コロナ5類に引き下げ、専門家でも分かれる意見 「隔離で抑え込みは不可能」「高価な薬の自己負担が課題」 (22/01/19 16:45)

新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、どこの医療機関でも患者を受け入れるなど、より柔軟な対応ができるよう「感染症の危険度を示す分類」を2類から5類に下げるべきだという声も上がっています。引き下げについては専門家でも意見が分かれています。

 今週から始まった通常国会。岸田総理は、新型コロナへの対応が「最優先課題」だと述べました。

 「3月以降は追加確保した1800万人分のワクチンを活用し、高齢者の接種を6ヵ月間隔で行うとともに、一般向け接種も少なくとも7カ月、余力のある自治体では6カ月で接種を行います」(岸田総理大臣 17日)

 「聞く力」をアピールする総理は、こんな考えも表明。

 「一度決めた方針でもより良い方法があるのであれば、躊躇なく改め柔軟に対応を進化させていく所存です」(岸田総理大臣 17日)

 「柔軟に対応する」と表明した、岸田総理。政府のコロナ対策について、維新の会からは、ある注文が。

 「医療体制を整える上での感染症法の位置づけ改正は、議論すべきだと思う。感染者数が伸びている中で、松井代表も含めて私も5類相当の扱いを検討してはどうかと」(日本維新の会 藤田幹事長 17日)

 感染症は、危険度に応じて「エボラ出血熱、ペスト」などが1類、「結核、SARS」などが2類、「コレラ、細菌性赤痢」などが3類、「黄熱、狂犬病」などが4類、「インフルエンザ、梅毒」などが5類と、5つに分類されています。

 数字が小さいほど危険度は高く、コロナは結核などと同じ2類相当に分類されています。

 これを、インフルエンザなどと同じ5類に引き下げることを検討してはどうか、というのです。

 東京都の小池都知事も先週、専門家会議の後で。

 「国にはコロナとの戦いのゲームチェンジャーとなるワクチンや、経口薬の供給を継続して要望をずっとしておりますけど、5類への変更も含めて科学的な知見を集めていただきたい」(東京都 小池知事 13日)

現在は2類相当の新型コロナ

 18日には初めて全国の新規感染者が3万人を超えました。

 重症化傾向が低いとされるオミクロン株への置き換わりが進むなか、医療現場からも分類の見直しを求める声が上がっています。

 「すべての感染者を抑え込む必要もないし、それができる状態でもない。オミクロン株になり重症化しにくくなっているので、明らかに2類相当の感染症にしておくのは厳しすぎる。色んな処遇というのは過剰な面があるので、5類への移行によって、より効率的に社会、医療を回すべき段階にきている」(愛知県立大学看護学部 清水宣明教授)

 感染症法上、2類に相当する新型コロナは入院勧告や就業制限の対応が必要で、保健所の管理下に置かれるほか、入院する場合は指定の医療機関となっていることから保健所や医療機関に大きな負担がかかっています。

「軽症者で病院や施設が埋まり、重症者が入れないのは本末転倒」

 また、検疫法上は無症状でも隔離措置をとることができ、これは1類と同じ扱いになります。

 「感染拡大しても、命の面で危ないことにならなければいいと、割り切ることが必要だと思う。軽症者で病院や施設が埋まり、重症者が入れないのは本末転倒。感染した方を隔離することで抑え込むのは不可能。(基礎疾患など)リスクがある人を重点的に観察したり入院したりして治療をする。理屈を持った方法に変えるべきだ」(清水宣明教授)

 清水医師は「5類に引き下げることは、決して警戒を緩めることではない」とした上で、より柔軟な対応ができるよう分類の見直しを求めています。

 「この冬の感染の状況をみて、ワクチンの効きやこれから導入される飲み薬の効果などから判断して、5類への移行は検討していいと思います」(清水宣明教授)

「分類を見直した場合“高価な薬”の自己負担などが課題」

 分類の見直しは、専門家の間でも意見が分かれています。

 「5類にする目標は見えてきた。ただ、焦ってやる段階ではまだないと思う」(ぎふ綜合健診センター所長 岐阜大学 村上啓雄名誉教授)

 「慎重に検討すべき」と話すのは、ぎふ綜合健診センターの村上所長です。

 「2年前から比べると徐々に死亡率が低下している。かなり(5類の)インフルエンザに近い状態にはなっているということから、インフルエンザと同様な疾患という捉え方は検討すべき時期に来ているだろう」(村上啓雄所長)

 検討すべき課題のひとつが、「医療費の負担」です。

 「(新型コロナ治療は)全額費用を国が負担しているが、5類感染症にすると保険診療で自己負担が出てくる。現在使用している薬などは非常に高価なので、今までの様々な病気や新薬が出た時には、慎重に制度設計をした上で皆さんの健康を守ってきた。そういった時間も必要」(村上啓雄所長)

「現時点での見直しは、医療現場の混乱を招きかねない」

 また、感染者の急増が続く現時点での見直しは、医療現場の混乱を招きかねないとも指摘します。

 「検査体制や療養先の決定など、大きな業務を保健所職員や県職員が手伝いをしてくれた。それが5類感染症になると(一般の)病院のみでやっていかなければいけなくなる。新規感染者が落ち着いてきたところで、今までのインフルエンザ診療体制のように、病院から診療所まで現場のすべての医療従事者がしっかり役割分担を理解した上で、制度を変えて患者を迎えるようにしないと現場も混乱する」(村上啓雄所長)

 愛知・岐阜・三重の各知事も慎重な意見です。

 「負荷を減らしていくことは合理的ではあると思うが、現時点でこれだけ(感染が)急拡大している時に指定変えをするという声は現実的ではない」(愛知県 大村秀章知事 18日)

 「まずはこの状況をどう乗り切るかというところに軸足を置きたい。問題意識としては議論していけばいい」(岐阜県 古田肇知事)

 「検討していく必要はあるが、第6波が落ち着いてからだと思う。波の途中で変更するのは大きな混乱を招くことになる」(三重県 一見勝之知事 19日)

(1月19日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

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