し気持ち的にも希望が見えるのかという感じがあった」

■翼に炎…CAの叫び声「エンジン燃えている」

 右翼側に座っていた乗客が撮影した映像では…。

乗客
「燃えてる、燃えてる。なんか焦げ臭い…」

 翼の中に見える小さな赤い炎。飛行機は、まだ滑走路を走っています。

乗客
「何これ。火出てる、火出てる。だって燃えているにおいがするじゃん…」

 衝突から3分後には…。

CA
「荷物は持たないで!大丈夫!落ち着いて!」

 機体は停止し、エンジンも翼も燃え上がっています。そんななか、こんなトラブルも起きていました。

乗客
「途中で『機長、機長、聞こえますか』という形で、それに対しては何の応答もなくて」

 衝突直後から、乗務員同士の会話などに使用する連絡システムが使えなくなっていました。

 偶然、機内に乗り合わせたテレビ朝日関係者は、「CA(客室乗務員)さんが叫んでいて、『エンジンが燃えています』って言ったら、白い方が「燃えているエンジンは何番ですか?」って、確認を2人でしていました」と証言します。

 白い服を着ていたのは、チーフの客室乗務員でエンジンの状況などを確認していたといいます。

 そして、炎が迫るなか、行われた乗客乗員379人の緊迫の脱出でした。

乗客
「非常時なので、緊張感あったが、取り乱している感じはなかった」

■避難指示のタイミング 元機長は…

 緊迫の脱出。一部始終を記録した8分間の映像を日本航空機の元機長・塚原利夫さんと日本航空で客室乗務員として10年以上勤務していた香山万由理さんの2人に検証してもらいました。

塚原さん
「ここで止めさせていただいても、よろしいですか。今ちょうど衝突した後、前輪が折れてエンジンが滑走路に引っかかってしまった状態。今ちょうど燃料が点火したところ。それで今急にここで明るくなったんだと思います。これだけの炎と白のこの煙というのは、もうかなり深刻な状態で。このままいきますと、もう余裕なく大火災になる。そういった兆候のある燃え方、煙の出方ですね」

香山さん
「ここまで燃え盛るような炎と煙というのは、本当に普通ではないということは全員が判断したと思います。尋常ではないです」

 尋常ではない燃え方に対して映像では、避難指示が出たのはおよそ6分20秒後。煙が充満するよりも、もう少し早く避難することはできなかったのでしょうか。

CA
「開いてないです。R3開けません。L3ダメです」

塚原さん
「この脱出するという前提でいきますと、火災のいわゆる一番ひどい場所ですね。それがどこかということを判断するのが、この場合には大変難しい。脱出口を開けて、炎が入ってくるような脱出口は当然開けません。どの脱出口を開けることが一番安全であるのか。そのために、火災の発生状況を確認している。開けるドアを決定するまでに時間を要している」

■脱出のキーポイント 元客室乗務員は…

 香山さんも非常口を開けるまでにかかった6分20秒は安全を確認する上で必要だったと分析します。乗客から「状況が分からず不安だった…」という声が上がったことに関しては、こう推測します。

香山さん
「お客様の気持ちを考えますと、まず状況説明してほしいというのは、ごもっともなことではないかと思われます。私が推測するに、お客様に説明しないといけないと同時に、CA同士で連絡を取り合わないといけない事態が起きていたと思う。なので、お客様のことも意識しつつ、CA同士、現場がどうなっているかをコーディネーション、情報の共有ですね。そちらを優先したのではないかなと」

 最終的には乗客乗員379人全員が脱出。その大きな要因として香山さんが注目したのはこの場面でした。

乗客
「大丈夫、大丈夫。乗務員の言う通りにして大丈夫、大丈夫」

 男性客が、周囲に対して落ち着くよう促します。

香山さん
「これが一番大事。CAは今回のエアバスに関して、8名しか乗っていない。8名に対して満席近くのお客様を誘導しなくてはいけない。その中で声を張って言わないといけない時に、どうしても難しいところがある。あの状況なので。今回は男性のお客様の声が聞こえたんですけど、『大丈夫だから』というだけで、CAの代わりに言ってくださっているということが心強いですし。そういった方が増えていくと、みんなで助かろうという気持ちで、落ち着いて行動できるということにつながるなということを実感しました」

■脱出のカギ…開けるドア CAが適切判断

 一方、全員が無事に脱出できたことについて、日本航空の安全部門の現場のトップは、「開けていいドアといけないドアを区別し、危険なドアを開けることなく脱出できたことが大きかった」としています。

 全部で8カ所ある非常口のうち今回開放されたのは、前方の左右2カ所と後方左側の計3カ所でした。

 機内最後方にいた客室乗務員は、後方の右側非常口は炎が見えたため開けられず、左側の非常口を自らの判断で開放して乗客を避難させたといいます。

 今回のように機長と連絡がつかない時は、脱出やどのドアを開けるかなどは客室乗務員が判断します。

 非常口が開いた直後、小さかった炎は機体全体にすぐに燃え広がりました。機内に最後まで残ったのは機長でした。

 逃げ遅れた乗客がいないか1列1列確認し、何人か残っていた乗客を移動させ、最終的に全員の脱出を確認した後、後方非常口から脱出。衝突から18分後の午後6時5分でした。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年1月5日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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