電車内の防犯カメラ設置進む 蛍光灯一体型のカメラも

 小田急線の車内で20歳の女性などが刺され10人がけがをした事件から1カ月がたちました。事件解決の一つの糸口ともなったのが電車内の防犯カメラです。いま、事件や事故の防止に向けて電車内の防犯カメラの設置が進められています。

<車内防犯カメラが事件解決の一助に>

 電車内の防犯カメラ設置の目的は、痴漢や暴力・すり・つり革の盗難など犯罪行為や迷惑行為を未然に防ぐため、あるいは映像が犯罪の証拠になるなどの理由からです。小田急線の事件では車内の防犯カメラに容疑者の男が女性を襲う様子など犯行の一部始終が写っていました。男は自首したため、防犯カメラの映像が基になって逮捕に至ったわけではありませんが、防犯カメラの映像が男の犯行を裏付ける決定的な証拠となりました。

 一方で、東京メトロ白金高輪駅であった硫酸事件では、容疑者の男が乗った電車内に防犯カメラは設置されていませんでした。今回は車内での事件ではありませんでしたが、車内カメラが設置されていなかったことから、男がどこの駅で乗ったのかなどをすぐに割り出すことはできず、結果として多くの駅構内の防犯カメラから男の行方を追わなければなりませんでした。もし車内に防犯カメラがあれば、より早く男の足取りを追うことができただろうと捜査関係者は話しています。

<鉄道各社の防犯カメラ設置状況>

 次に、鉄道各社の防犯カメラの設置状況を見てみます。JR東日本では2010年からまず、埼京線で痴漢対策として設置を始めました。首都圏を走る電車では2020年度には全ての車両(普通車両9000両・新幹線1200両)に防犯カメラの設置が完了したということです。小田急電鉄では2020年3月デビューの5000形から車内防犯カメラの設置が始まり、2021年7月末時点で普通車両のおよそ1割に防犯カメラが設置されています。東京メトロではおよそ40%の設置率、京王電鉄は京王線で11%、井の頭線で21%ほどとなっていて、各鉄道会社で今後、車両の改修や新型車両の導入に合わせて防犯カメラが順次設置されるといいます。

<東急電鉄 業界初の防犯カメラ>

 2015年から設置を開始した東急電鉄では、2020年4月に鉄道業界で初めてとなる“蛍光灯と一体型となった防犯カメラ”「Io Tube(アイ・オー・チューブ)」の導入が始まりました。そして、初導入からたった3カ月というスピードで、2020年7月には全1247両への導入が完了しました。このスムーズな作業を実現した理由は「工事期間の短さ」です。従来の電車内の防犯カメラはドアの上などに設置されています。そのため、機器や配線の整備が必要となり、1両当たり2週間の工事期間がかかりました。しかし「Io Tube」は蛍光灯を換えるだけなので、1両当たりわずか30分ほどで設置が完了します。

 また、映像の確認方法にも大きな違いがあります。従来の防犯カメラはカメラからメモリーディスクなど記録媒体を抜き取り、専用のパソコンで映像を確認しなければなりませんでした。一方「Io Tube」は4G通信が可能なため、遠隔地からでもほぼリアルタイムで映像を確認することが可能だということです。通信を取り入れたことで、トラブルなどが起きた非常時に迅速に対応することができるようになりました。

 新たな技術を取り入れた防犯カメラの設置で、利用者の安全安心の確保が進んでいます。

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