「10万円で俳優をスキャンしてAIに」配信で収入減も…43年ぶりハリウッド俳優組合スト(2023年7月14日)

アメリカ・ハリウッドで、俳優など16万人が所属する『全米映画俳優組合』が43年ぶりのストライキを開始しました。

イギリス・ロンドンで13日、クリストファー・ノーラン監督が原爆の父と呼ばれる男を描いた新作映画『オッペンハイマー』の試写会イベントが開かれました。しかし、俳優たちは、写真を撮っただけで試写会には参加せず去ってしまいました。

ジョシュ・ハートネットさん:「映画のプロモーションはできません。でも、これは仕方のないことです」

マット・デイモンさん:「もちろん話をしていきたいですが、ストライキになれば、荷物をまとめて帰ります」

16万人の会員を有する、全米映画俳優組合のストライキの影響です。

全米映画俳優組合、フラン・ドレシャー会長:「もうたくさん。私たちは断固とした態度をとる。目を覚まして、現実を見なさい」

俳優組合が求めるのは大きく2つ。まず1つは“配信サービス”をめぐる報酬のルール作りです。10年以上、組合に所属している俳優・松崎悠希さんはこう話します。

松崎さん:「俳優は、印税による安定した生活が営めなくなってしまった。それで今まさに、俳優が生活をかけてストライキに入った。実は出演料より印税の方が高い」

クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』に出演した松崎さん。出演料は280万円。DVDなどの印税収入は700万円以上です。ただ、映像の楽しみ方が、DVDからネットフリックスなどの配信サービスに移り、印税の正しい支払いの仕組みができていないのが現状です。松崎さんの印税収入は、この10年間減るばかりだといいます。さらに…。

松崎さん:「最近あるオーディションで『俳優は実際に撮影には参加しません。ただし、俳優の外見をスキャンする』オーディションも出てきている。スキャニングされた瞬間に、我々は俳優ではなくなって、ただのデジタルデータになってしまう」

もう1つ、俳優たちが求めているのは“AI規制”の促進です。実際、AIの技術は、人々の仕事を脅かすレベルまで来ています。

俳優たちとは別に、脚本家たちも5月から声を上げてきました。俳優と脚本家の同時ストライキは63年ぶりのこと。ロナルド・レーガン元大統領が俳優だった時代です。彼が率いた俳優組合は、劇場用映画がテレビで放映された場合、再使用料が支払われるルールを勝ち取りました。また、映画がビデオ化された時も、俳優たちは、自分たちの権利をストライキを通じて勝ち取ってきました。ただ、今回、俳優側と制作側の主張は平行線をたどっています。

組合側の交渉担当者:「彼らがいう『画期的なAI提案』は、1日分のギャラで俳優をスキャンし、肖像権を所属会社が保有し、永久に使用できるもの。本人の同意もギャラもなしです」

一方、制作側は「画期的な提案を拒絶したのは俳優組合だ」との主張を展開しています。

早くも、日本に影響にも及んでいます。今月21日公開の、ミッション・インポッシブル最新作。主演のトム・クルーズさんは、ストライキのため来日できなくなり、舞台あいさつが中止になりました。

事態の収束まで、少なくとも数カ月はかかるとみられ、経済的損失は5000億円以上に上るとの予測も出ています。それでも、ストライキに参加する意義を松崎さんはこう話します。

松崎さん:「自分たちの世代、私たちも生活が苦しい状況もあるが、次世代の俳優たちが暮らしていけなくなる。その責任というのもある」

■「AIが俳優に」仕事奪う懸念

配信サービスとAI技術の発展によってまさに映像映画業界は転換期を迎えています。なかでも、AI技術の活用については、今はルールがないため脚本家・俳優組合は懸念を表明し、新いルール作りを求めています。

脚本組合は、AIが脚本を書くことで、脚本家が仕事を失う可能性を危ぐしています。映画会社側が、AIを使って、脚本家らの著作権を無視して過去の作品などを学習させ、新作を作ってしまうやり方です。

俳優組合は、生成AIで俳優の肖像や声を学習させ、デジタル上で再現することで、声優や俳優の仕事を奪う可能性を危ぐしています。すでにハリウッドでは、俳優を若返らせたり、亡くなった俳優を再現、本人の声で再現して吹き替えさせるなど、AIを使った映像表現が行われています。これらに対しても、代役や吹き替え声優などが仕事を失うという主張をしています。

また、俳優そのものをAIで代替することを懸念しています。1日分のギャラを支払ったうえで、俳優をスキャンして、その姿をAIで再現し、会社側が自由に映画に使用できてしまうということです。俳優組合に所属する松崎さんは「すでにこうしたスキャンを目的としたオーディションが始まっている」と話します。

松崎さん:「出演料は約10万円のケースも。俳優としては出演せず、“外見”をスキャンして提供する。自身の見た目を、すべて譲り渡してしまう。俳優としての権利をすべてあげるぐらい危険」

俳優組合のドレシャー会長は会見で、今が映像ビジネスにとって歴史的正念場にあるとしたうえで「私たち全員、いずれ機械に置き換えられてしまう。我々労働者は、敬意と対価を求めている」と話しています。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

powered by Auto Youtube Summarize

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事