一匹だったネコが気が付くと何十匹にもなる…いわゆる多頭飼育が崩壊し、劣悪な環境にいたネコが保護されるケースが後を絶ちません。現場から見えてきたのは飼い主から届かないSOSでした。
悲劇を防ぐために何が必要なのでしょうか。
足元が見えないほどあふれかえる猫。これは、札幌市内の住宅でネコの多頭飼育崩壊が起きた現場の映像です。
鎌田祐輔記者:「90匹の猫が飼われていた住宅ですが、掃除してもすぐに糞をするため、片付けることができず、鼻を突きさすようなアンモニア臭で充満しています」
多頭飼育崩壊が起きたのは、60代の女性が一人で暮らす住宅です。
家の中は、リビングや台所もいたるところにネコの糞や尿が散乱。飼い主の女性すら通常の生活ができない状況です。
飼い主の女性:「ご飯食べるのこっちです。この辺でぱぱーっと食べて」
鎌田祐輔記者:「ここですか?」
飼い主の女性:「家の玄関です。そっちで食べたらみんな寄ってきて食べられるので」
さらに、このネコの臭いで外出した際に想像を超える事態も起きました。
飼い主の女性:「今バスで通勤しているので、臭いですよね臭い。最初すごかった。バスの中で相当やられた。バスの中でシューッとスプレーをされる、おばさんに」
消臭スプレーまで吹きかけられる事態に。なぜ多頭飼育崩壊に至ったのか。
きっかけは10年ほど前。夫とともに、一匹の野良猫を飼い始めた事でした。
女性は避妊手術を夫にもちかけましたが…
飼い主の女性:「主人が反対して、そんなの去勢したら余計かわいそうだと断固として(拒んだ)。ワンマンな人だった。いうこと聞かないと、おっかないから何にも言えなかった」
その後、連れてきたネコは10匹に増え、妊娠していると知らずに飼い始めたメスがオスネコを出産したことがきっかけでネコが増加。
夫の介護で不在がちにしていたこともあり、わずか5年で90匹にまで膨れ上がりました。
猫の繁殖力について専門家は…
まえたに動物病院 前谷茂樹 院長:「1匹の猫が子供を産んでいくと、1年後には20匹、2年後には80匹ぐらい、3年後には1000匹くらいになる計算になる。産んだ子供たちが子供を作っていって、短いスパンでどんどん増えていく」
2018年12月、病で夫が他界。女性は、事の重大さに気付いたと言います。
わらにもすがる思いで見つけた先が、ニャン友ネットワークでした。
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「動物管理センターでは、処分されるかもで言えなかったんだよね。どこに相談するったって、行政で相談場所はなかったよね。生活できないし、お母さんも」
飼い主の女性:「もうダメかなと思った」
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「90匹いるのはとんでもない事。手術するのでもなんでも、解決に向かってやっと一歩出せたよね」
今回、保護した90匹の猫はすべて去勢・避妊手術やワクチン接種などをし、管理センターなどを通じて新たな飼い主を探すことになりました。手元に残るのは数匹だけ。手術などの費用約300万円のうち一部は支援してもらうものの、重い負担がのしかかります。
飼い主の女性:「最初から旦那の言うことなんか聞かなければよかったと思ってます。本当に不妊手術は必要。猫のためにも、人間のためにも」
2年前道内では、少なくとも33件の多頭飼育崩壊が確認されています。なぜこのような事態を引き起こすのか。そこには、社会支援から抜け落ちた現実が見えてきました。
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「たぶんここですね。ここに寝てたって言ってましたね」
去年12月、江別市で一人暮らしの70代男性がソファーで死亡しているのを、安否確認に訪れた知人女性が発見しました。
55匹の猫と暮らしていた男性の自宅は、いまも手つかずのまま荒れ果てた状態です。
鎌田祐輔記者:「男性が最後に買ったとみられる弁当は玄関で見つかりました。また、近所の人は男性が55匹もの猫を飼っていた事を知っている人はいませんでした」
亡くなった男性に近所づきあいはなく、仕事仲間の男性も2019年11月に男性と話したきり、亡くなったことも知りませんでした。
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「亡くなったよ」
知人男性:「いつさ?えー!亡くなったの?」
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「去年の12月猫飼ってたの知ってる?動物いたの」
知人男性:「知ってる3匹か4匹いた」
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「55匹いた」
知人男性:「えー!(最後に会った11月は)何ともなかった。仕事行ってた。残念だ。若いから、まだ仕事手伝ってもらいたかった」
近所の人に気付かれなかった男性と家にいた多くのネコ。さらに、男性に大きな病気や障害もなかったため、行政が見守る対象からも外れていました。
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「気骨に人に頼らないで頑張ると言っている人が相談したり、見てあげるところがないので今回みたいな問題を引き起こす。小さい地域から取り組んでいって、自治体のサポート機関がますます必要になる」
飼い主が発したいSOSが誰にも気付かれない悲劇をどう防ぐのか。行政に加え、市民との連携が必要だといいます。
札幌市動物管理センター 坪松耕太さん:「糞尿のにおいが衣服に染みついている。ハエとか虫が発生している。糞尿が堆積しているのは、不適切な飼育がされているサイン。
行政だけでは限界があるので、愛護団体も含め、市民の皆さんが理解を正しく持つことが重要になってくる」
ニャン友ネットワーク 勝田珠美 代表:「相談できる窓口が行政に必要だと思います。絶対に動物のことだけではない。本当に糞尿のひどいところに病気に方がいたりとか、お年寄りがいたりとかあるので、動物のことだけではなく、人間の福祉にかかわることなってくるので。両方協力して解決していかないと、なくならない」
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