ガザ地区への地上侵攻が間近とされるなか、イスラエル軍の幹部が「作戦は3カ月ほどかかるが、最後にはハマスはいなくなる」と発言し、緊張が高まっています。
■“安全なはず”の南部でも…空爆が続く
イスラエル軍の空爆が続く、パレスチナ自治区・ガザ南部の街、ハンユニス。救急車が向かった先は、国連が運営する“安全なはず”の学校です。
避難してきたパレスチナ人でごった返す学校のすぐ目の前で爆撃があり、7人が死亡、40人が負傷したといいます。
安全な場所を求め、6人の子どもをつれて学校に避難してきた女性は、次のように話します。
避難してきた女性:「子どもにとって、健康的で安全な生活は1%もありません。安全なんてありません。戦争で死ななかったとしても、伝染病や病気で死ぬでしょう」
CNNによると、イスラエル軍はガザ地区の一部に南方への避難を促すビラを改めて散布。「南部に避難しない者はテロ組織の仲間とみなされるかもしれない」と警告していますが、その“安全なはず”の南部でも空爆が続いています。
イスラエル軍報道官 ハガリ少将:「我々は戦争の次の段階に向けて、ガザ地区北部にあるハマスの標的への攻撃を強めていく」
イスラエル軍の参謀総長は精鋭歩兵部隊「ゴラニ旅団」を前に、地上侵攻に移る構えを強調しています。
イスラエル軍 ハレビ参謀総長:「我々はガザ地区に入り、ハマスを壊滅させるための作戦に着手する」
22日、イスラエルのガラント国防相は「地上侵攻作戦は1カ月、2カ月、3カ月ほどかかるだろう。しかし、最後にはハマスはいなくなる」と話しました。
■ハマスが人質解放を小出しに…理由は“時間稼ぎ”か
地上侵攻が差し迫るなか、イスラム組織・ハマスは20日、SNSで人質となっていたアメリカ人母娘を解放したと発表しました。
イギリス・BBCによると、ハマスはイスラエルに対して一部の人質を解放する代わりに、一時停戦の実施を求めているということです。
そのハマスの報道官は21日、新たに「人質の女性2人を開放する用意ができている」と声明を発表しました。
ハマスのテレグラムから:「きのう夜、仲介役のカタールに、あす解放する予定を知らせた。人道上の理由で代償は求めない。だが、イスラエル当局は拒否した」
これに対し、イスラエル政府は強く反発しました。
イスラエル政府:「ハマスの虚偽のプロパガンダには乗らない。人質全員の帰国にあらゆる手段を講じる」
イスラエル軍報道官は22日、今も212人が人質になっていると明らかにしましたが、その安否は分かっていません。
人質解放を巡るイスラエルとハマスの駆け引き。ハマスが人質の解放を小出しにしていることについて、専門家は、次のように話します。
東洋英和女学院大学 池田明史名誉教授:「一番大きいのは“時間稼ぎ”。切迫していると言われているイスラエル軍の地上侵攻を可能な限り遅らせて、この間に迎撃の準備をすると」
専門家によると、イスラエル軍は地上侵攻でガザ北部に張り巡らされたトンネルのネットワークを壊滅させたいという狙いがあるといいます。
対するハマスは、その狙いを逆手にとってトンネル内でイスラエル軍を迎えうち、大打撃を与えるための準備期間を稼ぎたいのではといいます。
池田名誉教授:「(人質解放を)受け入れ始めてしまうと、イスラエルは“また次、また次”と、ハマス側の“小出し作戦”に応じざるを得なくなってしまうため、その手には乗らないという意思表示をしなければならなかったのではないか」
22歳の息子をハマスに誘拐された親は、今回の人質の解放について、複雑な思いを抱いています。
息子をハマスに誘拐された母親:「きのう、ハマスが母娘2人をガザから解放しました。息子のオメルが一刻も早く出られるという希望を与えてくれています。一方で、他国の民間人については人質交渉を行うのに、人質全員について一緒に交渉しないことが理解できない」
ハマスが撮影した動画には、上半身裸でトラックに載せられ、腕などを執拗(しつよう)にたたかれる息子の姿が映っていました。父親は目を赤くしながら、“静かな怒り”を口にしました。
息子をハマスに誘拐された父親:「イスラエル政府にメッセージがある。停戦するのは、誘拐された人々が全員家に帰った時だけだ。それまで、戦争はまだ続く」
■ガザ地区に支援物資到着も…わずかトラック20台分
一方、世界各地で停戦を呼び掛けるデモが行われ、“怒り”の矛先はイスラエルだけでなく、西側諸国にも向かっています。
ガザ地区とエジプト境界にある「ラファ検問所」のエジプト側では、デモ参加者が「あなたの人間性はどこにある」と、CNNの記者に詰め寄る場面もありました。
21日には、ガザ地区に医療品や食料などの支援物資が到着。しかし、その量はわずかトラック20台分です。
22日にも支援物資を積んだトラック17台がガザ地区とエジプトの境界にあるラファ検問所へと入ったということです。
パレスチナ・アマル代表 北村記世実さん:「全然足りないよなというような感じですね。二百数十万人が、ガザの中で生活をしているのに…。継続的にトラックが一日100台以上は要ると思うのですが」
そう語るのは、ガザ地区から伝統的な刺繍(ししゅう)を輸入し、日本に販売している北村さん。ガザ地区では国連の支援事業として、難民の女性300人が刺繍の作り手となっていますが、彼女たちの安否は不明です。
連絡が取れたわずかなスタッフも「自宅が破壊された」という連絡を最後に、メッセージが途絶えているといいます。
こうした状況にもかかわらず、北村さんは今も刺繍のオーダーを受け付けています。
北村さん:「このがれきの中から彼女たちが再びあの生活を取り戻すには、仕事が必要だろうということで。先行支援を始めました。500件以上の申し込みをいただきまして、本当にありがたいなと思っています」
(「グッド!モーニング」2023年10月23日放送分より) (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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