プーチン大統領の面前で“口論” 旧ソ連首脳…話を遮ってまで批判した理由(2023年5月29日)

 旧ソ連諸国の首脳が集まった会議で、アルメニアとアゼルバイジャンの両首脳が、議長を務めるプーチン大統領の目の前で口論を繰り広げた。ロシア側の面目をつぶすようなことが起きた背景とは。

■プーチン大統領…両国に“自制”呼び掛け

 プーチン大統領の目の前で論争が繰り広げられたのは25日、ロシアのモスクワで開かれた旧ソ連諸国の首脳が集まって行われた「ユーラシア経済同盟」首脳会議での出来事だった。

 プーチン大統領:「『ユーラシア経済同盟』首脳会議の開催にあたり…」

 アルメニア パシニャン首相:「お話し中、失礼します。一言言わせて下さい。ロシアの平和維持部隊が道路を管理すべきだが、アゼルバイジャン側が違反して封鎖しました」

 アルメニアのパシニャン首相が、プーチン大統領の話をさえぎったのだ。

 突然のことに、プーチン大統領はこの表情。パシニャン首相が話し始めたのは、アゼルバイジャン領内にあるアルメニア系住民が多く住む地域「ナゴルノカラバフ」についてだった。

 アルメニアとアゼルバイジャンが30年以上、帰属を争ってきた「ナゴルノカラバフ」。現在は、アゼルバイジャン領となっているが、アルメニアのパシニャン首相は、その「ナゴルノカラバフ」とアルメニアを結ぶ唯一の幹線道路をアゼルバイジャンが封鎖したと批判したのだ。

 これに対し、アゼルバイジャンのアリエフ大統領は反論。

 アリエフ大統領:「いかなる道路も封鎖していない。この場で、根拠のない言いがかりをつける必要はない」

 両国の応酬にプーチン大統領は困惑した表情で、こう切り出した。

 プーチン大統領:「ロシアも例の方面(ウクライナ)で紛争が起きています。我々全員が紛争の解決に利害関係を有しているに違いありません」

 ロシアがウクライナに侵攻した件を持ち出して、両国に自制を呼び掛けた。

■話遮ってまで…批判した理由

 アゼルバイジャンとアルメニアが領有権を争っているナゴルノカラバフ地域について見ていく。

 ナゴルノカラバフ地域は、アゼルバイジャン内の西部の山岳地帯にあり、面積は山梨県ほどで人口の9割をアルメニア系住民が占めている。ソ連時代末期の1988年には、アルメニアへの編入を求める運動が起こった。

 その運動をきっかけに、アルメニアとアゼルバイジャンの間での対立となり、紛争にまで発展。1991年には、アルメニア系住民が「ナゴルノカラバフ共和国」独立を宣言して、アゼルバイジャンの軍も警察も入れない地域となっていた。

 そして2020年に大規模な戦闘が発生。アゼルバイジャン側が実質的な勝利をおさめ、アルメニア系住民の支配地域が大幅に減少した。

 その後、ロシアなどの介入により停戦に合意したが、その後もアルメニアとアゼルバイジャンとの衝突が続いている。

 そんな30年以上紛争が続いているなか、ここにきてアルメニアが譲歩の姿勢を見せている。

 アルメニアのパシニャン首相は22日、ナゴルノカラバフについて、アゼルバイジャン領と認める可能性について言及。現地のアルメニア系住民の「安全の確保」を条件として、ナゴルノカラバフをアゼルバイジャンの一部と認める用意があると述べている。

 なぜ、パシニャン首相は、プーチン大統領の話をさえぎってまで、アゼルバイジャンの批判をしたのか?

 旧ソ連の紛争に詳しい慶應義塾大学の廣瀬陽子教授は、「ナゴルノカラバフとアルメニアを結ぶ唯一の道路が、アゼルバイジャン側に封鎖された問題に加え、プーチン大統領自らが出席していたことが大きい」と指摘し、「去年も度々、ナゴルノカラバフを巡って衝突があったが、ロシアは解決に動かず仲介役を放棄していて、今回、プーチン大統領の話をさえぎるという形で抗議の姿勢を見せたのでは」と分析している。

 またここにきて、アルメニアが譲歩の動きを加速させるような動きを見せていることについて、廣瀬教授は「アルメニアはロシアの支援のもと、活動してきたが、ウクライナ侵攻の影響でロシアの支援は期待できなくなった」とし、「ロシアを見限り、平和活動を進めるヨーロッパから支援を受けることなどを視野に入れて、ナゴルノカラバフの譲歩を進め、平和をアピールしているのでは」と推察している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年5月29日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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