00:00 OP
01:20 精神疾患の診断方法
03:25 病気の発症、労災
05:53 会社がすべき対応
07:54 組織全体の問題
09:13 福祉のこと
12:59 プライベートの問題への介入
本日は「社内で適応障害、うつ病の方が出た場合どのように対応したら良いのか」というテーマでお話します。
主に職場の上司、人事担当の方、産業カウンセラー、精神科のことにあまり詳しくない産業医の方にも見てもらえたらと思います。
「適応障害」と「うつ病」はどういうものかというと、似たような概念だと思われがちですし、なかなか区別がつきにくく、実際に精神科医でないとよくわからないことが多いと思います。
あの人は「適応障害」という診断書を持ってきたけれど、あの人は「うつ病」という診断がついているけどどう違うのかな。
あの人は「適応障害」という診断で半年くらい休んでいたけれど、この人は「うつ病」という診断で3ヶ月くらいしか休んでいなかった、どういうこと?と思っている方は多いと思います。
そこら辺もお話しします。
■精神疾患の診断方法
精神疾患というのはご存知の通り、科学的に診断することはできません。
血液検査や画像検査では診断することができません。
時々謎の装置を使って脳波検査をして、うつ病や発達障害を診断するところがありますが、あまり信用しないでください。
高額のお金を取って診断するところがありますが、基本的に科学的にはまだ診断ができません。人類はまだそこまで到達していません。
病歴を聞きながら診断したり、症状によって診断したりします。
ざっくり言うと、原因がはっきりしている、ストレスの原因がはっきりしているものを「適応障害」と言ったりします。
ストレスが原因で落ち込んでいる、うつっぽくなっている、ストレスから離れると比較的速やかに回復するものを適応障害と言います。
逆に言うと「うつ病」というのは、ストレスの原因がはっきりしているときもあればはっきりしないこともあり、落ち込みが適応障害よりも比較的重いものが多く、ストレスから離れてもなかなか良くならずに期間も長くかかるもの、そして古典的には再発を繰り返すもの、という定義になります。
今は再発を繰り返すことは絶対条件には含まれていませんが、うつ病は再発が多いので、再発を繰り返すことはうつ病らしさの表れだったりします。
ただストレスが原因で落ち込んでいるだけだと、うつ病と適応障害の判断をするのは難しいです。
精神科医の長年の勘で区別したりしています。
■病気の発症、労災
病気は「遺伝子」と「環境ストレス」の複合で発症します。
遺伝的な脆弱さがあって、そこにストレスが加わることで潰れてしまうということです。
環境ストレスの要素を職場の人は考えなければいけません。
ストレスは、プライベートの問題もあれば、会社内で起きている問題というのもあります。
会社内で起きている問題とプライベートの問題は、どちらかだけが問題で、どちらかは問題でないということは、ある人にはありますが、なかなか見分けがつかなかったり両方起きたりします。
しかし、会社はどれだけの責任があるのか、会社ではどういう問題が起きているのか、ということをきちんと把握することが重要です。
それによって労災の適用になるかならないかがはっきりするからです。
労災の適用基準に関してはきちんと明文化されていますから、担当の方はインターネットで検索して一度目を通されるのが良いと思います。
例えば「長時間労働」は労災の適用です。
長時間労働でうつになると労災の適用になります。
残業が月100時間を超える、直近3ヶ月の残業時間が100時間を超えている、直近2ヶ月の残業時間が120時間を超えている、連続勤務が20日とか1ヶ月を超えているなど、詳しい数値は忘れてしまいましたが、そういうことがポイントになったりします。
「ハラスメントの有無」も労災の基準になったりします。
しかしながら、労災の適用にならないからといって会社側に全く問題がないのかというと、そういうわけではありません。
労災を申請する人は年々増えているので、会社側はそこら辺を把握することが重要だと思います。
■会社がすべき対応
会社がすべき対応は、一次予防、二次予防、三次予防の3つに分かれます。
一次予防は、不調者が出ない職場作りをすること、です。
例えば残業時間が100時間を超えないような対応策を作る、法の規定内で仕事が終わるようにする、残業が多いようなら上司は部下を帰らせる、パワハラやセクハラが起きないような職場環境を作る、ということです。
1人に業務や責任が集中するのではなく、働きやすい環境を作ることが一次予防になります。
二次予防は、早期発見して対応する、ということです。
ストレスチェックで引っかかった人には、早めに産業医面談をしたり受診をすすめる、ということです。
三次予防は、復職の支援や退職した場合は再就職先や休み方の支援をする、復帰できた人には最初のうちは残業をしないように配慮をする、時短勤務を認める、再発予防のために通院を認めやすくする、ということです。
一次予防、二次予防、三次予防とありますが、これらを実行するには、どうして調子を崩したのかを本人や同僚、上司などから聞き取りを行い、職場の問題をきちんと把握することが重要になります。
■組織全体の問題
結局、個人の問題というよりは組織全体の問題であることが多いです。
集団の病理、組織病理の問題であったりします。
たとえば家族の問題でもそうです。
不登校の子どもが出てしまった、家庭の中で子どもがうつになってしまったという場合、それは子どもだけの問題かというとそうではなく、多くは家庭内不和があったり家族全体の問題であったりします。
両親がなかなか帰ってこない、両親の仲が悪い、母親が一方的に子どもに頼る、ヤングケアラーになってしまう、というようなことでグチャグチャになった結果、一番弱い子どもがやられてしまった、ということが多いです。
職場内で適応障害やうつが出た場合、そいつがダメなんだということではなく、もう一回職場全体を見直して考えてあげることがとても重要です。
不幸にもそういう人が出た場合はきちんと対応して、また同じ仲間として働ける場所を作ってあげることが、上司や人事の責任ではないかなと思います。
■福祉のこと
治療については病院に任せれば良いですが、福祉のことは職場の人も知った方が良いかなと思うので説明します。
福祉のことは知っているようで知らなかったりするので、うつなどに関係するところを説明します。
失業した場合はハローワークへ行ったりします。
東京だと「しごとセンター」というものもあります。
ハローワークの大きい版でキャリアカウンセラーもいますので、そこで相談するのが良いと思います。
ハローワークとしごとセンターのことは押えた方が良いです。
うつが長引いている人の場合だと、復職支援が必要になります。
復帰前に復職トレーニングをする、職場を辞めるけれど復職の際には復職トレーニングをする必要がある人もいるので、その場合は就労支援施設があるということを教えてあげると良いと思います。
他にはリワークデイケアというものもあります。
病院やクリニックに併設しているデイケアで、リワークプログラム、復帰プログラムがあったりするところもあるので、そういうものを勧めてあげると良いかなと思います。
休職中にも就労支援やリワークは利用できます。
もし調子が悪くてそのまま退職してしまった場合も、そういう場所を紹介してあげるのも親切かなと思います。
休職中に有休を使っている場合は良いのですが、有休が切れると病気休暇になります。
病気休暇では給料が出ません。
職場から給料が出ないですが、社会保険から傷病手当が出ます。
これは給料の2/3が支払われます。
福祉制度としてお金に関係するものは、他には、通院から半年以上経っている場合は障害者手帳を取ることができます。
通院費や薬代が1割になる自立支援というものもあります。
こういうものも紹介してあげてください。
通院して1年半経つ場合、障害年金が該当する場合もあります。
これも紹介してあげると良いかなと思います。
調子が良くなった場合、失業手当を取ったりすることがありますが、もし会社を辞めた場合は傷病手当を延長してもらえることもあります。
社会保険に1年以上入っており、会社を途中で辞めた場合、傷病手当は最大1年半もらえますが、退職後ももらえることがあります。
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一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 https://www.medsi.co.jp/products/detail/3509
倫理規定について https://note.com/mentalyoutubers/n/nb130991f3fa4
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