政府がマイナンバーカードについて「3月末までにほぼ全ての国民への普及」を目指す中、岡山県備前市が出した「カードがないと無料の給食が有料になる」という通知が波紋を呼んでいます。
普及を促す狙いがあるものともみられていますが、全国の自治体が普及率アップに躍起になる背景に何があるのでしょうか。
■「特急発行」「ポイント期限延長」マイナカード新方針
皆さんはマイナンバーカードを持っていますか。取得は義務ではないですが、政府はほぼ全国民への普及を急いでいます。2月17日、このような発表がありました。
【特急発行】
▼申請から交付まで1、2か月
→最短5日に短縮する体制を構築したい
【マイナポイント申請延長】
▼カード取得時、最大2万円分のポイント還元キャンペーン(2023年2月末まで)
▼ポイント申し込み期限 2023年2月末→5月末まで延長
■“取得した世帯”だけ給食費タダ「不公平」の声も…
国はもちろんですが今、各自治体もあの手この手の取り組みを行っています。
そんな中、大きな波紋を広げている岡山県備前市の事例に注目します。「給食や保育園で、マイナンバーカードがないと有料になる」というもの。
元々、備前市といいますと「全国トップレベルの教育」を掲げていました。
【無償で提供していたもの】
▼給食費・学用品費(小・中学校)
▼保育園・こども園の保育料
→2024年度から「世帯全員がマイナンバーカードを取得しなくてはいけない」という条件がつく
つまり、マイナンバーカードがないと無償だったものが有料になってしまうことになるのです。なぜなんでしょうか。
この政策の背景として、備前市の吉村武司市長は「この政策はマイナンバーカードを取得した場合のインセンティブ(報酬)」だと説明しています。
小川彩佳キャスター:
これはインセンティブというんでしょうか。
山本恵里伽キャスター:
元々マイナンバーカードって義務じゃないですよね。けれど、持たない人に対してデメリットを与えるという形になってますよね。
小川キャスター:
無償化という政策自体は素晴らしいと思うんですけれども、備前市の方にとっては、それは今ある政策であって、そこから後退することになりますし、マイナンバーカードを作らないと、ペナルティが課されるという感覚の方が強いんじゃないかなと思います。
久保田編集長:
実はこの条件に関して、市の人口を上回る4万4000筆の反対署名が集まっています。保護者の方も「強制以外の何物でもない」「不公平だ」と給食費などが人質に取られているような感覚を持ってる方も多いようです。
批判もあるのに、なぜそこまで普及率をアップさせたいんでしょうか?
実は備前市だけではなく、各地で普及率アップのために様々な取り組みをしていて、躍起になっているようです。
■マイナカード普及で交付金上乗せ 「どう喝」「脅し」と反発も
実はマイナンバーカードを巡る政府方針として「自治体の交付率が高いほど、来年度の地方交付税を上乗せ配分する」ということが示されているんですね。
つまり、普及率がアップすると、自治体の歳入も増えるわけなんです。
小川キャスター:
交付率上位になるために、自治体同士を競わせるような仕組みになっていますね。
久保田編集長:
やはり穏やかじゃないと考えている方もいて、自治体からはこんな声も上がっています。
群馬県 山本一太知事
「どう喝する形で広めようとするアプローチが間違い」(2022年9月)
埼玉県秩父市 北堀篤市長
「自治体への脅しととられるあるまじき行為」(2022年9月)
でもやはり「歳入が増えてほしいし…」というジレンマなのかもしれません。
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