首都キエフにロシア軍が迫る中、ウクライナの市民を避難させるための「人道回廊」が10のルートで開始されました。その一方で、キエフ在住の日本人は「避難したくても、出来ない人がいる」と訴えます。
■「いつ死んでもおかしくない」戦争から逃れるウクライナの市民たち
ウクライナの首都・キエフ近郊の都市、イルピン。吹雪の中、迫るロシア軍から逃れる人たちが足早に街を出ます。
カメラは、警察官の父親との別れの際に泣きじゃくる子どもの姿を捉えています。父親は、この地に残らなければなりません。母親は「パパは後で来るから大丈夫」と、我が子をなだめます。
ロシア軍の進軍を防ぐために破壊された橋。ここから先は車は通れません。川の手前は多くの人で溢れかえっています。中には、高齢の女性を男性が2人がかりで支えながら川を渡る様子も・・・
「望んでいるのは平和で、戦争ではありません。子ども達を巻き込まないで、いつ死んでもおかしくないのです」
3月7日には少なくとも27人の市民が犠牲になった、第2の都市ハリコフ。地下シェルターでは、亡くなった祖母に鎮魂の曲を捧げる女性の姿がありました。
国境を越えてポーランドに逃れた男の子。泣きながら、一歩ずつ歩みを進めます。男の子が、ウクライナに戻れる日は来るのでしょうか?
■首都キエフに近づくロシア軍の足音 「96時間以内に襲撃」との分析も
ロシア軍がウクライナに侵攻してまもなく2週間。日ごとにウクライナの街は、戦争の傷跡が深くなってきています。
ロシア軍の激しい攻撃で、集合住宅地は大きく破壊されました。国連が3月8日までに確認した民間人の死者は474人、負傷者は861人に上っています。
3月9日から設置された市民を避難させるための「人道回廊」。これまでは1つのルートだけでしたが、ウクライナ側は10日、10のルートで避難を開始すると発表しました。
「人道回廊」が設置されたウクライナの都市、スーミに住むオルガ・アレクセンコさんは、こう話します。
スーミ在住 オルガ・アレクセンコさん
「スーミはいま静かになっています。ただ昨日まで(空爆があって)とても怖かったです」
現地では既に避難が始まっていますが、大多数の市民は町にとどまっていると言います。理由は、ロシア軍のことが信用できないからです。
スーミ在住 オルガさん
「ロシア軍に常識があるとは思えません。私たちは躊躇しています。目的地にたどり着けず迷い込んでしまった人もいるので怖いのです」
人道回廊のうち5つは、首都キエフへと続きます。そのキエフにある検問所では、タイヤをパンクさせるバリケードが設置されています。
今もキエフに留まる高垣典哉さんは、ここ数日である変化を感じているといいます。
キエフ在住 高垣典哉さん
「何度も大きなのが段々近づいてきてるんですよ、(攻撃の)音が。僕はもうほとんど中心部に住んでるんですけどね、キエフ中央駅の。段々音が大きくなってきてるいうことは、(ロシア軍が)近づいてきてるなというのを感じますね」
アメリカ国防総省の高官は、ロシア軍がキエフに3方向から進軍していると指摘。キエフ中心部から20キロほどのところまで迫っている部隊もあるといいます。
また、アメリカの研究機関「戦争研究所」は8日、「ロシア軍が96時間以内にキエフを襲撃する」という分析を公表しました。
ロシア軍の攻撃を恐れ、キエフの人々は地下での生活を余儀なくされています。
キエフ在住 高垣さん
「ここ(地下の駐車スペース)が部屋なんですよ。夜になったらみんなここで寝ている。生活するための必要品を置いている、水とか」
キエフには「逃げたくても逃げられない人がたくさん取り残されている」と高垣さんは訴えます。
キエフ在住 高垣さん
「僕は自分の意思で残っているから別にいいんですけど、このキエフの中に高齢者や体が動かないとか、逃げられずにいる人を助ける支援をお願いしたい。もし、日本とかアメリカとかNATOが軍事的に助けられないなら」
キエフに迫る危機。アメリカCIAのバーンズ長官は、こんな懸念を示しました。
CIA バーンズ長官
「プーチンはいま怒り苛立っていると思います。強気に出て民間人の犠牲をいとわずに、ウクライナ軍を潰そうとする可能性があります」
ーープーチン氏は天才的な政治手腕を持つのか、情け容赦のない暴君か。
「情け容赦のない暴君に近い」
■国際的ハッカー集団もメッセージ アメリカなども追加制裁、日本の対応は?
NATO加盟国に対して戦闘機の提供を要請しているウクライナ。ゼレンスキー大統領は9日夜、動画を公開し提供を急ぐよう訴えました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「早く結論を出して下さい。互いに責任を押し付けないで、早く戦闘機を送ってください。西欧諸国は人道的大悲劇の責任を負うことになる。世界の人道的責任です」
世界的なハッカー集団も暗躍しています。
「ロシアの皆さん、こんにちわ。私たちはアノニマスです」
ハッカー集団“アノニマス”は、ロシアの国営放送などをジャックし、ウクライナの戦場の様子を伝えたとしています。
そしてメッセージ動画を公開。ロシアの人たちにこう訴えかけました。
ハッカー集団“アノニマス”
「この戦争を終わらせる最も平和的な方法は、ロシアの人々がプーチン氏に立ち向かって権力の座から下ろすことです」
攻撃の手を緩めないロシアに対し、アメリカはさらに強力な経済制裁に踏み切りました。
アメリカ バイデン大統領
「これはプーチンにさらなる痛みを与える措置だ」
アメリカはロシア産の原油のほか、液化天然ガスや石炭の輸入を即日禁止すると発表。イギリスもロシア産原油の輸入を年末までに打ち切るとしています。
一方、日本の対応は・・・
岸田首相
「G7をはじめとする国際社会と連携し、しっかり取り組んでいきたいと考えています」
岸田首相は明言を避けましたが、複数の政府関係者は「原油価格が急激に上がって大変なことになる」などとし、アメリカと歩調を合わせることに否定的です。
もし仮に日本が原油の禁輸措置を取った場合、どんな影響が出るのでしょうか?
ニッセイ基礎研究所 斎藤太郎 経済調査部長
「石炭とか天然ガスっていうのは、(日本は)ロシアから1割ぐらいを輸入してるわけですから。それを完全に止めてしまえば電力を10%、1割削減しなければいけない状況に追い込まれる」
専門家は、日本国内の電力不足に直結する懸念があると話します。
ニッセイ基礎研究所 斎藤太郎 経済調査部長
「東日本大震災の後のことを思い出していただけるとよいと思います。計画停電という形で、地域によって時間帯ごとに停電をさせて、電力の消費を抑えることもあり得る。いずれにしても、そうなると生活に非常に大きな悪影響が及ぶ」
一方、ロシアでの事業を見直すグローバル企業も相次いでいます。ファストフード大手のマクドナルドは、ロシア国内の850店舗全てを一時的に閉鎖することを明らかにしました。
マクドナルド ケンプチンスキーCEO
「ウクライナで広がる無用な人的被害から目を背けることはできない」
約30年前にオープンしたモスクワの第1号店は当時、冷戦の緊張緩和の象徴とされていました。
さらに、コーヒーチェーン大手のスターバックスや食品飲料大手のコカ・コーラとペプシコも、ロシア国内での事業停止などを発表しています。
(09日23:33)
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