「これが最後の機会だと思います」一時“戦後最悪”と言われるほど悪化した日韓関係が改善に向けて動き出しました。徴用工問題の賠償金について韓国政府は支払いを“肩代わり”する解決策を発表。背景には緊迫する国際情勢がありました。
■韓国側が賠償金肩代わり 徴用工問題の解決策
韓国 朴振外相
「韓日両国の反目と葛藤を乗り越え、未来へつながる新しい機会になることを願います。そして、これが最後の機会だと思います」
韓国の朴振外相は3月6日、徴用工問題の解決策を発表しました。
解決策は、韓国政府の傘下にある財団が日本企業に課された徴用工に対する賠償金を“肩代わり”して支払うというもの。その賠償金は「自発的な寄付で賄う」とし、日本企業に対して支払いを求めませんでした。
岸田総理
「今回の韓国政府の措置は、日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価しております」
徴用工とは太平洋戦争の最中、日本の統治下にあった朝鮮半島から動員され、日本の工場や炭鉱などで働かされた人たちのことです。
日韓の国交が正常化した1965年、日本が韓国に5億ドルの経済援助を行うとし、「日韓請求権協定」でこう決めました。
「請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」
両国政府ともに徴用工の問題は“解決済み”との認識だったのです。
しかし、2018年10月、韓国の最高裁が前代未聞の判決を下しました。
韓国最高裁は「原告は旧日本製鉄に対する損害賠償請求権を行使することが出来る」とし、日本企業に賠償金の支払いを命じたのです。
「日韓請求権協定」はあくまで“国と国との約束で、個人の請求権は残っている”との解釈です。
安倍晋三総理(当時)
「今般の判決は国際法に照らして、ありえない判断であります。日本政府としては毅然と対応してまいります」
その後、日韓は対立を深め、日本政府が韓国に対する輸出管理を厳格化すると、すぐさま韓国側も反発しました。
「日本製品を売らないぞ!売らないぞ!」
日本製品の不買運動が広がりました。
日韓関係は「戦後最悪」とまでいわれるように。
そんな中、韓国側が示した解決策。背景には緊迫する国際情勢があります。
韓国 朴振外相
「世界規模の危機が複合的に起こる中、外交や経済、安保などあらゆる分野で韓日の協力が重要です。国益のために悪循環を断ち切らなければなりません」
北朝鮮情勢、ロシアのウクライナ侵攻、中国の台頭など、国際情勢が不透明感を増す中、日韓関係の改善は欠かせないという認識です。
アメリカのバイデン大統領も、今回の動きを高く評価しています。
アメリカ バイデン大統領
「アメリカの最も緊密な同盟国である日本と韓国の協力とパートナーシップにおいて、画期的な新たな章となる」
岸田総理も歴史認識に関して「歴代内閣の立場を引き継ぐ」として韓国側に配慮を見せ、3月後半にも尹大統領が来日する形で首脳会談を行うことを検討しています。
日本政府は今後、韓国国内の世論の反発で解決策が覆らないか見極める考えです。
■“戦後最悪”の日韓関係 肩代わりの背景は?
ーー日韓最大の懸案だった徴用工問題が一気に解決へと動き出したが、この背景には何があったのか?
TBS スペシャルコメンテーター星浩氏:影の主役はアメリカだと言ってもいいと思います。核ミサイル開発を進める北朝鮮情勢が緊迫してますので、日米韓で協力しましょうということです。
中国に対しても台湾有事などに向けて日米韓が連携する必要があるということで、アメリカが相当、日韓双方に働きかけたということだと思いますし、バイデン大統領がいち早く今回の合意解決案を評価したというのも、その表れだと思いますね。
ーーなかなか解決に向けての動きが見えなかったその最中も、水面下では様々な動きがあったということか?
星浩氏:日本の外交官も韓国の外交官と非常に頻繁に交渉を進めていましたし、岸田総理も尹大統領も98年の金大中大統領と大渕総理の合意を非常に高く評価してましたし、その2人のリーダーシップで日韓をうまい方向に持っていこうということで、合意したこと自体は非常に結構なことだと思いますね。
ーーようやく改善に向けて動き出した日韓の関係ですけれども、今後その関係が醸成されていくのは何が必要でしょうか?
星浩氏:日本側としては、半導体関係の輸出規制を今してますので、それを早めに解除して、韓国に答えていくということですし、韓国は来年総選挙があるんですけども、またこの政治情勢が変わって、この合意をちゃぶ台返しするようなことがあってはならないので、そういう意味では韓国側も、着実に合意を履行していくという覚悟が必要だと思います。
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