沖縄出身で、幼少期から戦争を身近に感じてきたというryuchellさん(26)にインタビュー。ロシアのウクライナへの軍事侵攻を受け、SNSで平和への思いを発信したryuchellさんが、いま何を感じているのか。息子からの言葉をきっかけに改めて考えたこと、そして沖縄で育ったからこそ感じる「命があるのは当たり前ではない」という思いを語りました。
――ウクライナへの軍事侵攻、どういう思いで日々の報道を見ていますか?
大人の都合でしかないし、一番の被害者はやっぱり子供たちで、そんなことが今この2022年に起きているっていうことが、本当に調べれば調べるほど胸が痛くなりますし、自分も子供がいる身としては…つらいですよね。だけど、僕たちが親として受け継がないといけない時に来ていますし、子供に世界の状況だったりとかをしっかり共有していかないといけないなと思いますね。
――実際に息子さんとお話しすることはありますか?
はい。息子はまだ3歳半ということもあるので、戦争についての絵本とか、例えば家族が離れ離れになっているような絵本とかからの方が考えやすいのかなと思うので、読み聞かせをしながら「こういうことが今でも起こってるんだよ」とか。そういうことは伝わるので。
――そういう時の息子さんの反応は?
「どうして?」「なんで?」とか。子供の素朴な「なんで?」「どうして?」「いやだ」っていう気持ちってすごく大切なことだと思う。人としての純粋な気持ち。本質をついてるなとすごく思う。その気持ちって大人になればなるほど忘れてしまうのかなって。子供から「どうして?」っていう気持ちが言葉として出た時に、親として「本当そうだよね」しか言えないっていうのも、むなしかったですね。
■涙ながらに語られた“おばあ”の戦争体験
沖縄の普天間で生まれたryuchellさん。生活圏内に当たり前のように米軍基地があり、戦争について学ぶ機会も多く、戦争が“他人事”や“昔のこと”とは思えずに育ったといいます。ryuchellさんの祖母は、20万人以上が犠牲になった沖縄戦を経験しています。その経験を涙ながらに話してくれた祖母の表情や言葉が今も強く心に残っているそうです。
――ryuchellさんはどんな環境で育ったんですか?
僕たちが通ってた中学校のグラウンドは(米軍基地と)フェンス越しに隣り同士だったので、米兵さんたちの練習(訓練)とかも見られたし、当たり前のように授業中とかも飛行機の音で(先生の声が)聞こえないとか、“隣がアメリカ”って環境で育ってきて。僕が小学生の時に米軍のヘリが大学に墜落した事故があって、そういうのも実際に目撃したりしました。やっぱり今生かされていること、命って大切なんだと感じられる経験は、小学生のころからできたなと思います。
――おばあさんから聞いた話で印象に残っている言葉は?
小学校の平和学習の授業だったんですけど、その時初めておばあにどういう状況だったのかとか、戦争について聞いたら、本当に泣きながら話してくれたんですけど、最初の声を聞いた時に「あ、聞かなければよかった」(と思った)。いくら平和学習の授業とはいえ、すごくしゃべるのがつらそうだけど、しゃべらせてしまっているって思ってしまうくらい、声の感じとかちょっと震えて思い出す感じとか。すごく昔のことなのに「どうして昨日あったつらいことのようにしゃべるんだろう」っていうのがすごく印象的で。一番響いたというか、怖いなと思ったのは、「戦争は人を人じゃなくする」っていう言葉。すごく重かったですし…本当に…ひどいことが、こんなすてきな沖縄という島で起きたんだなっていうふうに思いましたね。
■戦争を“自分事”として考えるためにできることは
ryuchellさんは沖縄戦などの戦没者を追悼する6月23日の「慰霊の日」には、毎年SNSで平和への思いを発信しています。そして、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった先月25日には「どうして人は争うの? なぜ同じやり方を繰り返すの? なぜ人は忘れてしまうの? 悔しい。」とやり場のない思いを投稿していました。
――なかなか“自分事”と考えにくいという人も多い現状を、どう受け止めていますか?
「どうせ私なんかが」って思ってしまうのはすごくわかる。僕たちの世代って例えば政治とかも「誰に投票したら日本が変わるの? 誰でも同じじゃない?」みたいな世代で、「自分一人の行動で何も変わらないし」って、結局何もしなくなる。その気持ちはわかるけど、でもやっぱり、僕は子供がいるけど、いつか自分たちに子供ができたり、大切な人ができたり、何か人との出会いがある中で、この居場所、この愛を守りたいと思った時に、“自分から行動して守らないといけないこと”だと僕は思うんですね。そういう意識を持って自ら取り組んでいく。そういうことは大切かなと思う。自分のためにも。
■「平和を当たり前と思った時点で、平和が壊れていく始まり」
――“おばあ”の言葉を受け継いだryuchellさんが、今一番伝えたいことは?
勇気を振り絞って、思い出したくないのにしっかり受け継いでくれた方たちがいる。それは受け継いでいかないといけない。「この平和って当たり前じゃない、作るものなんだよ、守るものなんだよ」っていうことをしっかり頭に入れておかないと、心に刻んでおかないと、どこかで薄れてきて「じゃあしょうがないから戦争」って発想になっちゃうんじゃないかって、やっぱり僕は思ってしまうんです。
“平和を当たり前と思った時点で、平和が壊れていく始まり”だと思うんですね。例えば自分の友達や仕事仲間でも、「(今ウクライナが)こういう状況だね」って言葉を投げかけた時に、「あ、そうなんだ、自分も調べてみよう」っていうきっかけ作りになるかもしれないし、そういうコミュニケーションだとか意識することで平和は守られると思うので、いろんな人の意見を聞いたりとか、自分の知ったものをシェアすることは大切かなと思いますね。
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