「生娘をシャブ漬け戦略」という牛丼チェーン・吉野家常務の“不適切発言”の波紋が広がっています。なぜこのような発言に至ったのでしょうか?その背景には「“マーケティング”の思考回路」や「昔の感覚」があるとする専門家の意見をもとに、詳しく解説します。
■「生娘をシャブ漬け戦略」発言 どのような場で発言?
良原安美キャスター:
今回の問題の発言があった講座はどんなものだったかを見ていきます。
4月16日から行われている早稲田大学の社会人向けの講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」です。費用は▼38万5000円、定員は▼40人程度でした。
この講座の中で、「吉野家」常務取締役の伊東正明・企画本部長が、『生娘をシャブ漬け戦略』といった趣旨の発言をしたということなのです。
さらに、この講座を受けていた方のネット上の投稿で「田舎から出てきた右も左もわからない若い女性を無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする」などと発言していたということです。
この発言について早稲田大学は、「発言は教育機関として到底容認できるものではありません」として「講座担当から直ちに降りていただきます」としました。
さらに、この講座をキャンセルしたい方は38万5000円全額返金するということも発表しています。
吉野家側は対応として、伊東氏を4月18日付けで解任しています。
理由としては「人権・ジェンダー問題の観点から、到底許容することのできない、職務上著しく不適任な言動があったため」としています。
伊東氏もコメントを出しています。
「若い女性をより集客するにはどうしたら良いかと質問した際、わかりやすい表現で問いかけたく、過激な言葉となりました。大変申し訳ございません。深く反省しています」
井上貴博キャスター:
普段から使っていないと“生娘”という言葉は出てきようがないと思います。本音なんだろうと思いますが。これを「戦略」と言っていたものが、会社・企業としてあったのかどうかというのは調べる必要があると思うんですが。
星浩コメンテーター:
そのような戦略があるとしたら、大変なことですよね。伊東氏は「言葉をエッジを立てて言いたい」と弁解してますけど、それはおそらく許される話じゃないと思います。これは明らかに方向も違う話ですし、品性がもう全くない発言です。
テクニカルな問題にしてもらいたくない。本質的な問題だと思うので、本質をきちんと反省する必要があると思いますね。
ホラン千秋キャスター:
先ほど戦略があるのかどうかと話がありましたけれども、なかったとしても“吉野家はこういうマインドの社員の方々が働いている会社なのかな”と見られてしまうわけではないですか。それは本当に企業としても損ですよね。もう不適任だし不適切だし不愉快だな、と思いますね。
■不適切発言の背景には・・・「マーケティングの思考回路」?
良原キャスター:
どうして今回こうした過激な発言が出てしまったのかというところを詳しく見ていきます。
“間違った常識”がこうした発言を生んでしまう可能性があるということです。
今回の発言の背景に、“マーケティングの仕事をしている方にありがちな「マーケティングの思考回路」があるのでは”と指摘しているのが、企業のリスクマネジメントに詳しい広報コンサルタントの石川慶子氏です。
▼マーケティングの思考回路
1:“刺激的な表現”を使って支持を得たりウケを狙う傾向
2:純粋で社会経験がまだ少ない若い女性はマーケティングの対象になりやすい
さらに、石川氏は「失言というのは思わず出てしまうもの。この人は刺激的な表現や女性蔑視の言葉を日常的に使っていたのでは」と推測しています。
井上キャスター:
一般化するのも大事だと思いますが、マーケティングを実直にやってる方が多くいらっしゃるわけで。単に伊東氏の問題という気もします。
良原キャスター:
さらに、石川氏は「出世した人ほど要注意」だと話しています。
企業で成功する人は「人柄・発言が面白い人も多い」ということです。こうした人がどうして失言してしまうのでしょうか。
石川氏は「会社を代表する立場になっても責任に見合う発言ができない人もいる」という背景に、
▼「若手との言葉や認識のジェネレーションギャップがある」
▼「立場が上の方ということで、周りが注意できない」
と指摘しています。
最近では、「メディアトレーニング」という外部目線で「言葉」のチェックなどを行うトレーニングがあるそうなのですが、人前での発言機会が増える経営層に対して、日本ではほとんどこのようなトレーニングが行われていないということなんです。
一方で欧米などでは、訓練を受けないと公の場で発言できない、など徹底されています。
この時代、「メディアトレーニング」が重要視されていくのかもしれません。
■「昭和で通用したであろう言葉も今は通用しない」
良原キャスター:
背景には「日本語の変化」もあるのでは、と指摘する専門家もいます。
今は情報がすぐに拡散する時代です。たとえオフレコの会議でしたり、個人のSNSでの投稿だったとしても、です。
明治大学文学部 斎藤孝教授
「会社などの肩書きが付くとその気がなくても、公的な意見と捉えられてしまう可能性が高い」
「プライベートの発言であっても言葉選びがとても大切。昭和では通用したであろう言葉も今は通用しなくなってきている。その場限りの言葉というのは通用しない時代なので注意が必要」
星コメンテーター:
トレーニングの問題と本質の問題とがあると思います。やはり人に対する敬意や尊敬の念とかを非常に大事にするってことはまず必要です。
その上で言葉遣いだとか表現の仕方っていうのをトレーニングするということが大事だと思います。この場合両方を欠いてるっていう非常にそういう意味では悪質なケースになってしまったと思います。
ホランキャスター:
トレーニングをしていなくても、『生娘をシャブ漬け戦略』と講座という公の場で言うことが不適切だと、普通だった分かるような気もするのですが。そうではない方もいるということですよね。
井上キャスター:
伊東氏が今まで戦略としてかなり中核を担っていた、つまりこの企業を支えていた。そういった支える立場の方がこういった発言をする。ある意味でどの企業にもありうる。しかもこれは大ダメージになる。でも企業としてもしっかりとしてやらなければならないってことですよね。
星コメンテーター:
ちゃんと記者会見をして、説明責任を果たすということは大事だと思いますね。
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