海上自衛隊P3C哨戒機のコックピットに座るのは、女性パイロット。射撃場でも別の女性隊員の姿が。彼女たちが活動しているのは、海上交通の“要衝”として重要視されるアフリカ東部のジブチ共和国。自衛隊、唯一の海外拠点だ。
貨物船などを狙った海賊が出没するため、自衛隊は、各国の軍と共に警戒にあたっている。そんな“最前線”で活動する女性自衛官に密着した。
海上自衛隊のパイロット、25歳の大野瑠華3等海尉。任務は、ソマリア沖アデン湾での空からの海賊対処だ。自衛隊はアジアとヨーロッパをつなぐ物流の重要なポイントで日本の船舶などを守っている。通常、およそ8時間続くフライト。大野さんは食事をとるのもコックピットに座りながら。
「日本だけではなく各国の国籍の商船だったりがいるので緊張感は高まります」
食事中でも警戒を緩めることはできないという。
一方、一時的に立ち寄った護衛艦の乗り組み員にジブチの治安状況を報告していたのは小笠原未流2等陸尉、26歳。市内の治安状況を確認することなどが仕事だ。隊員が普段立ち寄る、外国人や富裕層向けのショッピングモールなどをまわり、日頃から警戒にあたっている。時には、現地の人から、日本語で声をかけられる場面も。
「ジャパン、ジャパンみたいな感じで話しかけられます」
自衛隊が拠点をジブチに設けてから約12年、その存在が市民に浸透していることが感じられる。
そんな中、活動の目的である海賊対処の状況には大きな変化が。活動を始めたころ、年間200件以上あった海賊事案は各国の取り組みもあり激減。当初の目的は達成したようにも見えるが、拠点維持には別の理由もある。
実は、すぐそばにはアメリカやフランス、イタリアなどの基地が密集。ジブチ拠点は「各国の軍と情報共有できる貴重な場所」になっているという。さらに、中国はジブチを“アジア、ヨーロッパ、アフリカの経済的な結びつき”を強くする「一帯一路」構想の拠点のひとつとしていて、大型インフラにも資本を投じている。中国軍の基地は、自衛隊拠点から車でわずか30分ほどの場所にあり、ジブチは中国軍とも情報のやりとりができる重要な場所だと指摘する声もある。
また、防衛力のあり方を定めた「国家防衛戦略」にはジブチ拠点を「在外邦人などの保護・輸送」に活用することも新たに明記された。
日本から遠く離れた場所で活動を続ける自衛隊。きょうも彼女たちの奮闘は続いている。
(2023年2月8日放送「news every.」より)
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