検査無しでも、症状で「陽性」と同様に扱うことができる「みなし陽性」。東京都では数百人以上の「みなし陽性」が発表されています。この「みなし陽性」という仕組みについて、自治体の長からは、感染者なのか、そうでないのか、はっきりしない状況のまま放置されてしまう可能性を上げ、「みなし陽性」という形で扱っていくのがベターという意見もあります。
一方で、医師からは重症化への懸念や、他の病気である可能性もある、という意見もあります。医療資源がひっ迫する中、今後増えることが予想される「みなし陽性」、専門家にききました。
■検査なしの“みなし陽性”とは?
山形純菜キャスター:
東京の2月4日の新規感染者数は1万9798人、うち検査なしで医師が陽性と同等と診断した“みなし陽性者”は413人でした。
ではこの“みなし陽性”とはなんなのかといいますと、本来は発熱などの症状が出た場合、医療機関を受診しPCR検査で陽性かどうか医師が診断します。みなし陽性は1月24日から自治体の判断で感染者の同居家族など濃厚接触者が発熱などをした場合、“検査はしないで、症状などを見て医師が陽性と同等と診断する”というものです。
みなし陽性は自治体の判断でということですが、2月4日時点でNスタが調べたところ、北海道・山形・福島・茨城・栃木・群馬・千葉・東京・神奈川・新潟・静岡・大阪・岡山・福岡・佐賀・長崎の16都道府県で運用を始めています。
既に運用している茨城県の大井川和彦知事は「検査ができるまで待っていると、感染者なのか感染していないのかはっきりしない状況のまま放置されてしまう。“みなし”という形を使ってでも陽性者として扱っていくのがベター」と話しています。
■みなし陽性の運用で医療現場は
山形キャスター:
ひなた在宅クリニック山王の田代和馬院長に伺いました。
「みなし陽性の診断は時間がかかるので負担が大きい」ということです。
▼詳細な問診
▼診断についての説明
▼療養中の注意点の説明
などを行うということで、肌感覚ですが、検査で診断するより3倍時間がかかるように感じているそうです。
田代院長は2月2日に25人の患者さんをオンライン診断しました。25人のうち“みなし陽性者”と診断した人数は7人。5人の方は別の病気だとわかったということです。
残り13人はわからなかったということで、オンライン診断後にPCR検査を実施しました。その結果、3人が陽性、10人が陰性だとわかったということです。
田代院長は「みなし陽性患者が本当に陽性なのか時間が経たないと証明できない。その間に重症化や他の病気の危険性も出てくるためフォローアップすることが必要」と話しています。
■みなし陽性が増えることで懸念事項も
ホラン千秋キャスター:
みなし陽性が増えていくことによってどのようなことが想定されるんでしょうか。
国際医療福祉大学 感染症学講座主任教授 松本哲哉医師:
検査を受けて確定したというわけではない“陽性”という患者さんが出てくるわけです。そういう人たちへの対応が今後どうなるかまだ決まっていません。もちろん自宅で一定期間療養してくださいということになるのかもしれませんが、例えば状態が悪化したとき、本当にコロナ患者としての受け入れができるのか、検査していないからわからないということで、ちゃんと確定してから受け取りますということも出てくる可能性があります。そうすると、状態がいい方については自宅療養が必要になりますけど、そこまで大きな影響は出ないかもしれない。しかし、そうじゃない人、健康状態が悪化する場合の対応というのが、薬を使えるのかどうか、あるいはちゃんと入院できるかどうかも含めて、フォローが受けられるのかに関しても、まだ決まってない部分が多々あるので、そこの部分についてはやっぱり不安ですね。
ホランキャスター:
今回取材対応してくださった田代院長も「みなし陽性の診断は時間がかかるので負担が大きい」と話されていたんですが、キットがないから仕方なく“みなし陽性”というシステムをとっているけれども、医療関係者の皆さんからするとやはり負担が大きいということになるわけですか。
松本医師:
正直言ってコロナ患者っていうのはグレーゾーンの人が多すぎるんですね。典型的な所見が出ていれば「陽性かもしれない」となりますが、軽い風邪ぐらいの症状の人も結構います。そういう人に対して「家族が感染しているからあなたも陽性でしょう」というように、私自身は正直言って確定できる自信はないですし、そのあと結局、本当に陽性だったのかというフォローもできないわけですね。
それを考えると、みなし陽性はいよいよとなったときにはしょうがないのかもしれませんけれど、まずできるだけ検査をやれる体制をもうちょっと踏ん張って作っていく、というのが本当のあり方なんだろうと思います。
■「発症者」「無症状者」検査の優先度は
井上貴博キャスター:
まず発症者は絶対に検査を受けた方がいい。そこから逆算すると、無症状者の検査を少し止めて発症者を優先することに方針転換することが必要なのかなという気もするんですが、いかがでしょうか。
松本医師:
限られた検査能力をどこにきちんと与えるかということであれば、それは症状が出て診断が必要な人が大事になってくると思います。無症状の方であれば抗原検査をしても出にくいということもありますし、ただ単に気になるからということではなくて、実際に具合が悪くてその人がちゃんとコロナかどうかを確定するための検査をまず優先していくべきだと思います。
井上キャスター:
ということは医療現場の立場からすると、“みなし陽性”ということよりも“発症者に検査”に重点を置く方がいいということですか。
松本医師:
そうですね。今、検査キットなどが偏在しているのかもしれません。医療の現場にきちんと分け与えて、それ以外のところはもうちょっと我慢していただくことが必要になってくるんじゃないかと思います。
(2月4日放送『Nスタ』)
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