15日からG20首脳会議が始まるインドネシアで、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席が、初めて対面で会談しました。
台湾情勢などをめぐって緊張が高まるなか、関係悪化に歯止めをかけることはできるのでしょうか。
バイデン大統領:「上院を死守し強気で臨めるが、その必要もない。互いによく知っている仲だ。今後2年間、レッドラインはどこか、何が最も重要か、共に見極めたい。彼の中国での立場は明確に変わったが、今後も率直に話し合うつもりだ」
米中関係は今、過去最悪の状態で、アジア情勢の先行きは不透明です。
ペロシ下院議長が台湾を訪問した際、アメリカは空母打撃群と強襲揚陸艦を周辺海域に展開させ、中国側は弾道ミサイルを日本のEEZを含む海域に打ち込むという事態になりました。
北朝鮮は、ミサイル発射実験を活性化させ、再度の核実験が懸念されています。
また、ロシアの存在も無視できません。
ロシア、ラブロフ外相:「アジア太平洋地域は、公平な安全保障と協力関係が発展してきたが、今やアメリカと、その同盟国である北大西洋同盟によって、支配されようとしている」
ウクライナ問題で、アジア諸国やG20は対応が割れました。
中立な国々、西側諸国に同調する国々、中国・ロシアと関係が深い国々、立ち位置はそれぞれです。
ニューヨーク・タイムズ:「今回のG20で、米中は、妥協点を見つけるというより、潜在的な衝突を制御するという、ますます冷戦的な様相を呈している」
日本時間の午後6時半に始まった会談。冒頭の会話はこのようなものでした。
バイデン大統領:「今後、私とあなただけでなく、両政府の対話チャンネルを開いておきたい。両国には、それだけ課題が山積しています。私たちは指導者として共通の責任を担っています。米中は互いの相違点に対処し、競争が衝突に発展することを防ぎ、世界規模の差し迫った問題に、両国が協力し合えることを示すべきで、これは両国と国際社会にとっても不可欠です」
習近平国家主席:「中国と米国は、50年余の波乱に満ちた歳月を経て、経験を積み、教訓を学んだ。歴史は最高の教科書です。歴史を鑑として未来に向かう。現在、中国と米国の関係は懸念する状態にあります。2大国の指導者として舵を取り、方向を定める役割を果たすべきです」
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会談は午後10時前に終了し、約3時間行われました。
習主席の対外的な発言は、あまり聞く機会がないため、中国側の思惑を軸にして深掘りします。
◆中国政治に詳しい、東京大学大学院・高原明生教授
(Q.会談に先立って、バイデン大統領は「レッドラインを見極めたい」としていましたが、習主席の狙いはどこにありそうですか?)
習主席からすると、一番の望みは、アメリカとの衝突を避けて、関係を安定させることだと思います。
一番警戒しているのは、台湾に対するアメリカの干渉です。
台湾の独立をそそのかすような挑発は受け入れられないとか、台湾を主権国家として扱うことはしてほしくない。自分たちの政策は平和統一を目指していることに変更はないといった点を、バイデン大統領に伝えるのではないかと思っています。
中国が台湾に武力行使する可能性は今のところ、低いと私は思っています。
習主席にとって今、優先順位が最も高いのは、今の体制を維持することです。
台湾への武力行使は、3期目に入った政権や、共産党の一党支配体制の維持に有利にならないというのが、大方のみるところです。
恐らく習主席も同じように考えていると思っています。
(Q.現体制を守ることが優先で、アメリカに対して「干渉・挑発しないでくれ」というのが本音だという読みですね?)
中国は、アメリカ・ヨーロッパの政治家の台湾訪問や、日本の安全保障政策の動向を大変気にしています。
中国にとって、これが一番具体的な関心事です。
(Q.中国はゼロコロナ政策で経済が悪化しています。アメリカとの経済的な関係は深めていきたいということですか?)
それは間違いなく、そうだと思います。
米中間の経済交流は今も盛んで、貿易額も増えています。
上海のロックダウンなどの影響もあって、日本との貿易は去年と比べて少し減らしていますが、アメリカとの間では、今年1~9月で見ると2ケタ成長で、貿易額が伸びています。
アメリカは最大の貿易相手で、重要な経済パートナーですので、お互いにかけあっている制裁措置も、徐々に降ろしていきたいと考えていると思います。
(Q.北朝鮮はミサイル発射を繰り返していますが、対北朝鮮で米中が歩調を合わせることはありますか?)
2017年のトランプ政権1年目の時は、米中がまさに北朝鮮政策で歩調を合わせて、国連の安保理で経済制裁が決まりました。
ところがその後、米中が決裂して、そこを北朝鮮がうまくついた形になって、今日では一応、制裁が続いていることになっていますが、実効性に問題が出ています。
中国は本当は、北朝鮮に色々やってほしくない。特に核実験はしてほしくない。
これについて、今回、バイデン大統領と話し合った可能性もあります。
(Q.ウクライナ情勢をめぐり、中国はロシアと歩調を合わせるような行動を取ってきた面があります。中国の本音はどこにありそうですか?)
2カ月くらい前から、少し立ち位置を変えてきました。
それまでは、習主席はプーチン大統領と会談する際に、理解を示す姿勢を取っていました。
しかし、2カ月前、サマルカンドで上海協力機構の首脳会合があった際、プーチン大統領に対して“疑問と懸念”を伝えたようです。
立ち位置を変えた理由ははっきりとは分かりませんが、ウクライナにおける戦況の変化が一つの原因だと思われます。
(Q.対面での米中首脳会談が行われたことは、前向きに捉えられますか?)
非常に大きいと思います。
お互いに疑心暗鬼に陥っている状況でしたので、対面で会って、首脳が何を考えているのかを直接、体温を感じながら伝えあうというのは、非常に重要な機会だったと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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