障害者の結婚に“不妊処置”を提案 「強制ではない」…背景に子育て支援の限界か 専門家からは“人権侵害”の指摘も (22/12/19 22:00)

北海道南部の江差町にあるグループホームで、知的障害のある入所者が結婚などを希望した際、子育てを支援する体制が整っていないことから不妊処置を提案していたことがわかりました。

 あすなろ福祉会 樋口 英俊 理事長:「子どもが欲しいと言われたことはないです」

 不妊処置を提案していたのは江差町の社会福祉法人「あすなろ福祉会」です。運営するグループホームで知的障害のある入所者が結婚や同居を希望した場合、出産後の子育てを支援する体制が整っていないことなどを理由に、20年以上前から不妊処置を提案していました。

 あすなろ福祉会 梅村 雅晴 常務理事:「保護者と本人の意思で避妊の手術を望むということです。利用者の望みです。なかなか結婚や同居さえできない状況で、本人たちの自由に恋愛や結婚がしたいという言葉をかなえてあげたいという気持ちからやったことです。強制したことは一度もない」

 不妊処置に同意し、9年前から施設内で一緒に暮らす入所者は。

 不妊処置に同意した入所者:「納得してやると決めたので、子どもは望んでいないです。ただ一緒にいたい。今は幸せです」

 これまで施設側からの提案に少なくとも8組16人が応じ、保護者からも同意を得ていたということです。

 不妊処置に同意した入居者:「子どもを育てる勇気がない。生活ができないから、ここを出たら生活が無理」

 施設側は処置を拒否して退去した人はおらず、結婚の条件にはしていないといいます。

 あすなろ福祉会 樋口 英俊 理事長:「不妊が条件と一部で報道されているが、それが嫌で外へ出ていった人は1人もいません」

 施設側が不妊処置を提案した背景には、グループホームで暮らす障害者の出産や育児の支援制度が整っていないことがあるといいます。

 あすなろ福祉会 樋口 英俊 理事長:「ケアの対象ではないんで、生まれてくる子どもが。それは家族と相談して方向を決めた方が良いですよと。現段階では障害のある人たちの結婚生活では、我々もケアの限界があるということです」

 障害者への不妊処置を巡っては国が旧優生保護法のもとで、強制的な不妊や中絶の手術を進めてきた歴史があります。

 障害者の自立支援に取り組むNPO法人「札幌いちご会」の理事長小山内美智子さんは。

 NPO法人「札幌いちご会」小山内 美智子さん:「昔から同じです。私も『子宮取らないか』って言われたしね。悲しかったですね。でも、取らないって決心したんです」

 小山内さんは脳性まひによる障害がありますが、結婚し周囲の支えを受け子どもを育てました。

 障害者が子どもを産み、育てることを諦める背景には社会的なサポートが手薄なことがあるといいます。

 NPO法人「札幌いちご会」小山内 美智子さん:「いまヘルパーが足りないから。私も生きていくのでやっとです。人手が足りない」

 施設側が入所者に不妊処置を提案したことに対して、優生保護法被害者弁護団の小野寺弁護士は。

 優生保護法被害者弁護団 小野寺 信勝 弁護士:「夫婦が子どもを持つか持たないか、何人持つかは本来自分自身で決定する。(不妊処置の提案は)実際には自己決定を侵害をしていると思うので、まさに人権侵害のケースだと思います。人権に対する配慮はやや欠けていたのかなと思います」

 北海道の担当者は12月19日午後に施設を訪れ、理事長ら関係者から聞き取りを行い不妊処置を提案した実態を調べています。

 あすなろ福祉会の樋口英俊 理事長は「障害のある人たちの結婚生活にはケアの限界がある。生まれてくる子どもはケアの対象ではない」といいます。

 一方、優生保護法被害者弁護団の小野寺信勝弁護士は「子どもを持たないことを提案すること自体が、夫婦の自己決定権を侵害する」としています。

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