卵不足で日々“争奪戦” 1日3万個必要…老舗玉子焼き店が悲鳴「“自転車操業”状態」【Jの追跡】(2023年3月11日)

物価の高騰に鳥インフルエンザが追い打ちをかけ、卵価格の高騰と不足が深刻化しています。都内のスーパーでは、弁当の玉子を減らしたり、かつ丼の販売を休止する事態になっています。

創業68年を迎える老舗玉子焼き店に密着。一日3万個の卵を必要とするため、問屋に電話を掛け続ける毎日。少ない卵を奪い合う卵の“争奪戦”が繰り広げられていました。

そんななか、代表は厚焼き玉子の追加発注をキャンセルするかと思いきや、まさかの受注。一体、なぜでしょうか?

そして、やっと確保できたのは殻付きの卵。しかし、ホッとしたのも束の間、気の遠くなるような作業が待ち受けていました。

■物価高騰に…“鳥インフル”が追い打ち

先月27日、都内のスーパーをのぞいてみると、卵の価格は1パック259円。去年に比べて80円ほど値上がりしているといいます。異変は、惣菜コーナーにも…。

PB FARM・清野恒樹社長:「本当はハンバーグ弁当だと目玉焼きを1個入れるとかっこいいけれど、ちょっと値段も高いし」

ハンバーグ弁当にかつて入れていた目玉焼きが、ゆでたまご半分に。さらに…。

清野社長:「かつ丼もね、ちょっと止めているんだけど。かつ丼だと(卵)2個使っているから、どうしてもね」

卵を使った弁当の販売をやめる事態になっています。

買い物客:「困りますよ。何とかして下さい。今、息子の弁当とか作っているんですけど、卵料理がだんだん減ってきたなという感じです」

卵の相場の推移を見てみると、去年8月から徐々に上がり始め、過去最高の335円に。去年1月の倍以上となっています。

卵の値上がりの背景には何があるのか?茨城県にある養鶏場に話を聞きました。

ホウトク農場・豊村三弘専務:「元々、飼料代をはじめ、光熱費、人件費とかが高騰していることもあって、値上がりしつつはあった」

生産コストがかさみ値上げせざるを得ない状況に。そこに追い打ちをかけたのが…。

豊村専務:「決定的に今回の鳥インフルエンザで卵が不足して値上がりしている」

「鳥インフルエンザ」が猛威を振るい、全国のニワトリの1割、およそ1480万羽が殺処分の対象になりました。

卵を産むニワトリの数が減り、日本中が卵不足に陥っているのです。その結果…。

豊村専務:「『卵ないですか?』という声は結構いただきますね。既存のお客様をもちろん優先して注文応えて、タイミングでちょっと余剰が出れば対応できるかなという感じですね」

卵を求める悲痛な電話が急増、争奪戦の様相を呈しているといいます。卵不足によって起きている争奪戦。日々「卵の確保」に奔走している現場はどうなっているのでしょうか?

■毎日“3万個”必要も…“自転車操業”

都内で厚焼き玉子などの製造を手掛ける「玉栄」。創業68年を迎える老舗です。

フワフワながらも食べ応えのある「厚焼玉子」。主にスーパーや飲食店に販売しています。

代表の村山拓也さんに工場内を案内してもらいました。

村山代表:「1回に110キロ(の卵)に出汁(だし)を入れて、これ1回分で大体250本くらいできる」

1本当たり8個の卵を使い、4000本ほど製造するため、毎日およそ3万個の卵が必要です。しかし現在、卵の仕入れ量が3分の1にまで減少。厚焼き玉子の出荷制限をかけている状況です。

使用しているのは「液卵」と呼ばれる、卵の殻を割り、中身だけを集めたもの。卵を割る手間がかからず、加工品に向いています。

倉庫の在庫を見せてもらいました。

村山代表:「全部液卵です。あしたには、おそらくなくなる」「(Q.全部なくなる?)全部なくなります」

卵を確保できても翌日には使い切ってしまうため、毎日卵を仕入れなければならない、まさに“自転車操業”です。

■ひなまつりで需要↑ “厚焼き玉子30本”注文が…

では、卵不足の中、どのように確保しているのでしょうか?

村山代表:「もしもし、お世話になってます。もう増やせないですよね?。養鶏場もそうですもんね。『卵ないか?』と連絡来るでしょ?沖縄から来るんだ。すみませんが、引き続きよろしくお願い致します。すみません、ありがとうございます」「(Q.どういう電話?)うちと付き合いのある養鶏場から送ってもらっている量が減っている。常に一日10件くらいは(仕入れ先に)連絡しながら、状況確認やちょっと分けてもらえませんかという話を」

普段の仕入れ先に卵の余剰在庫がないか、毎日電話しているといいます。

日によって、スーパーなどから鶏卵問屋への卵の発注量が変わるため、卵が余る場合があり、確保できるチャンスがあるのです。

さらに、村山さんは、わずかな可能性をかけ、同じ厚焼き玉子を作る業者にも電話を掛け続けます。

村山代表:「もしもし社長、お世話になっています。いやいや、元気なくなっていないですよ。(発注を)断っていて、いっぱいいっぱいでという感じですもんね。了解しました」「厳しいですね、なかなか」

5件ほど電話を掛け続けるものの、断られてしまいました。と、そこに…厚焼き玉子の注文が入りました。

従業員:「(厚焼き玉子)30本とか(発注)来ていますけど、全部キャンセルでいいんですか?」
村山代表:「30本!?」

本来なら、断らざるを得ない状況ですが…。

村山代表:「取っていいよ」
従業員:「取っていい?」
村山代表:「取っていいよ、卵集めるよ」

従業員:「(Q.今のは発注が入ってきた?)今のは発注を受けている感じです」
村山代表:「普段の発注の数倍の発注。やるしかないでしょという」

ひな祭りシーズンの今、卵製品の需要が高く、納品先から30本の追加注文を受けた村山さん。

村山代表:「(発注は)ありがたい話ですよ、本当に。めちゃくちゃ私たちにとってありがたいこと」

卵の確保が難航するなか、果たして納品できるのでしょうか?

■確保も悲鳴…殻付き卵“1万8000個”を割る作業

村山代表:「(Q.きょうは何を?)きょうは養鶏場に卵を取りに。出せるという所があったので、取りに行きます」

翌朝、社員とともに千葉へ向かう村山さん。かつての仕入れ先である養鶏場から、卵をもらえるという話がありました。それでもなお、十分な仕入れ量とは言えません。卵をもらいに行く道中にも、別の業者に仕入れ交渉を続けていました。

村山代表:「液卵の件なんですけど、6日より前倒しはできないですよね。できたらなんですけど、多少価格は高くてもしょうがないと思っているので。もし可能でしたら、今週あと500キロだけ」

何とか、1万8000個の卵を確保することができました。

村山代表:「一般家庭には出回らない、こういうSS玉です。中身も小さいので」

小さめとはいえ、今の村山さんにとって、喉から手が出るほど探し求めていた卵です。

しかし、ほっとしたのも束の間、液卵ではなく殻付きの卵のため、この後、気が遠くなる作業が…。

村山代表:「1万8000個を、何人で何時間で割れるかという感じ。それで何とか(しのぐ)。本当は液卵で買えればいいんですけど、液卵が全然足りていないので」

殻付きの卵は、人の手で割る分、時間や人件費もかかるのです。それでも…。

村山代表:「殻付き卵も手に入れるの大変です。色んなところでお願いして何とか入れてもらっている状況。ありがたいです、本当に」

卵を入手したことで、ひな祭りまでのめどは付きました。

仕入れに奔走し、先の見えない日々。そんな奮闘を続ける裏には、老舗の味を守りたいという強い思いがありました。

村山代表:「状況から言ったら、多分かつてあり得ないほどの。価格面でも、需要と供給のバランスでも出したくても卵がないという状況で。一方で、だからこそここを乗り切れれば、もっと明るい先もあると思いますし。これを経験できたことは、絶対この先、生きてくると思う」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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