コロナ禍で、がんと闘う男性がいます。面会が制限される中、妻との絆をつむぐ日々を取材しました。
◇
今年9月、和久井美紀さんはスマホの画面に映る夫・秀典さん(46)に、いつものように話しかけました。
美紀さん
「今日の調子はどうなの?」
秀典さん
「たんの調子はまあまあ悪くないんだけど…胃がね…」
秀典さんは、がんの一種・悪性リンパ腫で入院していました。
美紀さん
「会いたいね」
秀典さん
「会いたいね。会いたいよ…そのために生きているんだから」
秀典さんにがんが見つかったのは、緊急事態宣言下の今年5月でした。数か月間、面会できず、スマホを通じての動画付きでの会話が心の支えでした。
和久井秀典さん(46)
「苦しくて苦しくて、怖くて怖くて。あまり深く考えないようにしないと、心がもたないような状態で」
秀典さんが病室から撮った写真には、病院の外の道路で美紀さんたち家族が手を振っている様子が写されていました。
和久井秀典さん(46)
「面会を制限付きでもいいから、緩和してほしいな…と。それだけでも、大きな“薬”になると思うので」
元看護師の美紀さんは、直接会えない夫の体調や言葉を毎日、書きとめています。ノートには『生きることあきらめない』『生まれたからには生き抜く』『1日1日をていねいに』などの文字が――。
和久井美紀さん
「生きる底力みたいなのを感じるから、すごいなぁーと思って。そこは、すごい尊敬する」
5年前に結婚した2人は、実は難病の患者同士です。秀典さんは、がんになる前から20年間、軟骨に原因不明の炎症が起こる「再発性多発軟骨炎」という難病と闘ってきました。
妻の美紀さんは、20代の頃から足や全身に、けいれんや痛みなどが襲う難病「アイザックス症候群」の患者です。
和久井美紀さん
「お互い、病気をもって結婚したから、いずれいつかはどっちかがそうなるだろうな…と思ってたし。でもまさか、こんなに早く、こんなことになると思ってなかったし…」
8月、秀典さんが呼吸困難になりながらも電話をかけてきて、美紀さんは特別に面会できました。
和久井美紀さん
「白目むいて、もう意識がない状態で、『ハンバーグ食べに行くんでしょ!』とか言ってるうちに、『死んでたまるか』って言って、帰ってきてくれて」
秀典さんは一命を取り留めましたが、治療が難しい状態でした。医師からは「元々の難病が悪化するため、抗がん剤での治療はこれ以上できない」と宣告されました。
和久井秀典さん(46)
「(妻が)いなかったら、たぶん今、ここにいなかったと思います。彼女の支えがなかったら、本当。結婚してよかったと思います」
2人での暮らしを取り戻したい――美紀さんが涙を見せました。
和久井美紀さん
「実際に手で触れて触って、『温かいな』とか…。夫にはこんな弱い姿、見せられないけど、でもやっぱりつらい」
10月末、これ以上、がんの治療ができない中、自宅での闘病を決断しました。
和久井秀典さん(46)
「ハンバーグが食べたかった」
帰宅した日、念願のハンバーグを食べると――
和久井秀典さん(46)
「うまい!」
和久井秀典さん(46)は今年9月、こう話しました。
「病気になることで、弱い立場の人の気持ちがわかったりとかできる。かわいそうとは思わないで。難病だろうと、障害者だろうと、健常者だろうと、生きてるってことは同じなんだよ」
『命尽きるまで妻と一緒に』…秀典さんの思いです。
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秀典さんは、今月6日が誕生日だった妻・美紀さんのために、気力をふりしぼっていたということですが、7日朝、旅立たれました。
美紀さんは、「難病やがんを経て懸命に生きた秀典さんの力強さを知ってほしい。仕事や何かを成し遂げることが難しくても丁寧に生きる尊さを伝えたい」と、放送に協力してくださいました。
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