宮本融の政治のおはなし FMおたる 2022年2月10日放送後半

緊迫のウクライナ情勢
ロシア側はウクライナへの軍事侵攻の準備をほぼ完了し10日からベラルーシと合同軍事演習を開始する。黒海艦隊の配備も完了しており、ウクライナは完全に包囲された状況。
ここにおいて、欧州各国の仲介外交が積極的に行われている。これが続くうちは実際の戦闘が行われることはなさそうだが、予断を許さない。
21世紀の戦争とはハイブリッド戦争になっている。戦場における武器使用より、平時における非戦場地域における情報かく乱工作の方がはるかに重要。サイバー空間における攻撃はもちろん、軍より民間軍事会社の活動が重要になり、その活動の範囲もいわゆる軍事を越えて、対象地域における国家意識にゆさぶりをかけるキャンペーンが広範に行われている。
現在のウクライナの国境線内には、歴史的にロシア帝国の一部だった地域(ドンバス)も神聖ローマ帝国の一部だった地域(ガリツィア)も含まれているが、地図を確認すると「東西分裂」というほどのウエイトは占めていない。ほとんどの地域は、そのどちらでもない「中部」。ガリツィアにおいてもカソリックより正教の方が多いし、ドンバスでもウクライナ語が通じないわけでもない。多くの人は「ソ連の中のウクライナ人」という意識であり、ロシア人とウクライナ人という二元論でアイデンティティーを考えてきたわけではない。現状は様々な世論調査のデータを見るとそんなに簡単なものではないことはすぐわかる。それなのに「専門家」と称する人たちから「ウクライナは文化的に東西に分裂している」という解説が最近急速に増えている。そうした解説はロシア側が工作に力を入れる英語空間ではきわめて多くなっているが、日本語空間では少なかった。日本語でそうした解説をする者は、ロシア語に堪能で原典に当たっているために逆にロシア側の情報工作に影響された情報により深く接触しているために、そうなっている可能性がある。
ロシアは特に2014年以降、ウクライナ国内でロシアのパスポートを大量に発給している。こうしたPassportizationは紛争地域において自国民を形式的に作り出すことにより、軍事介入の口実を作り出すことは批判されるべきことである。
ただし、そうしたロシア側の工作はどこまで成功しているのか。2014年以降急速に反ロシア感情が高まっているし、NATO加盟支持が過半数を超えてきているというデータもある。
こうしたハイブリッド戦争は、中国が台湾に仕掛けていることでもある。中国・習近平総書記にとり台湾の死活的重要性はいうまでもない。しかし、さらに指摘されなければならないのは、台湾は米国にとってウクライナより決定的に重要だということだ。単に半導体の供給地というだけではなく、1950年に国民党政権を支援して実際に金門・場祖で米軍は人民解放軍と戦闘を行い、現在のような台湾の地位を作り出し、そこに中国本土と異なる先進民主主義社会を作り上げることに大きく貢献してきた。我々は、台湾の重要性を認識した上で、ウクライナ情勢に着目しなければならない。

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