【労働環境】Amazon配達ドライバー「配達終わらない...」荷物は1日200個超、休憩は10分…Amazon「委託した配送業者の責任」労働環境どう改善?|TBS NEWS DIG #shorts

先月、アマゾンジャパンは徒歩や自転車を使って荷物を届ける新たな配送方法を導入しました。背景にあるのが人材不足。ネット販売が拡大する中、年々増える荷物に配達現場からは悲鳴もあがっています。密着したアマゾンの荷物を配達するドライバーからは不満も…労働組合を結成する動きも広がっています。

■40年続く写真店・店主が徒歩で“配達” 「苗字だけでも配達できる」

2022年12月、アマゾンジャパンは新しい配送方法を発表しました。

アマゾンロジスティクス事業本部長 アヴァニシュ・ナライン・シング
「配送方法を自由に選択でき、ほとんどのパートナーは自転車や徒歩での配達を行っています」

これまで一般的だった車ではなく、徒歩や自転車で配達するといいます。実際に配るのは意外な人たちです。

写真店経営 鈴木吉昭さん(82)
「江東区北砂で約40年間写真店をやっております。アマゾンハブデリバリーを始めたきっかけは運動不足を解消するために町内会を徒歩で配達すれば健康にもよくて実益を兼ねるのではないかと思いました」

配るのは飲食店など地域に根ざした事業者。1日30個から50個ほどの荷物を本業の空いた時間を利用して配達します。

範囲は約2キロ圏内、徒歩や自転車で届けられる小型の荷物が中心です。

写真店経営 鈴木吉昭さん(82)
「私は40年以上この地に生活しておりますので苗字だけでも配達ができるような状態です」

■アマゾン配達ドライバー「AIの指令で自由はない」荷物は1日200個超

アマゾンが新たな配送方法を導入したのには訳があります。ネット販売の拡大が続くなか、配達員は慢性的な人手不足になっているのです。現場からは悲鳴も聞こえてきます。

個人事業主のドライバー
「こういう感じですね。これ110個あります」

軽ワゴン車に満杯の荷物。全てアマゾンで注文されたものです。配達はAIを使ったアマゾンのアプリがルートをナビゲーションします。

個人事業主のドライバー
「結局AIからの指令ですから、自分たちに自由はない」

20年、配達の仕事をしているという個人事業主のドライバーの女性。
午前中に集荷した110個の荷物を午後3時までに届けなければいけません。

個人事業主のドライバー
「あそこの山の方に行きます」

配達先によっては車で近くに行けない場所もあります。また、配達先が不在などで余計に時間がかかる場合もあります。

個人事業主のドライバー
「居ませんでした…」

この日とった休憩は10分ほどのトイレ休憩のみ。

午後3時までに午前分の配達を終えると・・・

個人事業主のドライバー
「93個です。(合計)200超えてます」

ーーこれは普通ですか?

個人事業主のドライバー
「最近の普通です」

夕方、さらに荷物を集荷。これを午後9時までに配らなければいけません。

休みなく配り続けましたが・・・

個人事業主のドライバー
「終わらすことができませんでした」

ーー荷物はどれくらい残っていますか?
 
個人事業主のドライバー
「数は多く見えるんですけどあと10軒分だった」

ーーこういうことはよくあるんですか?

個人事業主のドライバー
「最近多々あります」

ーー(届ける荷物は)何個が適正だと思いますか?

個人事業主のドライバー
「一日、朝から夜までの適正個数は120個ぐらいだと思う」

この日は13時間労働で荷物は203個でしたが、この個人事業主のドライバーは9時間労働で荷物は120個が正常な働き方だと訴えます。

■ドライバーが労働組合結成 委託先配送業者「誠意をもって対応している」

労働組合のデモ
「ガンバロー!ガンバロー!」

2022年、個人事業主のドライバーたちは横須賀と長崎で労働組合を結成しました。アマゾンジャパンの本社前で荷物の量の適正化や賃金などの待遇改善を求めるデモなどを行っています。ちかく東京でも新たに組合を結成する予定です。

こうした現状についてアマゾンジャパンに聞くと・・・

アマゾンジャパン アヴァニシュ氏
「私たちは委託先配送業者と契約を結び、その業者が人材募集やトレーニングなどを行います。配達員の方がいくつ配達するか、どのエリアで配達するかは委託先配送業者が決めます」

個人事業主のドライバーはアマゾンジャパンの社員ではなく、配送に関する稼働管理などについてはアマゾンが委託した配送業者の責任だといいます。

一方で、個人事業主のドライバーの不満については・・・

アマゾンジャパン アヴァニシュ氏
「委託先配送業者には正当な賃金と安全な環境で労働ができることを契約上で求めています。契約準拠していない場合は適切な対応を行います」

委託先配送業者の一つは「news23」の取材に対し労働環境などについて「誠意をもって対応している」とコメントしています。

■広がる“個人”としての働き方 権利や立場は? 

山本 恵里伽キャスター:
改めて問題となっている点を整理していきますと、個人事業主であるドライバーは、アマゾンジャパンから配送委託を受けた会社と契約をして、荷物が割り当てられていきます。

しかし、実際はアマゾンジャパンから直接アプリなどを介して働き方を管理されているというんですね。こうした状況について一部のドライバーからは雇用責任があり業務委託は偽装だという声が上がっています。

一方のアマゾンジャパンは、個人事業主は社員ではないとして団体交渉にも応じていません。

この状況に関して、日本労働弁護団の菅俊治弁護士は「働き方を見る限り、事実上の“労働者”。労働法で守られるべきだ」と指摘をしているんです。

また、近年耳にする機会が増えたと思います、ギグワークという言葉。

個人がネットを介して単発の仕事を企業から請け負う働き方のことを言いますが、ウーバーイーツの配達員なども当てはまりますね。こちらに関しても「最低賃金」「長時間労働」の規制などについて現行の法律が適用されていないということで、セーフティーネットの弱さが指摘されているんです。

小川彩佳キャスター:
なかなか法整備なども難しいところがあるのかもしれませんけれども、働き手を守る体制というのが不十分な状態がずっと続いているわけですよね、そろそろ改善に向かわないかなというふうに思うところですが…

慶應義塾大学 宮田裕章教授:
個人として、大きな組織とか企業と向き合って働くっていうのは、一部の大変な人の話ではなくなっていくと思います。

なぜかというと、人生100年時代に入り一つの企業に勤めて働き終えるという時代じゃなくなってきてるんですよ。セカンドキャリア、サードキャリアだったりあるいは兼業副業という働き方を考えたときに、1人としていろいろな組織とどう向き合うかっていうことを考える中で今回の問題のように権利、個人としての弱い立場の人をどう守っていくのかっていうことは、働き方を開いていく上でも多くの人に関わる問題になるのかなと思います。

■4月からは配達ロボも公道に ドライバーの人出不足解消になるか

小川キャスター:
追いついてない体制作りというのをどう進めていくのか、これとともに重要となるのが人手不足の解消ですね。国内では2023年4月から無人で荷物を運ぶ自動配送ロボットが公道を走れるようになりますけれども、こうしたテクノロジーによる労働環境の改善というのも非常に期待されますね。

慶應義塾大学 宮田裕章教授:
配送テクノロジーで打開できるっていう可能性は十分あると思います。例えばベランダに今までパラボラアンテナとか置いてましたけれども、ドローンボックスを置いてですね、電話したらそこに薬が来ると。単価の高いものをもう配送業者を介さずに届けてもらう。こんなテクノロジーは間違いなくいずれ実現すると思うんですよ。省力化によって、いろいろなコストを改善できるだけではなく、未来の配送の仕組み・働き方っていうのを日本は特に人手不足でもあるので両立させながら、これからの時代をつくることはできるんじゃないかなというふうに思ってます。

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