放送法をめぐる総務省の行政文書には”事実上の放送法の解釈変更”について話し合われたとされる経緯が記されていますが、この問題の背景には何があったのでしょうか。
元総務省の官僚が、私たちの取材に「忖度の走りだった」など証言しました。
■元総務官僚「以前から放送に対して…」
今週、総務省で放送行政に携わってきた元官僚が報道特集の取材に応じた。
膳場貴子キャスター
–放送法の政治的公平性の解釈をめぐる文書のニュースを聞いてどういう印象だった?
元総務省官僚
「以前から、放送に対して政治が何らかの影響力を及ぼしたいとか、自分たちにとって都合の悪いことを言ってほしくないとか、そういう意向を及ぼそうという力は感じることがありましたので、こういうことがあってもおかしくはないかなと思いました」
さらに、この元官僚は「放送法」の位置づけについて、こう話す。
元総務省官僚
「(政権が)都合の悪いことを言うマスコミを黙らせたいと基本的には思っていて、ただそれをストレートに言うことは、民主主義国家では当然許されないので。今回問題になっている話は、放送の世界で言うと“憲法”みたいな重みのある話であって、それが簡単に変わるということは絶対にあり得ないと思います」
総務省が公表した放送法の解釈をめぐる行政文書について、3月10日、高市大臣に聞いた。
村瀬健介キャスター
「総務省の官僚がねつ造したという大臣の主張について大臣の監督責任はどうお考えか?」
高市早苗 経済安保担当大臣
「行政文書については、その内容の正確性を確保するということは大変重要。しかし相手方の確認を取るなど、正確性を期する手順がとられていないことが判明している。ですから当時、私が大臣であった総務省に、正確性が確認されていない文書が保存されていたということは、やはり大変残念に思いますし、責任を感じております」
高市氏がその一部を“ねつ造されたもの”などと主張する行政文書。その文面を検証した。
■「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ済まないぞ。首が飛ぶぞ」
2014年11月。当時の総理補佐官・礒崎陽輔氏が、総務省の放送行政を担当する課に、電話で連絡したことから始まった。
礒崎総理補佐官(当時)
「放送法に規定する『政治的公平』について局長からレクしてほしい」
これまで政府は、放送法が定める政治的公平について、“一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する”と解釈してきた。
しかし、礒崎氏はこの解釈に問題意識を持っていて、国会で取り上げたいとして、総務省に対応を求めたという。
2014年11月28日の文書 礒崎総理補佐官(当時)
「1つの番組では見ない、全体で見るというが、全体で見るときの基準が不明確ではないか」「絶対おかしい番組、極端な事例というのがあるのではないか」
文書には、この日以降、総務省側が対応に苦慮する様子も。
2015年1月29日の文書 総務省から磯崎氏への回答
「総務省のほうから(唐突に)今回の『極端な事例』を答弁することは困難。業界等の反応を懸念。そこはご理解いただきたい」
しかし、礒崎氏は-。
2015年1月29日の文書より 礒崎総理補佐官(当時)
「言ってることは分かるが、『極端な事例』が総務省の答弁として残らなければ意味がない。高市大臣のご了解が得られたら連絡してほしい」
総務省はその後、大臣である高市氏に報告。すると、高市氏は。
2015年2月13日の文書より 高市早苗総務大臣(当時)
「苦しくない答弁の形にするか、それとも民放相手に徹底抗戦するか。官邸には『総務大臣は準備をしておきます』と伝えてください」
一方、礒崎氏について報告を受けた総務省出身の総理秘書官(当時)、山田真貴子氏は-。
山田真貴子総理秘書官(当時)
「『個別の番組』の(政治的公平の)整理を行うのであれば、放送法の根幹に関わる話ではないか」「政府がこんなことしてどうするつもりなのか」「言論弾圧ではないか」
それでも総務省に対し、礒崎氏は-。
礒崎総理補佐官(当時)
「この件は俺と総理が二人で決める話」「俺の顔をつぶすようなことになれば、ただじゃあ
済まないぞ。首が飛ぶぞ」
そして、2015年3月。安倍氏と礒崎氏、山田秘書官らの面会が設定されたという。
山田秘書官は「メディアとの関係で官邸にプラスになる話ではない」と発言。
しかし、安倍氏は-。
安倍総理(当時)
「政治的公平という観点からみて、現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき」「極端な例をダメだと言うのは良いのではないか」
そして、礒崎氏が求めていた国会答弁についてはー。
安倍総理(当時)
「国会答弁をする場は予算委員会ではなく総務委員会とし、総務大臣から答弁してもらえばいいのではないか」
その翌日の夕方、総務省でも局長が高市氏に対し、礒崎氏の話を説明したと記されている。(2015年3月6日の文書)
高市氏の第一声は。
■「本当にやるの?」「民放と全面戦争になるのではないか」と述べたとされる文書も…(https://newsdig.tbs.co.jp/list/article?id=jnn-20230311-6072719)
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