山口県阿武町で起きた誤送金問題で、町は決済代行業者から4300万円の返金を受けましたが、その後の取材で、業者の口座には当時600万円しかなかったことが、分かりました。業者が肩代わりした可能性も出てきています。
■母親号泣「自分が借金返済」
4630万円の9割が戻ってきた阿武町ですが、役場には連日苦情が殺到し、電話が鳴りやまないといいます。
阿武町・松田穣町議:「いまだに(きのうも)苦情とか、電話が掛かってきて、業務が滞っている状態。1回で、長い時は2時間、話を聞くこともあると聞いていて。いつだったか、一日30本ぐらいと耳にしたことがあります」
田口翔容疑者(24)の実家では、母親が周囲にこう漏らしていたといいます。
近所の人:「母親としての責任を強く感じていて、『自分が借金を返していかなくてはいけない』と、号泣しながら話していた」
4630万円が誤送金された問題が急転したのは、町が田口容疑者を提訴した今月12日。裁判所に向かったのは、町側の代理人・中山修身弁護士でした。
実は、中山弁護士は、これより1カ月以上前から水面下で精力的に動いていました。
■「銀行A」にいち早く接触
今回の問題に関わった金融機関などは、4630万円が誤って振り込まれた銀行Aと、その後、金の移動が確認された銀行B・C。さらに、銀行B・Cに口座を持つ、3つのインターネットカジノの決済代行業者、甲・乙・丙です。
阿武町役場の職員が、田口容疑者と初めて接触したのは、先月8日。金を返すつもりだったという田口容疑者が一転、銀行Aの入り口で返金を拒否した日です。
この直後から、田口容疑者は4630万円の移動を始めますが、中山弁護士もまた、この日のうちに、いち早く銀行Aに対し、警告書という形で接触していたのです。
阿武町が初めて会見したのは、2週間後の先月22日です。
阿武町・花田憲彦町長:「町民の皆様に、心からおわび申し上げます」
田口容疑者はこの時すでに、銀行B・Cに4300万円余りを移し終えていましたが、銀行Aから情報を入手していた中山弁護士は、銀行B・Cに対し、プレッシャーを掛けます。
銀行B・Cへ要請書(今月13日)(弁護士への取材から):「マネーロンダリングと取られかねない、疑わしい取引をしていますよね」
銀行B・Cに振り込まれた金は、甲・乙・丙の3つのカジノの決済代行業者の口座に流れていました。しかし・・・。
■600万円がなぜ4300万円に・・・
26日、新たに、決済代行業者の口座にあった金は、全部で600万円しかなかったことが分かりました。それにもかかわらず、阿武町に戻ってきた金は4300万円です。
これは、一体どういうことなのでしょうか。
実は、中山弁護士は、田口容疑者が税金を滞納していることに目を付け“国税徴収法”を使って、決済代行業者の口座にある金を、田口容疑者の資産とみなして差し押さえていました。
しかし、口座にあったのは、わずか600万円。それでも、決済代行業者が国税徴収法に反応し、4300万円を返金した理由について、専門家は、次のように話します。
渥美坂井法律事務所・渥美陽子弁護士:「決済代行業者としては、預金を差し押さえられたということで、非常に強いプレッシャーを感じて、任意に4300万円を払ったということでは。捜査の対象になるではといった、プレッシャーではないかと思う」
その結果、決算代行業者から「お金を返したい」と、阿武町に4300万円を返金する電話が掛かってきたといいます。
渥美坂井法律事務所・渥美陽子弁護士:「疑わしい取引だと、マネーロンダリングじゃないかということまで届け出をされてしまったら、とにかく、もうすぐに全額を返して、このややこしい話から逃れたいという、経営判断だったのではないかと思う」
(「グッド!モーニング」2022年5月27日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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